プレス・プラスチック用金型、量産、生産設備などを手掛ける山岡製作所。1938年に創業して以来、精密プレス加工を柱にさまざまな技術を培い、競争力を高めてきた。自動車や半導体・電子部品、医療関連などミクロンレベルの加工要求に…
ニッシン・パーテクチュアル 「成長市場のニッチを攻める」冷間圧造金型メーカーが“推し活”市場に挑む理由
東京ビッグサイト(東京都江東区)で7月2日~4日に開催された「推し活EXPO」。好きな有名人やキャラクターなどを応援する“推し活”に関連するグッズやサービスなどが展示され、3日間で大手小売店や出版社、玩具メーカーなど3万4,042人が来場した。
冷間圧造金型メーカーのニッシン・パーテクチュアル(埼玉県春日部市、中村稔社長)は初めてブースを構え、フェムト秒(1兆分の1秒)レーザーなどを用いた微細加工技術を紹介した。ステンレス(SUS)製のトランプや、SUS板材に加工を施したキャラクターのイラストなどを展示し、来場者の注目を集めていた。

フェムト秒レーザー加工技術で新規分野を開拓
日本国内の金型市場が年々縮小傾向にある中、同社は2022年からフェムト秒レーザー加工機を導入し、レーザー加工事業を展開する。ナノレベルの超微細な穴加工や、ワーク表面に微細な模様を施す技術(テクスチャリング)で新規分野の開拓に取り組んでいる。
これまでは医療や電子部品などの産業分野が中心だったが、あるエンタメ系のベンチャー企業から「推し活EXPO」を紹介されたのがきっかけで、“推し活”市場に興味を持ち、出展を決めた。出展理由について中村社長は「BtoBtoC向けの展示会に出展するのは初めてでしたが、当社のような微細なレーザー加工技術を展示する企業は他にないと思い、出展を決めました」と話す。

次世代微細工房「光の彫刻室」で出展
出展者名もあえて社名ではなく、「次世代微細工房『光の彫刻室』」とした。その狙いについて中村社長は「この会場で当社を知っている人はおそらく誰もいない。特徴を打ち出した方が来場者に伝わるし、良いと考えました」と説明する。
ブースでは、フェムト秒レーザーを始めとしたレーザー加工技術を用いて、金属などにイラストや模様を加工できることを訴求した。中でも前面に打ち出したのは、レーザー加工だけで虹色に加工できる「構造色加工」と呼ばれる技術。レーザーで金属表面に微細な凹凸を形成し、模様やイラストを表現する。発色の方向なども制御することができるほか、インクを使用しないため、環境負荷の低減にもつながるという。

その他、数億~十数億個にも及ぶ超微細な穴でイラストや模様を表現する「微細イラスト加工」や、般若心経262文字を彫り込んだハンコ、金型マーキング用のレーザー加工機で文字を印字したデニムなどを展示した。
今回の展示物を製作する上で、中村社長はいかに早く、安く、見栄えの良いものが作れるかということを意識したという。「今までは多少時間をかけてでも見栄えの良いものを作ろうとしていました。ただ、どんなに良いものでも売れないと意味がありません。今回はサンプルづくりについて改めて考える良いきっかけにもなりました」。
伸びている市場のニッチを目指す
大手小売店や出版社、スポーツチームなど多くの企業が同社のブースを訪れた。名刺の獲得数は、従来出展している展示会の3倍以上だったという。中村社長は「今回の出展で実感したのは、やはり伸びている市場にいかなければ、駄目だということ。今までニッチトップを目指して、皆が注目している市場は避けてきましたが、それは間違っていたと痛感しました。伸びている市場のニッチを目指していかないといけない」と話す。
ある調査によると、“推し活”の国内市場規模は年間3兆5,000億円とも試算されている。グッズ購入やイベント参加など、さまざまな消費行動につながっており、今後も市場規模の拡大が予測されている。中でもペンライトやアクリルスタンド、Tシャツなどのグッズは消費の多くを占めており、注目されている。
中村社長は、すでに来年の出展申し込みを済ませたという。「今回の出展がきっかけで、引き合いや受注につながるものがあれば、類似の展示会に出展する可能性もあります。どんどん挑戦していきたいです」。

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