金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

07

新聞購読のお申込み

【鳥瞰蟻瞰】枚岡合金工具代表取締役社長・古芝義福氏 「3S活動のカギはぶれない姿勢とビジョン」

事業継続のために始めた3S
人を変え、行動体質に
カギはブレない姿勢とビジョン

 当社は冷間鍛造金型や文書・図面管理ソフト『デジタルドルフィンズ』、教育事業を手掛け、従業員数は23名です。社内のフリーアドレス化、リモートワーク、おしゃれ食堂など変化し続けていますが、根底には20数年前に始めた整理・整頓・清掃の3S活動があります。

 1999年の当社は役員含め9名、平均年齢57歳の町工場でした。私の入社が85年で、その間21名採用しましたが誰も残らず、このままいけば廃業の危機です。そこで外部セミナーを受講し、京都のある工場で出会ったのが3S活動でした。まるでテーマパークのようなキレイな工場で社員さんも生き生き働く姿に衝撃を受け、「こんな工場にしたい」そう思い、3S活動を始めたのですが、そこからが棘の道でした。

 工具や軍手が散らかる工場で、「とにかく掃除しよう」と私や兄(現会長)が率先して始めると、中堅・ベテラン職人さんから反発が起きました。「仕事があるから旋盤回した方がいい」と。職人さんは全員私より年上で、3S活動を理解してもらえず、社内も賛成派、中間派、反対派に分かれ、押し問答の繰り返しです。私も心に言い続けました。「結果を出すしかない」と。でも、1年後業績が下がり、反対派の職人さんと掴み合いの喧嘩まで発展。私も「こんな会社に自分の人生をかけたくない」と本当に心が折れかけた瞬間でした。

 そんな時、大手メーカーから当社の3S活動を聞いて見学依頼が来ました。それまで外部との接点が少なかった職人さんも褒めてもらったのが嬉しかった。それが分岐点。もう1つは当時製造だった若手が中々育たず、自分の意見も話さない。みんながあきらめかけた時「それなら3S活動ばかりさせよう」と実践すると、不思議なことに仕事に対し興味を持ち始め、自分の意見を話すのを見て、3S活動は人を変えると感じました。

 3S活動の目的は安全・快適・効率的です。仕事は人生の1/3の時間を占めるわけですから、工場が安全かつ快適で、効率的に仕事をすれば、良いモノができます。でも、当たり前のことを当たり前に継続することほど難しいものはありません。続けるには経営者のブレない軸・姿勢が必要です。当社の軸は『働く人が幸せになること』。これが枚岡合金の源です。私も3S活動で変わりました。始めた当初は私のコミュニケーション不足で、危機感を煽る言葉を多く掛けていましたが、それだと人は動きません。啓蒙活動はプラス言葉で「5年後にこうなる」ビジョンを示さないと人は動かない。結果的に当初反対していた職人さんも辞めずに続けてもらえました。3S活動は実行すると、すぐ効果が出て行動体質になります。コツは小さなエリアを集中的に清掃していく。気づくと汚れた場所が目立ち、もっと清掃したくなります。90点や100点を目指す人もいますが、まずは35点主義の加点方式でやってみる。それが行動に移す1つのきっかけになります。

金型新聞 2021年5月14日

関連記事

この人に聞く2015<br>天青会(金型工業会東部支部)<br>小泉 秀樹会長(ペッカー精工社長)

この人に聞く2015
天青会(金型工業会東部支部)
小泉 秀樹会長(ペッカー精工社長)

金型以外にも視野 原点から新たな発見  日本金型工業会東部支部天青会の会長に今年5月、就任した。「原点に立ち返って、色々な視点から根本を見直せるような活動をしていく」と今年度のテーマに「原点回帰」を掲げる。  天青会に入…

金属3Dの金型で革命を ムトー精工が挑むコスト削減と新価値の創造[金型の底力]

樹脂部品の金型から成形、組み立てまでを手掛けるムトー精工は金属3Dプリンタによる金型づくりを進めている。成形サイクルを上げ、コストダウンや成形機の設備削減などを狙う。さらに、他の技術と組み合わせ、付加価値の向上にもつなげ…

三嶋商事 仕上げに専念したいというニーズに応える

ねじ転造盤やローリングマシンなどの販売や転造技術の開発を手掛ける三嶋商事(愛知県日進市、0561-72-2657)は部品加工部門を立ち上げ、冷間鍛造用金型のダイスケースなど1次加工(荒加工)の受託加工サービスを開始した。…

「なりたい自分になれるかも」金型メーカーに就職した女性広報

狭山金型製作所 総務部 東香奈恵さん 総務部で営業のサポートや動画によるマニュアル作成などを担当する。そうした「本業」に加え、インスタグラムやフェイスブックなどSNSで狭山金型の日常や取り組みを発信する金型メーカーでは珍…

ポートフォリオを再構築 畠山英之氏(キヤノンモールド社長)【この人に聞く】

「金型づくりへのパッションが強い」—。今年4月、キヤノンモールドの社長に就いた畠山英之氏が抱いた同社への第一印象だ。その情熱を武器に、超精密金型など同社でしかできない型づくりを進める一方、海外拡大や外販強化など「事業ポー…

トピックス

関連サイト