JIMTOF2022で次世代の技術としてひときわ注目を集めたのがデジタル技術だ。IoTやAI、クラウドなどを活用し機械の稼働状況監視や加工の不具合低減に生かす。金型づくりでもデジタルトランスフォーメーション(DX)が課題…
米谷製作所 メガキャスト向け超大物金型に挑む【特集:自動車金型の未来】
企業連携で金型技術確立へ
EVシフトによって、需要減少が見込まれる内燃機関(ICE)部品の金型。シリンダヘッドやシリンダブロックなどのダイカスト金型を手掛ける米谷製作所はその影響を受ける1社だ。米谷強社長は「今後、内燃機関部品向け金型の需要が増えることはない。EV化の流れが変わらない限り、確実に減っていくだろう」と未来を予見する。厳しい環境の中、どのように事業を展開していくのか。鍵を握るのが、「メガキャスト」だ。
昨年4月に東京で開催された金型専門展「インターモールド/金型展」。「メガキャスティング」と大きく掲げられた米谷製作所と共和工業(新潟県三条市)の合同ブースには多くの来場者が集まった。両社は協業し、EVの車台やバッテリーケースなどを一体成形する「メガキャスト」向け超大物金型の開発、製造に取り組むと発表した。

「メガキャスト」は超大型のアルミダイカスト技術で、定義は明確ではないが、型締力4000~6000t程度とされ、それ以上は「ギガキャスト」とも称される。すでに中国や北米メーカーでは採用が進み、日本でもトヨタやホンダなどが導入を決めている。トヨタは試作品で86部品33工程だったものを1部品1工程に集約したという。
米谷製作所はこれまで、自動車エンジン関連のアルミダイカスト部品向け金型をメインで手掛けてきた。10年ほど前から自動車の電動化による需要減少が叫ばれていたが、一昨年頃からその動きが急加速。「新型の受注はほぼなく、更新型やメンテナンスが中心になった」(米谷社長)。

事業の方向転換が迫られる中、需要拡大が見込まれる「メガキャスト」向けの大物金型への対応を決意。2022年には大型5軸立形マシニングセンタ「D2」(牧野フライス製作所)を導入し、最大1600・1200・1000㎜の加工を可能にした。一方、大型プラスチック金型を得意とする共和工業は3mクラスの加工が可能な超大型加工機を保有。「メガキャスト」では共和工業が主型を加工し、米谷製作所が入れ子を製造するといった協業を検討している。
4月の協業発表後、国内の自動車メーカーを始め、多くの企業から引き合いや相談が相次いでいるという。「足元で試作案件が動き始めており、2025年頃までに本格的な受注につながることを期待している」(米谷社長)。同社は共和工業の他、21年に技術提携を結んだ鋳造部品メーカーのジョージフィッシャー中国(GF中国)とも協業しながら金型製造技術の確立を目指している。

また、さらなる協業先の拡大も進める。金型加工だけでなく、材料や熱処理、離型剤の塗布、トリミング、バリ取りなど、「メガキャスト」に関連する技術を一貫して提供する企業グループの構築を目指している。「『メガキャスト』に関する技術相談に対して、プラスアルファの提案ができる体制を構築したい。それには1社では難しい。複数企業が連携する必要がある。当社はそれらの企業を結ぶ『ハブ』になることを目指す」(米谷社長)。
EVシフトが進み、逆境が続く内燃機関部品の金型。受注が減少する中、同社はこれまで不得手としていた350t以下の小物ダイカスト部品や、ダイカスト部品の金型から量産までをトータルでサポートするエンジニアリング事業などにも注力する。「『メガキャスト』を中心に、色々と取り組み、未来に向けて種をまいていく」(米谷社長)。
会社概要
- 本社:新潟県柏崎市田塚3‐3‐90
- 電話:0257・23・5171
- 代表者:米谷強氏
- 創立:1934年
- 従業員:95人
- 事業内容:自動車エンジン、トランスミッション、構造部品の鋳造金型設計製作(DC型、GDC型、LP型、シェル型)など
金型新聞 2024年1月10日
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