IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの新技術が製造業に大きな変化をもたらそうとしている。工作機械や工具などの生産財も、これまでは難しかった精度や加工が実現できるようになるなど、金型づくりも大きく変わり始め…
【鳥瞰蟻瞰】長野県南信工科短期大学校 准教授・中島 一雄氏「調べ、試し、失敗を繰り返しながら挑戦」
技術者の教育には
考えさせることが重要
DXで一層必要になる

分かっているものに取り組んでいても技術者としての成長はありません。自らで調べ、試し、失敗を繰り返しながら挑戦していくことこそが技術者の根幹であり、何よりも重要なことだと思います。
これまでの教育機関では正解に導くための指導を行ってきましたが、それだけではこれからの生産現場で活躍できる人材は育ちません。その過程でいかに考え、工夫させることができるか。技術者の教育、育成にはこうした取り組みが必要だと考えています。
長野県南信工科短期大学校(長野県南箕輪村)は技術者の育成を目的に2016年に開校されました。私は同校の立ち上げから携わり、現在は機械システム学科(機械・生産技術科)で主に機械加工や設計、制御技術を教えています。
開校にあたり特にこだわったのは、より実践的な技術が身に付くカリキュラムづくりです。授業の約6割を実習と実験とし、座学で勉強したことを実践できる時間を多くとりました。そのため、各種実験装置や3Dプリンタ、3軸・5軸マシニングセンタ、NC旋盤など実習設備を充実させ、学生たちが少しでも多く機械に触れられる環境を整えています。
数ある実習授業の中でも特徴的な授業の一つが「総合課題」です。この授業は1年生の秋から約半年かけて学生自身が作りたいものを自由に企画してものづくりを行います。機械システム学科と電気システム学科(電気・制御技術科)の学生が合同でグループを作り、予算も設定して、授業を進めていきます。
結果は重要ですが、この授業に正解はなく、重視しているのはその過程です。たとえうまくいかなかったとしても、自分で考えて、調べて、仲間と協力することで得られるものは大きいと考えています。
当校のカリキュラムは今必要な技術とこれから必要な技術が学べる内容になっています。機械の使い方や加工原理など現在の機械分野で必要な知識や技術だけでなく、デジタル技術といったこれからの生産現場でより求められるようになる知識や技術についても教えています。
その一つが3Dデータです。当校の学生は入学後3カ月ほどで3DCADの使い方を学びます。単なる使い方だけでなく、外部講師を招き、3DCADソフトウェア「ソリッドワークス」の認定試験も取得しています。
これからのものづくりは、3Dデータを起点に色々な工程に派生していくと考えています。CAMやCAE、3Dプリンタはもちろん、2D図面も3Dデータが起点になっていくでしょう。鉛筆の持ち方を教えるのと同じように、3DCADの使い方を教える時代になったと感じています。
地域企業のスワニー(長野県伊那市)が開発した3Dプリンタで造形する樹脂製金型「デジタルモールド」を取り入れた金型の教育もその一環です。3Dデータを使って、デザインから金型設計、加工、成形までの一連工程を学ばせています。また、私の研究室では3Dプリンタ活用技術の開発などに取り組んでいます。最近では当校とスワニーおよび粉末冶金技術を持つナパック(長野県駒ケ根市)の共同研究で、新しい金型製作法「デジタルモールド粉末冶金」も開発しました。
ものづくりは大きく変化しています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味が広がり、製造現場でもAIやセンシング技術の活用が進んでいます。技術者もこれまでの延長線上にない未知の分野、領域に挑戦しなければいけない時代になりました。こうした時代で一層必要となるのは、自分で考え、実践できる人材です。そうした人材を育てていくことが私たちの使命だと考えています。
金型新聞 2021年11月10日
関連記事
コストダウン、納期短縮図る 自動車用アルミダイカスト部品メーカーの美濃工業(岐阜県中津川市、0573-66-1025)は2021年3月、埼玉県熊谷市に「熊谷金型センター」を設立し、金型製造を開始した。20年10月には静岡…
新中期経営計画「SAIMS247」。その狙い、そして目的は。笹山勝社長に聞いた。 「短納期」を強みに、海外での競争に打ち勝つ SAIMS247の3カ年の目標は金型の製作期間半減。その真の狙いは金型の競争力の再強化です。当…
順送り金型やプレス加工を手掛ける伊藤製作所は本社近くにテクニカルセンタを設立し、金型部門を集約することで、本社工場などにプレス機械を増設し、需要が高まっているプレス部品の増産体制を整える。さらに、CAEや3D形状測定機、…
自動車のプレス金型を手掛ける明星金属工業は、工場のエア効率化や照明のLED化などにより16年間でCO2排出量を18・5%削減した。カーボンニュートラルへの取り組みを推進する上田幸司社長は「CO2削減に取り組むことで無駄な…


