金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

18

新聞購読のお申込み

【鳥瞰蟻瞰】枚岡合金工具代表取締役社長・古芝義福氏 「3S活動のカギはぶれない姿勢とビジョン」

事業継続のために始めた3S
人を変え、行動体質に
カギはブレない姿勢とビジョン

 当社は冷間鍛造金型や文書・図面管理ソフト『デジタルドルフィンズ』、教育事業を手掛け、従業員数は23名です。社内のフリーアドレス化、リモートワーク、おしゃれ食堂など変化し続けていますが、根底には20数年前に始めた整理・整頓・清掃の3S活動があります。

 1999年の当社は役員含め9名、平均年齢57歳の町工場でした。私の入社が85年で、その間21名採用しましたが誰も残らず、このままいけば廃業の危機です。そこで外部セミナーを受講し、京都のある工場で出会ったのが3S活動でした。まるでテーマパークのようなキレイな工場で社員さんも生き生き働く姿に衝撃を受け、「こんな工場にしたい」そう思い、3S活動を始めたのですが、そこからが棘の道でした。

 工具や軍手が散らかる工場で、「とにかく掃除しよう」と私や兄(現会長)が率先して始めると、中堅・ベテラン職人さんから反発が起きました。「仕事があるから旋盤回した方がいい」と。職人さんは全員私より年上で、3S活動を理解してもらえず、社内も賛成派、中間派、反対派に分かれ、押し問答の繰り返しです。私も心に言い続けました。「結果を出すしかない」と。でも、1年後業績が下がり、反対派の職人さんと掴み合いの喧嘩まで発展。私も「こんな会社に自分の人生をかけたくない」と本当に心が折れかけた瞬間でした。

 そんな時、大手メーカーから当社の3S活動を聞いて見学依頼が来ました。それまで外部との接点が少なかった職人さんも褒めてもらったのが嬉しかった。それが分岐点。もう1つは当時製造だった若手が中々育たず、自分の意見も話さない。みんながあきらめかけた時「それなら3S活動ばかりさせよう」と実践すると、不思議なことに仕事に対し興味を持ち始め、自分の意見を話すのを見て、3S活動は人を変えると感じました。

 3S活動の目的は安全・快適・効率的です。仕事は人生の1/3の時間を占めるわけですから、工場が安全かつ快適で、効率的に仕事をすれば、良いモノができます。でも、当たり前のことを当たり前に継続することほど難しいものはありません。続けるには経営者のブレない軸・姿勢が必要です。当社の軸は『働く人が幸せになること』。これが枚岡合金の源です。私も3S活動で変わりました。始めた当初は私のコミュニケーション不足で、危機感を煽る言葉を多く掛けていましたが、それだと人は動きません。啓蒙活動はプラス言葉で「5年後にこうなる」ビジョンを示さないと人は動かない。結果的に当初反対していた職人さんも辞めずに続けてもらえました。3S活動は実行すると、すぐ効果が出て行動体質になります。コツは小さなエリアを集中的に清掃していく。気づくと汚れた場所が目立ち、もっと清掃したくなります。90点や100点を目指す人もいますが、まずは35点主義の加点方式でやってみる。それが行動に移す1つのきっかけになります。

金型新聞 2021年5月14日

関連記事

―スペシャリスト―リバン・イシカワ<br>金型の経験生かし心配り

―スペシャリスト―リバン・イシカワ
金型の経験生かし心配り

精密金型部品 キャビティやコア、スライドコアなどの金型部品を専門に手掛ける会社がある。富山県南砺市のリバン・イシカワ。金型づくりで培った経験を生かし、独自の工夫や細やかな心配りで自動車関連メーカーの金型部門や金型メーカー…

【新春特別インタビュー①】日本金型工業会会長・小出 悟氏(小出製作所社長)「旧態依然の手法通用せず、今こそ変わるべき時」

旧態依然の手法通用せず 今こそ変わるべき時 〜金型産業ビジョン〜  1955年静岡県生まれ。78年に工学院大学機械工学科を卒業後、名古屋の金型メーカー高橋精機工業所に入社し、金型づくりを学ぶ。81年にアルミダイカスト金型…

電動化3種の神器に挑む
〜生産現場を訪ねて〜 ニシムラ(愛知県豊田市)

特集  次世代車で変わる駆動部品の金型(バッテリー、モータ、電子部品)  「自動車向けの金型を手掛ける企業は今後、バッテリー、モータ、電子部品、この3部品に携わっていないと生き残れない時代になる」と話すのはプレ…

澤越俊幸さん 3Dプリンタの普及にまい進する[ひと]

日本AM協会専務理事 澤越 俊幸さん 金型、航空機、自動車、電子部品—。日本のものづくりに3Dプリンタ(AM)を普及させる。それを目標とする一般社団法人の専務理事を務める。会員企業や研究機関とスクラムを組み、セミナーによ…

【鳥瞰蟻瞰】長野県南信工科短期大学校 准教授・中島 一雄氏「調べ、試し、失敗を繰り返しながら挑戦」

技術者の教育には考えさせることが重要DXで一層必要になる 分かっているものに取り組んでいても技術者としての成長はありません。自らで調べ、試し、失敗を繰り返しながら挑戦していくことこそが技術者の根幹であり、何よりも重要なこ…

トピックス

関連サイト