金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

09

新聞購読のお申込み

【新春特別インタビュー④】ツバメックス代表取締役・多田羅 晋由氏「緩やかな連携が進む、経営者は思考の変革を」

もっと広義な意味に 緩やかな連携が進む 経営者は思考の変革を 〜M&A・企業連携〜

 1959年生まれ、大阪府出身。82年サンスター技研に入社、2005年同社代表取締役、19年2月ツバメックス代表取締役に就任し、現在に至る。サンスターグループでは、数件のM&Aを手掛けた。また、オランダでMBA(経営学修士)を取得したほか、シンガポールやスイスに駐在するなど、豊富な海外経験も持つ。

 金型メーカーを取り巻く事業環境の変化は年々激しさを増しています。そうした中でも企業価値を向上させ、持続的な成長を目指していくためには他社との連携、統合、協業が重要になると考えています。ツバメックスも2019年にサンスターグループの傘下に入りました。

 サンスターグループでは、ハミガキやハブラシだけでなく、接着材やオートバイのディスクブレーキ、スプロケットギアなども生産しています。これまでこうした製品の金型は全てグループ外からの調達でした。金型技術を取り込むことで設計力やコスト競争力の向上が期待できる。そう考え、M&Aを実施しました。

 ツバメックスとしても、これまで無かったサンスターグループの仕事が受注でき、まだ2年ほどですが、すでにシナジーは生まれています。今後は両社の技術を融合し、システムやユニットでの受注、ツバメックス独自の製品なども開発していくつもりです。

 一方で、今後のM&Aは、直訳の「合併と買収」ではなく、「緩やかな連携」といった、もっと広義な意味になると考えています。必ずしも資本の提携ではない連携や統合、協業が新しいM&Aの形になるとみています。

 この「緩やかな連携」には、大きく3つのテーマがあります。一つが、「シェアリング・ファシリティ=施設(設備)の共有」。金型メーカーはどこも受注の山谷があります。互いの設備を共有し、遊休設備を有効に活用できれば、受注の平準化につながるはずです。また、数千万円~数億円という高額な設備を全て自前で保有するのは負担が大きい。共有することで、こうした負担も軽減させることができます。

 もう一つが、「コネクテッド・ファクトリー=工場の連携」。金型メーカー同士の“水平型統合”によって規模の拡大を図るのも一つですし、我々のように川下企業と川上企業が連携する“垂直統合型”もその一つです。こうした連携によって、お互いの悩みが解決でき、システムやモジュールといった一つのソリューションで提供することもできるようになります。

 そして最後が、「ダイナミック・ケイパビリティ=企業変革力の強化」です。現在、あらゆる産業でIoTやクラウドなどのICT(情報通信技術)を活用した「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の必要性が叫ばれています。金型業界もこうした技術を活用し、地域連携を進めることで、市場の変化に対応する力を付けることが可能です。

 ツバメックスでは、地元の金型メーカー数社と連携を進めています。クラウド上に3次元設計データを上げ、仕事のやり取りを行う仕組みを構築しています。

 こうしたテーマを進めていくには、人財の強化が不可欠です。従業員のレベルアップもそうですが、経営者自身も考え方を変えないといけません。今まで以上に視野を広げ、視点を高く持つことが今後の金型メーカーの経営者には求められるのではないでしょうか。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

トップインタビュー 立松モールド工業 立松  宏樹社長<br>全ては人材育成のため

トップインタビュー 立松モールド工業 立松 宏樹社長
全ては人材育成のため

冶具、成形、部品… ポートフォリオ構築  今年6月に創業60周年を迎えた大型プラスチック金型を手掛ける立松モールド工業。60年を機に、事業部制を採用し、成形の強化、冶具や部品の販売など金型をコアに事業ポートフォリオを構築…

J-MAX 新工場建設や船活用でCO2削減【特集:カーボンニュートラルに向けたはじめの一歩】

自動車の大型プレス用金型及び部品を製造するJ‐MAX。特に、ハイテン材・超ハイテン材用の金型で高い技術を有し強みを発揮している。「2030年度までに、CO2排出量を2013年度比半減、50年度にはカーボンニュートラル実現…

【新春特別インタビュー⑦】大貫工業所社長・大貫 啓人氏「売れるものをつくり、境地まで突き詰めることが大事」

売れるものをつくる 物価の高い国で勝負 境地まで突き詰めることが大事 〜海外展開〜  1964年生まれ、茨城県出身。大学卒業後、87年大貫工業所に入社。営業で新規得意先を次々と開拓する一方で、得意先とのやり取りを通じて金…

金型磨きロボット開発<br>近畿大学・理工学部 原田 孝教授

金型磨きロボット開発
近畿大学・理工学部 原田 孝教授

パラレルで力制御、高速・高精度  金型を自動で磨くロボットはかねてから望まれ、機械メーカーや研究機関が開発に挑んできた。近畿大学理工学部の原田孝教授もそのひとり。昨年、パラレルリンクやDDモータにより微妙な力加減を緻密に…

情報収集や課題解決の場に 砥粒加工学会 会長インタビュー

今年3月、研削や研磨など砥粒加工技術の振興、発展を目的とした活動を行う砥粒加工学会の会長に就任した清水大介氏(牧野フライス精機社長)。金型メーカーに対して、「生産現場に直結した技術の発信を行う砥粒加工学会を情報収集や、加…

関連サイト