金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

FEBRUARY

18

新聞購読のお申込み

【この人に聞く】大同特殊鋼 次世代製品開発センター主席部員・井上 幸一郎氏「SKD61相当の粉末材」

ダイカスト金型などでパウダーベッド式の金属3Dプリンタによる金型づくりが広がり始めてきた。背景の一つには、金型に適した材料の進化がある。中でも、これまで金型で広く使われてきたSKD61に相当する材料が登場し始めたことが大きい。今春に販売を開始したSKD61相当材の金属3Dプリンタ用の粉末材「HTCシリーズ」を開発した、大同特殊鋼の井上幸一郎主席部員に開発の背景や素材の特長などについて聞いた。

金属3D造形の用途広がる 硬さ40~45HRC、造形し易く

いのうえ・こういちろう
1966年生まれ、大阪府出身。91年関西大学大学院工学研究科卒、同年大同特殊鋼入社。構造用鋼、工具鋼の研究開発に従事後、2013年工具鋼技術サービス部長、21年から現職。

開発の背景は。

金型で広く使われてきたマルエージング鋼は、造形したままでは35HRC程度の硬さにしかならないため、造形後に割れが生じにくく、造形しやすい利点があった。だが、40HRC以上で使うダイカスト金型には硬度が足りなく、硬くするには時効処理が必要だった。

一方、SKD61相当材の粉末は、造形したままで50HRCを超える硬さが得られる反面、造形が難しかった。この硬さと造形性という、相反する要素をバランスよく両立させた。

具体的な特長は。

硬さは炭素量に比例するので、HTCでは金型に必要な硬さが得られる最低限まで炭素添加量を調整した。これにより、造形したままで40~45HRCが得られ、造形性が改善されたほか、造形後の焼き戻しで50HRCまでの硬さ調整を可能にした。一方で、割れが生じにくいように造形性を改善した。

そのほかの特長は。

熱伝導性の高さだ。HTCはマルエージング鋼よりも2倍、SKD61と比較しても1・5倍を実現した。これによって、得られる効果は大きい。

マルエージング鋼で自由に水冷管を造形した金型では、かじりは減ったものの、水冷管が割れてしまい、型寿命が延びなかった。マルエージング鋼の熱伝導性が低いことで、熱応力の影響を受けたためだ。HTCは熱伝導性が高いので、冷却効果を維持しつつ、型寿命も伸ばせる。

留意する点は。

造形性が良くなったとはいえ、やはり割れには注意が必要だ。割れを減らすには、2つの点に留意する必要がある。

1つは、できるだけ割れの起点となる鋭い角を作らないこと。そして
もう一つは、造形後にショットブラストなどで、造形面を平滑化すること。いずれも、積層面から割れが生じやすいからだ。

今後の課題は。

サイズ拡大への対応は欠かせない。現状150㎜角以上のサイズを造形すると割れが生じやすくなる。あとは価格。材料費に加え、機械チャージも含めたコスト低減が必要だと思う。今の価格では適応領域はまだ狭い。また、機械によって造形条件が異なるので、材料と機械の条件調整は必要になる。素材メーカーとしてできる限り対応していきたい。

金型新聞 2021年11月10日

関連記事

新会社設立で「meviy」の開発速度向上 吉田光伸氏(DTダイナミクス会長)【この人に聞く】

ミスミ(東京都文京区、03・5805・7050)は2022年9月、システム開発を手掛けるコアコンセプト・テクノロジー(東京都豊島区、以下CCT)との合弁会社「DTダイナミクス」を設立した。ミスミが提供するオンライン機械部…

ユニオン精機 直彫り化でリードタイム短縮、進化し続ける企業目指す【Innovation〜革新に挑む〜vol.6】

ダイカスト金型を中心としたアルミニウム鋳造用金型専業メーカーのユニオン精機(兵庫県加古川市、079・425・0765)。型締力1000t以上の大物金型を得意とし、二輪・四輪車や汎用エンジンなどのアルミニウム鋳造部品に対応…

米山金型製作所が「微細成形ラボ」を設立するワケ

微細成形ラボを設立 量産化までの支援サービスを提供 自動車や医療などの精密プラスチック射出成形用金型を手掛ける米山金型製作所は今年9月、微細成形技術が提供可能な「微細成形ラボ」を設立する。既存設備よりも大型の射出成形機を…

南海モルディ 金型補修を自動化【金型応援隊】

特殊鋼材料の販売や金型のメンテナンスを手掛ける商社の南海モルディ(22年9月に南海鋼材から社名変更)は、オリジナル製品「予熱くん」や「肉盛りくん」を開発、販売し好評を得ている。 「予熱くん」は、製造前の金型予熱、焼き嵌め…

高精度、省人化ニーズが高まる国内市場で注力すること 田代勝氏(三菱電機 産業メカトロニクス事業部長)【この人に聞く】

三菱電機は50年以上に渡って、高精度、高性能な放電加工機を開発し、付加価値の高い金型づくりに貢献してきた。近年では省人化ニーズへの対応に注力する他、金属3Dプリンタを開発するなど技術領域を広げている。同社は今後、金型業界…

トピックス

関連サイト