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魚岸精機工業 「低廉化金型」で「古くて新しい」課題を解決
ロットに応じ金型を安く
低廉化金型を開発
自動車部品などのダイカスト金型を手掛ける魚岸精機工業は、ロット数に合わせて、金型の価格を安くする「低廉化金型」の開発に成功した。ある金型では従来に比べて最大45%安くなるという。建機など小ロットでの需要が多いユーザーの開拓につなげる。さらに、型保管問題の軽減や、部品を再利用できる仕組みも構築する考えで、顧客企業の環境負荷低減の提案にもつなげる狙いだ。
「ショット数が少ないのだから型費を抑えて欲しい」—。こうした要望は昔から存在する。試作型なら可能でも、本型では、材料、型設計、型構造などを大きく変えられないため、実際には難しい。今回開発に成功した「低廉化金型」はこうした「古くて新しい」課題の解決つなげる。
開発は戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)を活用し、地元のダイカスターと協力。「加工ノウハウや型構造、材質を全て見直した」(魚岸成光社長)ことで、「500個の成形品が必要な金型で価格は45%、リードタイム4割減」を実現した。1000万円の金型なら、型費は450万、納期3カ月が2か月弱になる計算だ。
現在は500個用の金型だけだが「1000、3000、15000、20000個の成形数に合わせた5つのパターンを用意する」という。精度やショット数など顧客の要求に合わせるため、金型材質や表面処理など複数のバリエーションを試した金型を製作している(写真)。
精度や強度、保証数などは「顧客と相談の上、どのパターンが最適なのか詳細を詰める」ようにし、まずは、建機や農機など小ロットの要求が多いユーザーの開拓につなげる。さらに「試作型との価格差も少ないので、(本型と仕様が異なる)従来の試作型とは違い、本型同様の試作型としても提案したい」と顧客層を広げる考えだ。
開発の契機となったのは「ユーザーからの要望」だが、「長期的に金型を取り巻く環境を考えた」からだという。「電動車の登場などで部品の共通化が進み、生産数の増える部品もある。一方で、日本では昔のような大量生産は減り、少量生産が増える」とみる。
こうした変化に金型メーカーとしてどう対応していくべきなのか。魚岸社長は「共通化で増える部品には長寿命化など、これまでの金型技術を磨けばいい。少量生産時代でも利益を出せる体質にするには『低廉化金型』は必要だった」と話す。
もう一つの狙いが型保管への対応だ。「必要な数だけ成形した後に、型を廃棄できればその負担がなくなる。いずれ必要ならまた安く作ればいい」という。しかし一方で、金型部品のリサイクルも念頭に置いているという。
低廉化金型を5つにパターン化させ、ある程度部品を共通化させたのもそのためだ。部品を統一できればコスト削減にもつながる。さらに顧客が廃棄する金型を引き取り、使える部品を再利用することも検討する。「そうすることで、コストもさらに低減できるし、環境負荷低減にもつながる」。低廉化金型を単にコストだけでなく、環境負荷低減という新たな価値創造にもつなげる考えだ。
会社の自己評価シート
低廉化金型の開発に代表されるように「チャレンジ精神」と、それを会社全体で取り組む「チーム力」も強みだと分析。創業75年以上5000型超の実績による「技術力」も強みだと評価した。
会社概要
- 本社 : 富山県射水市北高木118-1
- 電話 :0766-52-5222
- 代表者 :魚岸成光社長
- 創業 :1946年
- 従業員 :62人
- 事業内容:ダイカスト金型及び各種金型の設計・製造、航空機部品加工
金型新聞 2022年3月10日
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