部品の一体化や多数個取りなどに加え、ギガキャストが登場したことで、金型の大型化は進んでいる言われる。しかし、大型化の定義が明確でなく、客観的に示すデータもない。ただ、型重量の増加=大型化とは言い切れないが、一型当りの重量…
ウエブサイトやSNS活用し、見込み顧客発掘 【特集:営業ってどうする?】
金型メーカーの新規顧客の開拓方法が変わりつつある。これまでの直接訪問やテレアポといった手法から、インターネットやスマホの普及、コロナ禍で急速に進展した非対面活動の拡大によって、ウエブサイトやSNSなどを使って情報を発信し、見込み顧客を発掘する企業が増えている。
発注者が知りたい情報を
電機部品の成形や金型を手掛ける御津電子(岡山市北区)はウエブサイトを改良し、新規取引先を開拓している。2019年に改良してからのアクセス数はのべ50万件で、問い合せは1000件ほど、そのうち14件が取引につながったという。

サイト改良のきっかけは、大手取引先の海外進出。その製品を手掛けていた牛窓工場(岡山県瀬戸内市)の仕事が約3分の1に減少。新規顧客を開拓するために、前職でウエブマーケティングに携わっていた人見雄一社長が自身の経験を生かし、サイトの改良に着手した。
得意な技術や価格、納期など、発注者の必要な情報を掲載し、他社と比較しやすい工夫を施した。また、被リンクを増やすなど検索エンジン最適化(SEO)対策にも取り組んだ。「発注者が知りたいことを発信すれば、いずれ反響が返ってくると感じていた」(人見社長)。
プラ歯車に特化したサイト
同じくウエブサイトを活用するのが、プラスチック歯車の金型などを手掛けるチバダイス(東京都葛飾区)。22年にプラスチック歯車に特化したソリューションサイト「ギヤプラス」を立ち上げた。「音を静かにしたい」や「耐久性を向上させたい」などの課題に応じた自社の技術やサービスを掲載している。
もともと同社は歯車に特化した独自技術を強みとし、金型製作だけでなく、受託開発や試作なども請け負っている。以前からコーポレートサイトからの問い合わせも少なくなかったが、「もっと分かりやすいサイトを作れば、問い合わせも増えると考えていた」(千葉英樹社長)。現在、1日数件の問い合わせがきており、約2年で数千万円の受注につながっているという。

Xがきっかけ自社製品も
こうしたウエブサイトの他、SNSを活用する企業も少なくない。プラスチック金型メーカーの一成モールド(新潟県三条市)は技術営業部長の氏田遼佑氏が22年からX(旧Twitter)を開始。フォロワーは現在、3000を超える。
当初は金型メーカーの日常や後継者としての悩みなどを投稿していたが、Xを通じてデザイナーと知り合ったことで、米由来のバイオマス樹脂「ライスレジン」を使った製品の共同開発につながった。また、これまで実績のなかったホビー関連の金型を受注するなど、5~6件の新規受注につながっているという。

直近では、Xでの出会いがきっかけで自社製品も開発。手軽に使用できる書道具「RAPHTOOL(ラフツール)」を手掛けた。Xでは金型の写真や製造過程の動画なども投稿しており、「通常はお客さまの都合上、自分たちが作った金型をみせることはできないが、自社製品であれば見せることができる。PRしにくいという課題を解消できた」(氏田部長)。
ウエブを活用して発注先や協業先を探したり、SNSを通じて情報を発信し、交流を図ったりすることは、今や当たり前の時代。金型メーカーにとって、ウエブサイトやSNSなどのデジタルツールを活用した営業手法は、これからますます重要となるはずだ。
金型新聞 2024年5月10日
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