金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

22

新聞購読のお申込み

直彫加工のニーズに応え、横型の微細加工機を開発 塚田良彦氏(東洋機械製作所 取締役Th事業部長)【この人に聞く】

長年、工作機械や放電加工機メーカーのOEMやODMを手掛けてきた東洋機械製作所。鋳造から機械設計、製作、塗装、組立までを手掛ける能力の高さから多く機械メーカーの製品の設計や製造を請け負ってきた。そんな同社が35年ぶりに自社ブランドとなる、超高精度横型マシニングセンタ「Th100LP」を開発した。「微細加工分野の中でも、荒から面粗さ20‌nmクラスの中仕上げの領域に提案したい」と話す、取締役の塚田良彦Th事業部長に機械の特長や開発の狙いなどを聞いた。

面粗さ20‌nmを高速加工

東洋機械製作所 取締役Th事業部長 塚田 良彦 (つかだ・よしひこ)氏
1959年生まれ。静岡県出身。青山学院大学理工学部機械工学科卒業後、83年日清紡績入社、90年東洋機械製作所に入社。2005年取締役営業部長13年取締役総務部長。18年取締役Th事業部長、現在に至る。

貴社の事業を教えてください。

1938年に鋳造メーカーの機械部門として創業し、鋳物に価値を付けるために工作機械事業に進出。88年頃までは自社製品ブランドも製作していた。80年からは並行して、工作機械や放電加工機メーカーのOEMやODMを手掛けるようになり、現状も売上の多くは受託事業だ。長年工作機械製造に携わり、幅広いノウハウと知見を持つのが強みだと思う。

なぜ微細加工への参入だったのでしょう。

Th100LPは元々、高精度な横形の電極加工機として開発した。協力先と開発した独自の純銅製のビルトインモータを組み込んだ高精度スピンドルを搭載し、4万回転で触れ精度を1・5μm以下に抑え、リニア駆動を採用し、超高精度機とした。

近年、納入先から「この精度であれば直彫加工したい」という声が増えてきた。そこで2年前に高精度なCCDの工具長計測を搭載するなどして鏡面と直彫加工できる微細加工機として刷新した。

対象とする領域は。

金型の微細加工であれば面粗さ20nm程度までの荒から中仕上げの領域に最も適している。近年、シングルナノクラスの面粗さを求める加工も増えているが、そうした加工では高価なPCD工具で10時間以上加工しなければならず、コストもかかる。

一方、Th100LPであればCBN工具で、2時間で20nmまで加工できる。その精度で十分なワークもあるし、それ以上の精度が必要であれば、手仕上げをすればいい。コスト面ではそのほうが現実的だと思う。

他に特長は。

横型なので切り粉のトラブルはなく、長時間加工に向いている。電極加工機だったこともあり、ATCとAWCも標準装備しており、自動化への対応力は高い。現状、ワークサイズの制約はあるが、機械本体の価格は3000万円に抑えた。

金型メーカーに一言。

Th100LPは金型業界に提案を始めたばかり。だが、長年専用機や機械加工を請け負ってきた経験から、周辺機器を含む自動化提案などは得意。機械のことはもとより、どんなことでも相談して欲しい。

金型新聞 2023年4月10日

関連記事

次代の人材確保するため、地域を巻き込んで金型の魅力感じてもらう 上田幸司氏(明星金属工業 代表取締役社長)【鳥瞰蟻瞰】

日本の金型の未来を担う人材。それは今、危機的状況を迎えています。少子化が進み、就職する学生の数が減り続けている。当社のある大阪府でも特に公立工業高校で定員割れが相次ぎ、数年後にも数校が廃校します。もの作りに興味を持つ高卒…

【金型応援隊】太陽テクニカ ダメ元でも相談を

一桁ミクロンの加工精度 「マシニングで出せない精度の穴加工は、是非任せてほしい」と語るのは、長年ジグボーラー加工やジグ研削加工に携わってきた、太陽テクニカの大畠正陽社長。同社は、航空・宇宙産業の部品から工作機械の主要精密…

アルファミラージュ 低価格内視鏡を金型分野に拡販【金型応援隊】

比重計の製作やスチームクリーナーなど各種機器・器材の販売を手掛けるアルファーミラージュ(大阪市都島区、06-6924-2631)はこのたび低価格工業用内視鏡「MRA‐28W」と「MRT‐40TH」の販売を開始した。 「M…

―スペシャリスト―ファム<br>±2ミクロンの要望に応える

―スペシャリスト―ファム
±2ミクロンの要望に応える

測定ゲージで未来拓く 高級自転車部品や自動車部品などの加工品質を検査するためのゲージを手掛ける会社がある。創業29年のファム。精密金型部品で培ったノウハウを生かし、ゲージも製作。超精密なゲージを安定して作れる技術力で、メ…

鋳造に独自の新工法
マツダ

特集 次世代車で変わる駆動部品の金型鋳造に独自の新工法  次世代自動車の技術は電動化に限らない。注目されるのがエンジンの進化だ。燃費性能を追求する新型エンジン「スカイアクティブ」。多くの自動車メーカーが電動化に力を入れる…

トピックス

関連サイト