金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

09

新聞購読のお申込み

田部井製作所 CAE活用し、金型改修を削減【特集:尖った技術を使いこなせ】

要求精度と短納期に対応

自動車のインナー部品(ドアインナー、フロアなど全般)向けプレス金型などを手掛ける田部井製作所はシミュレーションソフトを活用し、パネル精度の向上と金型改修回数の削減に取り組んでいる。顧客からの高まる要求精度と短納期化に対応する。

2007年にオートフォームのプレス成形シミュレーションソフト「AutoForm」を導入。それまで使用していたソフトは条件設定が難しく、計算速度も遅かった。「誰でも使え、計算速度の速いものを検討し、『AutoForm』に決めた」(八幡正志常務)。

解析作業の様子

当時「AutoForm」の計算速度は使用していたソフトの約3~5倍。導入によって、より多くの試行が可能になった。現在、2ライセンスを導入し、フル活用する。金型設計前には必ず成形解析を行っており、一つの金型に対して試行回数は30~50回に及ぶという。あらゆる条件で試行し、金型設計に反映させ、最適化を図っている。

同社の金型は高張力鋼板(ハイテン材)向けが多く、特に近年はより難度の高い980МPa以上の超ハイテン材向けが増加している。ハイテン材はその強度からスプリングバックが大きく、いかに変位量を予測し、金型づくりに反映させるかが重要。そのため、成形解析が不可欠となる。同社は現在、解析上での見込みを2・0㎜以内にとどめ、金型の改修を3回以内に収めることを目標としている。

超ハイテン材対応の1500tメカプレス機

その一方で、顧客の要求精度は年々上がっているという。「20年前は±0・5㎜ほどだったが、今は通り差を考慮すると±0・3㎜。そこにプレス機の機差などが加わるため、ほぼ0を狙うイメージ」(八幡常務)。また、改修も熟練工の手作業によるものから機械加工へと変化しており、必ず成形解析を行ってから改修用の加工データを作成する。「今や『AutoForom』がないと金型づくりができなくなっている」(田部井亮社長)。

今後、さらなる解析精度の向上に向けて金型の強度やたわみなどの構造解析も必要になる。「成型解析だけでは、どうしても実物との誤差が生まれる。構造解析によって誤差をより小さくすることができる。金型製作のスピードを上げ、収益力の向上につなげたい」(八幡常務)。

会社概要

  • 本社:栃木県足利市羽刈町921-1
  • 電話:0284・73・5211
  • 創業:1959年
  • 代表者:田部井亮社長
  • 従業員数:72人
  • 事業内容:自動車用プレス金型・治具、各種産業用金型・治具の設計、製造

金型新聞 2025年2月10日

関連記事

記者の目 ‐Reporter`s eye‐

記者の目 ‐Reporter`s eye‐

今回の“コロナ禍”で見えてきたのは、変化の必要性だ。受注や生産活動が制限される中、デデジタル化やITツールの活用など以前から指摘されていた課題が改めて浮き彫りになった。都内のある金型メーカーは、「変革の契機となるのは間違…

【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題 -事業承継-

PART3 狭山金型製作所 社長・大場治氏に聞く「事業承継」 60歳で「引退宣言」経営以外にやりたいことを「朝活」で考え方を伝える 55歳の時に60歳で社長を退くと社内外に「引退宣言」をしました。今59歳なので、あと1年…

【特集】ダイカスト金型<br>アルミ使用量増加 構造部品など採用進む

【特集】ダイカスト金型
アルミ使用量増加 構造部品など採用進む

 北米のアルミニウム協会などの調査によると、自動車の1台当たりのアルミ使用量は軽量化のために増えていくという。プレスや押し出しもあり、アルミ=ダイカストと限らないが、アルミの動向はダイカスト型にとって影響は少なくない。で…

杉山電機システム ミス検出やカス上がり検出【金型応援隊】

杉山電機システムは、プレス加工時の異常を検出し機械を自動停止させるミス検出器やカス上がり検出器の専門メーカー。基板(電子回路)からプログラム作成など自社で設計・製作する一貫生産体制を構築し、顧客ニーズに一早く応えている。…

座談会 全景

新春座談会
金型メーカー4社が語る
新時代の経営戦略

独自の力を醸成 壁を乗り越える 新時代の経営戦略 座談会出席者(50音順) 伊吹機械 伊吹宏一営業部長  事業の80%がプレス金型、20%がプレス金型組込産業機械。プレス金型はこの20年で自動車関連の仕事が大幅に増え、7…

トピックス

関連サイト