300t大型プレスを導入 黒田精工は昨年12月、モータコア金型などを手掛ける長野工場(長野県池田町)を拡張し、300t大型高速プレス機を導入した。ボルスター寸法の左右長さが3・7mの大型機で、2・3mや2・7mの既設機よ…
新需要獲得に向け技術開発強化【特集:プレス加工の未来】
日本でのプレス加工の歴史が始まって約150年。日本の製造業の発展とともに、プレス加工は進化を続けてきた。近年では最大の需要先である自動車産業でEVシフトが活発化していることから、新しい需要獲得に向けた開発や事業に取り組む動きが広がっている。また、労働人口の減少による人手不足や技能伝承なども課題だ。プレス加工はどこに向かうのか。プレス加工の未来を探る。
EV化、人手不足対応
日本におけるプレス加工の始まりは諸説あるものの、明治時代に貨幣と薬きょうという2つの量産成形品の製造に用いられたとされる。その後、民間に波及し、玩具や日用品、自動車、電気機器、精密機器などへと広がっていった。金属加工の中でも安価に製品形状を作り上げることができる工法で、特に1950年代の大量生産・大量消費時代から日本経済の発展を支えてきた。
現在、プレス加工品の8~9割は自動車産業が占めている。この最大の需要先で目下起こっているのが100年に一度と言われる大変革だ。脱炭素社会の実現に向けて、電気モータを動力源とするEVへの転換を目指す動きが広がっており、プレス加工に求められるニーズも変化している。
モータやバッテリーなどといった新たな部品の需要が増加し、多くのプレス加工メーカーはこうした電動化部品への参入を目指している。今後、EVシフトが進展し、必要な電動化部品の数が増えれば、量産性に優れるプレス加工の需要は今後さらに拡大する可能性が高い。
また、こうした電動化部品に加え、需要が高まっている分野の一つに高張力鋼板(ハイテン材)プレスがある。電動化に伴い車体の軽量化が求められる中、通常の鋼材よりも硬く、強度を維持したまま薄肉化ができるハイテン材は需要が高く、技術開発に取り組む加工メーカーは少なくない。特に最近はこれまで熱間プレスで加工していたような超ハイテン材を冷間プレスで加工し、生産性の向上や環境負荷の低減を提案する事例が目立っている。
新しい動きが広がる一方で、プレス加工現場では労働人口の減少に伴い、人手不足や技能伝承が深刻な課題となっている。プレス機・周辺機器メーカー各社はロボットやセンシングなどを活用した自動化技術や、AIを始めとしたデジタル技術を活用し、人手に頼らない生産システムの開発を進める。今後も競争力を維持、向上させていくためには、こうした技術をいかに生産現場に導入していくかが重要となる。
加工メーカー、プレス機・周辺機器メーカーがさまざまな開発を進めた結果、プレス加工でこれまで実現できなかった加工が可能になっている。今後、プレス加工が目指すのは、他工法からプレス加工への置き換え、EVシフトに伴う新しい需要の取り込み、そして、次代を据えた加工現場の改革だ。プレス加工の未来は動き始めている。
金型新聞 2024年10月10日
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