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【特集】日本の金型業界に必要な4つの課題 -事業承継-

PART3 狭山金型製作所 社長・大場治氏に聞く「事業承継」

60歳で「引退宣言」
経営以外にやりたいことを「朝活」で考え方を伝える

55歳の時に60歳で社長を退くと社内外に「引退宣言」をしました。今59歳なので、あと1年で社長を譲るつもりです。宣言したのは、企業を永続させるためには組織と人づくりが必要で、5年間はそれに専念するためです。後継者はその間に将来を考え、賛同者を増やす期間でもあります。また、親子間の承継なので、時期を決めないとズルズルと伸びる可能性もありますからね。

宣言して良かったのは、幹部を中心に社員のモチベーションが高まったことです。期限を区切ったことで、将来の幹部候補が「社長には頼れない。我々がやらなくては」と、目の色が変わってきたように思います。

「60歳で引退は早いのではないか」という声もありましたが、私は25歳の時に父が急逝し経営者になりましたし、事業の承継に年齢は関係ないと思います。何より株式会社は公の器。企業存続のために次の経営者にバトンを渡すことは必要ですし、そのための最善の道を選ぶべきです。

むしろ、経営者は会社にしがみついていてはいけない。親子同様にきっぱり子離れする必要があります。そのために「経営以外にやりたいこと」を持っておくことは重要だと思います。やるべきことがないと、口を出してしまいがちですからね。

私にはやりたいことがたくさんあります。海外とのジョイントベンチャーの拡大や、微細加工技術をもっと世に広げたい。学生や子供たちにものづくりの喜びや楽しさを伝えたい。引退後のほうが忙しいくらいで、今後は加工や技術の相談に乗るくらいでしょう。

こうして準備や心構えをしていても、もちろん課題はあります。中でも最も大きいのが、業界の変化が激しく、過去の経験があまり役に立たないことです。私自身30年以上のキャリアを持つ金型づくりのプロですが、これからの時代には技術だけ明るくてもダメです。むしろ、職人より「経営のプロ」が求められます。

だから、後継者には金型づくりを追求するのではなく、マネジメント全般と営業を担当してもらい、技術や開発は別の責任者を置く予定です。ただ、金型を使う側から良し悪しを判断できるよう成形を学んでもらっています。後継者は私と違って英語ができ、国際関係に明るい。むしろそうした部分やマネジメントや経営力を伸ばしていって欲しいと思っています。

とはいえ、私の思いや考え方は伝えたい。そのために、後継者と二人きりで「朝活」を始めました。隣にいても互いに忙しくじっくり話できる時間が取れないので、就業前に数十分、毎日話をしています。テーマは「前日の営業案件」や「社員の指導」など、日々起こることなら何でもアリです。「どう思うか」と意見を聞いたり、「自分ならばこう考える」など考え方を伝えたりしています。

色んなことを試していますが、正直最初の2年は苦労の連続でした。でも、苦労したからこそ、学べたことも少なくありません。そして痛感したのは、組織や人づくりは、難しい金型づくりよりも難しいということです。それでもあと1年、組織と人づくりに後継者と社員とともに挑戦していきたいと思います。

※特集のトップページはこちらから

金型新聞 2022年1月10日

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