同社は1920年の創業で、接点などの電子機器向けのプレス部品を強みに業容を拡大してきた。近年は、車載部品での採用も進んでおり、その精密な金型とプレス技術は世界中で認められている。 例えばスマートウォッチに搭載された気圧セ…
動き出す 「メガキャスト」、国内外で協業進め顧客の半歩先行く提案 米谷 強氏(米谷製作所 代表取締役社長)【鳥瞰蟻瞰】

当社は今年4月、同じ新潟県に拠点を構えるプラスチック金型メーカーの共和工業との協業を発表しました。主な目的は、電気自動車(EV)の車台やバッテリーケースなどを一体成形する「メガキャスト」向けの超大物金型の開発、製造です。
「メガキャスト」は超大型のダイカスト技術で、型締め力は4000~6000t、大きいものだと1万2000tほどになります。すでに中国や北米メーカーでは採用が進んでいます。日本の自動車メーカーでも採用に向けた動きが広がっていますが、国内でこれほど大きな金型に対応できるメーカーはほとんどありません。
昨年、当社は「メガキャスト」向けの大物金型に対応するために、大型5軸加工機「D2」(牧野フライス製作所)を導入しました。最大1600×1200×1000㎜の加工が可能です。また、共和工業では3mクラスの金型が加工できる超大型加工機を設備しています。2社が協業し、「メガキャスト」向け金型を開発、製造できるようになれば、大きな差別化になると考えています。
当社はこれまで自動車エンジン関連のアルミダイカスト部品用金型をメインに手掛けてきました。10年ほど前から自動車の電動化による需要減少が危惧されていましたが昨年頃からその動きが急加速しています。足元でも新型の受注はほぼなく更新型や修理、メンテナンスなどがほとんど。事業の方向転換を迫れている状況でした。
共和工業も同様で、強みとするルーフやバンパーなど大型プラスチック金型の需要が今後も拡大するという見通しを立てるのが難しい中、将来に向けてアルミダイカスト部品への参入に興味を持っていたようです。今回の協業はこの両社の利害が一致したことによって成立しました。
今後は協業先を増やしていくつもりです。金型については県内の企業と協業し、“オール新潟”で取り組んでいきます。将来的には金型だけでなく、表面処理や材料など周辺技術なども含めて協業の枠を広げていきたいと考えています。
中国では鋳造機メーカーなどが中心となって、金型から表面処理、材料、周辺機器までをフルターンキーで請け負うビジネスモデルを構築しています。日本でも同じような仕組みを構築する必要があると思います。当社としてはさまざまな企業との協業を通じ、こうした仕組みの一角を担いたいと考えています。
一方、協業で必要となるのが共通化です。工程管理や経理などの間接部門は競争領域ではなく、協調領域。こうした部門を各社で共通化し、効率化を図り、競争領域である設計や製造、すり合わせ技術などに注力できる体制づくりが必要だと思います。
今後、自動車づくりがどう変化していくかは分かりません。「メガキャスト」がどこまで広がるかは未知数です。ただ、EVの開発競争が激化する中、日本のメーカーがコスト競争力を高めていくためには、新しい技術も取り入れなければならないことは明白です。金型メーカーとしては変化に対応できる体制を整え、顧客の半歩先で常に新しい提案ができるようにしておくことが重要だと考えています。
それには1社だけでどうこうできる時代ではありません。協業はさらに進める必要があると思います。当社は国内だけでなく、鋳造メーカーのジョージフィッシャー中国やアメリカの金型メーカーなどと連携を図り、グローバル化も進めています。日本の金型メーカーとして大変革期にどう対応するのか。真価が問われていると感じます。
金型新聞 2023年7月10日
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