金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

16

新聞購読のお申込み

ウエブサイトやSNS活用し、見込み顧客発掘 【特集:営業ってどうする?】

金型メーカーの新規顧客の開拓方法が変わりつつある。これまでの直接訪問やテレアポといった手法から、インターネットやスマホの普及、コロナ禍で急速に進展した非対面活動の拡大によって、ウエブサイトやSNSなどを使って情報を発信し、見込み顧客を発掘する企業が増えている。

発注者が知りたい情報を

電機部品の成形や金型を手掛ける御津電子(岡山市北区)はウエブサイトを改良し、新規取引先を開拓している。2019年に改良してからのアクセス数はのべ50万件で、問い合せは1000件ほど、そのうち14件が取引につながったという。

サイトを改良した人見社長(御津電子)

サイト改良のきっかけは、大手取引先の海外進出。その製品を手掛けていた牛窓工場(岡山県瀬戸内市)の仕事が約3分の1に減少。新規顧客を開拓するために、前職でウエブマーケティングに携わっていた人見雄一社長が自身の経験を生かし、サイトの改良に着手した。

得意な技術や価格、納期など、発注者の必要な情報を掲載し、他社と比較しやすい工夫を施した。また、被リンクを増やすなど検索エンジン最適化(SEO)対策にも取り組んだ。「発注者が知りたいことを発信すれば、いずれ反響が返ってくると感じていた」(人見社長)。

プラ歯車に特化したサイト

同じくウエブサイトを活用するのが、プラスチック歯車の金型などを手掛けるチバダイス(東京都葛飾区)。22年にプラスチック歯車に特化したソリューションサイト「ギヤプラス」を立ち上げた。「音を静かにしたい」や「耐久性を向上させたい」などの課題に応じた自社の技術やサービスを掲載している。

もともと同社は歯車に特化した独自技術を強みとし、金型製作だけでなく、受託開発や試作なども請け負っている。以前からコーポレートサイトからの問い合わせも少なくなかったが、「もっと分かりやすいサイトを作れば、問い合わせも増えると考えていた」(千葉英樹社長)。現在、1日数件の問い合わせがきており、約2年で数千万円の受注につながっているという。

新たに立ち上げたソリューションサイト(チバダイス)

Xがきっかけ自社製品も

こうしたウエブサイトの他、SNSを活用する企業も少なくない。プラスチック金型メーカーの一成モールド(新潟県三条市)は技術営業部長の氏田遼佑氏が22年からX(旧Twitter)を開始。フォロワーは現在、3000を超える。

当初は金型メーカーの日常や後継者としての悩みなどを投稿していたが、Xを通じてデザイナーと知り合ったことで、米由来のバイオマス樹脂「ライスレジン」を使った製品の共同開発につながった。また、これまで実績のなかったホビー関連の金型を受注するなど、5~6件の新規受注につながっているという。

製造過程の動画などを公開する(一成モールド)

直近では、Xでの出会いがきっかけで自社製品も開発。手軽に使用できる書道具「RAPHTOOL(ラフツール)」を手掛けた。Xでは金型の写真や製造過程の動画なども投稿しており、「通常はお客さまの都合上、自分たちが作った金型をみせることはできないが、自社製品であれば見せることができる。PRしにくいという課題を解消できた」(氏田部長)。

ウエブを活用して発注先や協業先を探したり、SNSを通じて情報を発信し、交流を図ったりすることは、今や当たり前の時代。金型メーカーにとって、ウエブサイトやSNSなどのデジタルツールを活用した営業手法は、これからますます重要となるはずだ。

金型新聞 2024年5月10日

関連記事

電動化3種の神器に挑む
〜生産現場を訪ねて〜 ニシムラ(愛知県豊田市)

特集  次世代車で変わる駆動部品の金型(バッテリー、モータ、電子部品)  「自動車向けの金型を手掛ける企業は今後、バッテリー、モータ、電子部品、この3部品に携わっていないと生き残れない時代になる」と話すのはプレ…

鉄やアルミをマグネシウムに置き換え 藤岡エンジニアリングが進める軽量化提案

脱炭素社会に向けた取り組みがものづくりで加速し、金型業界でもその動きが広がりつつある。先手を打つ金型メーカーの対応には大きくは2つの方向性がある。一つは、太陽光パネルの設置や設備の省エネ化などによる自社の生産活動でCO2…

【特集】金型取引のニューノーマル

目次金型メーカーアンケート型取引に関する政府の動向金型メーカーの実例紹介型取引適正化推進協議会座長 細田孝一氏に聞く記者の目 取引環境改善も道半ば 金型メーカーアンケート 政府が2016年の世耕プランで、取引環境の改善を…

学生教育でCAEを活用 岩手大学【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】

CAEを活用しているのは企業だけではない。岩手大学では、樹脂流動解析ソフト「3DTimon」(東レエンジニアリングDソリューションズ)を学生の教育で利用している。樹脂を流す際、最適なゲート位置などを自らの勘や経験から教え…

リーダーの条件Part3
いま活躍するリーダーの心得

 新型コロナで需要が減速し、自動車の電動化で産業構造が変わるかもしれない。先の見通しにくい混沌とする時代に、リーダーはどういったことを心掛け、自らの指針としているのか。時代をリードに考えを聞いた。 伊藤製作所 伊藤 澄夫…

トピックス

関連サイト