金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

11

新聞購読のお申込み

金型メーカーの新分野展開が加速する

事業再構築補助金を活用

深絞りの精密順送プレス金型(日進精機)

金型メーカーの新分野展開、業態転換が加速している。コロナ禍や、自動車の電動化などによって事業環境が大きく変化する金型業界。多くの金型メーカーが2021年からスタートした「事業再構築補助金」を活用し、新しい設備やシステムを導入することによって、成長分野への事業領域拡大、EV化への対応、独自商品の開発などに取り組んでいる

EV時代の新たな柱

20年度第3次補正予算で1兆1485億円が計上された「事業再構築補助金」は、コロナ禍による事業環境の変化に対応する中小企業を支援するために設けられた。第4回までの公募で、延べ8万件を超える申請があり、約3万5000件が採択された。現在、第5回の公募が始まっている。

採択された案件のうち、製造業が占める割合は2~3割ほどで金型メーカーの件数も少なくない。特に目立つのは半導体関連や医療関連など成長分野への事業領域の拡大だ。プレス用金型メーカーの日進精機(東京都大田区)は強みの深絞り技術を活用し、現在の主要顧客である自動車市場から、半導体市場への参入を目指す。サーボプレスを導入し、肉厚精密加工を可能にするという。

プラスチック用金型メーカーのシミズトライム(静岡市清水区)は金型加工技術を生かし、医療機器部品の試作に挑む。特に高い加工精度と表面粗さが要求される薄肉注射器部品で参入を図るとしている。また、半導体やスマホ向けの精密プレス金型を手掛ける藤井精工(福岡県鞍手町)も新規設備を導入し、金型業界から医療分野への事業転換を目指すという。

成長分野への拡大と同じように多かったのが、自動車の電動化(EV化)への対応だ。プレス用金型メーカーのオオイテック(群馬県太田市)は、軽量化に対応した金型を製造するためにデジタル技術を活用した生産体制の確立に取り組むという。また、ダイカスト用金型メーカーの松村精型(富山県高岡市)はEV分野に参入するために、大型アルミ鋳造金型製造ラインを導入するとしている。

その他、独自商品を開発し、一般消費者向けのビジネスモデルに挑戦する企業もあった。

現在、金型業界を取り巻く環境は大きく変化している。コロナ禍に加え、自動車の電動化による金型需要の変化などによって、多くの金型メーカーが既存分野だけで安定した受注を獲得するのが難しくなりつつある。早期に新しい柱となる事業を確立することが求められている。

「事業再構築補助金」は22年度も継続する。上手く活用し、新市場の開拓や新規事業の立ち上げなどにつなげたい。

金型新聞 2022年3月10日

関連記事

フォーバンド 類似図面をAIで検索【特集:尖った技術を使いこなせ】

勘や経験など属人化を解消 モータコア用スロットパンチや研削加工などを手掛けるフォーバンド(福岡県直方市)は見積作成や図面管理業務の効率化を図るため、テクノアが展開する『AI類似図面検索』を導入。簡単に類似図面の検索や図面…

【特集:2024年 金型加工技術5大ニュース】2.AIの進化

稼働止めない機能や技能支援 人工知能(AI)を活用したさまざまな機能やサービスが登場している。AIの進化に加え、センシング技術の高度化で、従来把握できなかったデータが収集できるようになり、AIに読み込ませるデータ量が増え…

金型経営者アンケート 次の10年を勝ち残るために取り組むこととは?【特集:次の10年を勝ち残る4つの道】

自動車の電動化などによる金型需要の変化、少子高齢化による人手不足、アディティブ・マニファクチャリング(AM=付加製造)を始めとした新たな製造技術や技術革新―。金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型…

【特集】リーダーの条件

 昨秋、日本金型工業会は6年ぶりに改訂した「令和時代の金型産業ビジョン」で、金型メーカーはこれまでのように単に言われたものを作るだけの「工場」から、顧客に価値提供する「企業」への変革が必要だと指摘した。これまで続けてきた…

横田悦二郎氏

【プレス型特集】強みを維持し続けるには…
日本金型工業会 学術顧問 横田 悦二郎氏に聞く
プレス金型の強みと未来

ゼロベースで知恵絞る 得意な分野で連携を 顧客の生産技術をサポート  日本金型工業会の学術顧問を務める、日本工業大学大学院の横田悦二郎教授は、日本のプレス金型の強みを「他の型種に比べ、技術の蓄積が生かせる部分が大きい」と…

トピックス

関連サイト