金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…
ナゴヤダイス カン・コツをマニュアル化 【特集:技能伝承最前線】
ギアやシャフトなど自動車部品の冷間鍛造金型や精密プレス金型を手掛けるナゴヤダイス(名古屋市緑区)は金型製作における技術やノウハウのマニュアル化(言語化・数値化)を図り、若手の技能伝承や人材育成に活用している。20~30代の若手中心で金型作りを行う同社がどのように取り組んでいるかを取材した。
製作合理化や再現性重視
「私も経験したが、ベテラン職人の指導は身振り手振り、感覚で指導する人が多く、経験の浅い若い人には伝わりにくい」と話す山口真人社長は、2011年の社長就任前後から技能伝承に取り組んできた。金型は職人ノウハウの塊と言われる中、「誰でも金型製作ができる形にしたい」と、機械加工や組付現場などにある職人のカンやコツを言語化、数値化し、CADや操作手順書(マニュアル化)などデータにすることで職人のノウハウを残し、技能を伝えやすい環境に整えた。「例えば、ザラザラな表面も面粗度など細かくデータ化した」と山口社長。データ活用に伴い、超精密3次元測定機や鍛造成形シミュレーションなど設備も充実。

マニュアル化は人材育成でも大きな役割となる。新人の機械担当者は最初、操作手順書を見ながら作業し、半年、1年、3年のステップで上司や先輩の確認なく、作業できるようになれば、他の工程へ異動し多能工化を図る。もちろん、金型加工はマニュアルがあっても簡単にこなせるものではなく、時間をかけNCデータ作成ができる人材を育てている。こうした人材育成や多能工化も山口社長は「現代で代わりがいない、休めない環境は若手に好まれない」と話す。マニュアルがあることで仕事の学びやすさ、働きやすさにつながっており、従業員42人のうち、20~30代が約30人を占め、採用活動も順調のようだ。
さらに、データ化は技能伝承のみならず、金型製作の工程設計にも応用。冷間鍛造金型はリピート品も多く、前回と同じ仕様なら、過去データを基に編集することで金型の工程設計にかかる時間を短縮し、短納期化、品質の安定化につなげている。

山口社長は「顧客が前回と同じ金型を注文したら、今回も同品質を期待する。そうなると再現性が重要。元データがあれば、トラブルの早期解決につながり、顧客からの信頼性も高まる」と強調する。
同社は2012年、恒温工場を立ち上げ、超精密加工を強みに精密プレス金型分野に進出。直近、モータコアや電池ケースなどEV関連部品の受注も増えている。「プレスと鍛造を併せた板鍛造が増えており、冷間鍛造の焼き嵌め技術や超硬加工などノウハウを生かせる分野で当社には追い風だ。現場からのアイデアも設計に活かし、新たな需要を取り込みたい」と山口社長は意気込む。同社は若手への技能伝承を終え、市場開拓に向けて金型の付加価値向上を目指す。
金型新聞 2024年8月10日
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