金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

26

新聞購読のお申込み

日本鍛圧機械工業会 長利啓正会長(コマツ産機社長)インタビュー【特集:プレス加工の未来】

電動車による部品の変化や脱炭素対応などさまざまな変化に迫られている金型業界。見てきたように、こうした変化に対応すべく、プレス金型の製造現場ではいろんな取り組みを進めている。一方で、環境変化によってプレス機のニーズは変わるのか。プレス機メーカーからみたプレス技術の変化や、将来必要な技術などを日本鍛圧機械工業会の長利啓正会長(コマツ産機社長)に聞いた。

長利啓正(おさり・ひろただ)
1990年東北大学工学部材料加工学科卒。2013年執行役員販売サービス本部長、20年同事業管理部長、21年小松製作所金沢工場工場長、24年現職。埼玉県出身、58歳。

高剛性で大型要求増える

プレスを取り巻く環境はどう変化しているか。

脱炭素への対応や温暖化の影響によってユーザーの動向や需要が大きく変化しています。脱炭素化への要求に対し、自動車業界では多少減速感はありますが、電動車が増加しています。温暖化で新興国ではエアコンのニーズが高まっています。さらに、ロシア・ウクライナ紛争の影響もあり、欧州を中心に家庭機器ではヒートポンプの需要が増えています。

そうした需要の変化で増えるプレス部品は。

電動車の増加によりバッテリーケース、バスバーなどの需要が高まっています。さらに電動車に加え、安定通電が必要な再エネ分野で拡大しており、バスバーにおいては2022年に1・8兆円だった市場が32年に5兆円になるという調査もあります。

さらに自動車ボディの軽量化ニーズも強く、ハイテン化により薄肉化された骨格部品が増加しています。前述のエアコンやヒートポンプ関連部品も増加しています。

こうした部品でプレス機のニーズの変化は。

一つは大型化です。バッテリーケースも大型化しています。HVよりBEVのほうがバッテリーは大きく、工程数が12~14工程ほどあり、ボルスターエリアが大きくないと対応できません。バスバーはものによってはダイエリアが大きくなりますし、厚肉化しています。エアコンの室外機も大きくなると、ダイエリアが大きくなります。

二つ目として、自動車骨格部品ではハイテンなど硬い材料が増加しており、それらをプレスするため、より能力が高く、より剛性の高いプレス機へのニーズが増えていることです。トランスファープレスでは先々の需要を見越し、3500tクラスを導入する企業が増えています。

他には。

金型にはマイナスかもしれませんが、レーザーブランキングのニーズが高まっています。お客様のプレスショップの悩みの一つは金型保管スペースです。レーザーブランキングはこの課題の解決策となります。

IoTによる予兆管理なども増えています。

さまざな手法はありますが、金型やプレス機の挙動を把握して、型寿命を予測したり、プレス機の予兆保全をしたりする動きは加速しています。AIを活用するなどこうしたサービス開発は進んでいくと思いますね。

無人化・省人化も製造業では課題です。

ドアルーフなどのプレスラインでは、10人程度の人員が必要です。欧州企業では、オフラインの計測の効率化やクレーンのオペレータを減らすためにAGVを活用する動きもあります。

こうした検査や型の交換など周辺業務の省人化要求は日本でも強まっています。課題やそれに対する手法はいろいろ考えられますが、自動化は重要なテーマの一つであることは間違いないですね。

プレス機の脱炭素ニーズはどうでしょう。

脱炭素のニーズの高まりを受け、排出した二酸化炭素に値段をつけるインターナルカーボンプライシングが大手を中心に広がりつつあります。プレス機は20年以上使うことが多く、その間に排出するCO2はぼう大です。サーボプレスはメカプレスに比べ、40%程度電力量を削減できるので、サーボ化はさらに進んでいくと思います。

金型新聞 2024年10月10日

関連記事

【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題

問われる自己変革力 連携、デジタル化、事業承継、取引適正化 車の電動化、カーボンニュートラル、デジタルトランスフォーメーション(DX)、SDGs(持続可能な開発目標)—。金型業界を取り巻く環境の変化は加速度を増している。…

北米市場で連携促す 松岡寛高氏(七宝金型工業社長)【この人に聞く】

ダイカスト金型メーカーの七宝金型工業・松岡寛高社長はアメリカ、カナダ、メキシコの北米市場の開拓に向けて、金型メーカーが手を取り合い、設備、技術、営業活動でサポートし合うパートナーシップを進めている。同社は2015年にメキ…

年間500型以上を生産する工場長が実践する現場のスケジュール管理、最適化術【特集:工場長の条件】

時には経営者、時には教え諭す教育者—。工場長には多様な役割が必要だ。こうしたマルチタスクをこなすために、どのようなことを意識しながら、責務を果たしているのか。現役工場長に、工場長としての哲学を聞いた。 工程管理の見える化…

【特集:2024年 金型加工技術5大ニュース】2.AIの進化

稼働止めない機能や技能支援 人工知能(AI)を活用したさまざまな機能やサービスが登場している。AIの進化に加え、センシング技術の高度化で、従来把握できなかったデータが収集できるようになり、AIに読み込ませるデータ量が増え…

フォーバンド 類似図面をAIで検索【特集:尖った技術を使いこなせ】

勘や経験など属人化を解消 モータコア用スロットパンチや研削加工などを手掛けるフォーバンド(福岡県直方市)は見積作成や図面管理業務の効率化を図るため、テクノアが展開する『AI類似図面検索』を導入。簡単に類似図面の検索や図面…

トピックス

関連サイト