金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

29

新聞購読のお申込み

金型メーカーの新分野展開が加速する

事業再構築補助金を活用

深絞りの精密順送プレス金型(日進精機)

金型メーカーの新分野展開、業態転換が加速している。コロナ禍や、自動車の電動化などによって事業環境が大きく変化する金型業界。多くの金型メーカーが2021年からスタートした「事業再構築補助金」を活用し、新しい設備やシステムを導入することによって、成長分野への事業領域拡大、EV化への対応、独自商品の開発などに取り組んでいる

EV時代の新たな柱

20年度第3次補正予算で1兆1485億円が計上された「事業再構築補助金」は、コロナ禍による事業環境の変化に対応する中小企業を支援するために設けられた。第4回までの公募で、延べ8万件を超える申請があり、約3万5000件が採択された。現在、第5回の公募が始まっている。

採択された案件のうち、製造業が占める割合は2~3割ほどで金型メーカーの件数も少なくない。特に目立つのは半導体関連や医療関連など成長分野への事業領域の拡大だ。プレス用金型メーカーの日進精機(東京都大田区)は強みの深絞り技術を活用し、現在の主要顧客である自動車市場から、半導体市場への参入を目指す。サーボプレスを導入し、肉厚精密加工を可能にするという。

プラスチック用金型メーカーのシミズトライム(静岡市清水区)は金型加工技術を生かし、医療機器部品の試作に挑む。特に高い加工精度と表面粗さが要求される薄肉注射器部品で参入を図るとしている。また、半導体やスマホ向けの精密プレス金型を手掛ける藤井精工(福岡県鞍手町)も新規設備を導入し、金型業界から医療分野への事業転換を目指すという。

成長分野への拡大と同じように多かったのが、自動車の電動化(EV化)への対応だ。プレス用金型メーカーのオオイテック(群馬県太田市)は、軽量化に対応した金型を製造するためにデジタル技術を活用した生産体制の確立に取り組むという。また、ダイカスト用金型メーカーの松村精型(富山県高岡市)はEV分野に参入するために、大型アルミ鋳造金型製造ラインを導入するとしている。

その他、独自商品を開発し、一般消費者向けのビジネスモデルに挑戦する企業もあった。

現在、金型業界を取り巻く環境は大きく変化している。コロナ禍に加え、自動車の電動化による金型需要の変化などによって、多くの金型メーカーが既存分野だけで安定した受注を獲得するのが難しくなりつつある。早期に新しい柱となる事業を確立することが求められている。

「事業再構築補助金」は22年度も継続する。上手く活用し、新市場の開拓や新規事業の立ち上げなどにつなげたい。

金型新聞 2022年3月10日

関連記事

【特集:2023年金型加工技術5大ニュース】4.AM活用の広がり

多様な活用方法や機器の進化 金属AMによる金型づくりが徐々に広がりを見せており、活用事例が増えている。金属AMの活用は、従来の金型づくりに付加価値をつけ、他社との差別化を図るための手段として有効。今後ギガキャストで、金属…

中辻金型工業 切削工具を自社開発

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

三光化成 エアと水のハイブリッド冷却【特集:金型づくりで広がる金属AM活用】

ラティス構造を採用し、材料費と造形時間を削減 自動車関連を中心に6000品目を超える樹脂成形部品を生産する三光化成。ソディックの金属3Dプリンタ「OPM350L」を活用し、水とエアを冷却媒体として活用する「ハイブリッドコ…

【特集】2030年の自動車と、金型と

PART1:電動化というチャンス、新たな需要が生まれるPART2:この10年を振り返るPART3:新潮流に挑むチャレンジャーたちPART4:記者の目 PART1 電動化というチャンス、新たな需要が生まれる  電子部品、モ…

デジタル技術駆使し、金型製作期間半減目指す【ササヤマ challenge!Next50】

ササヤマが今期スタートした新中期経営計画「SAIMS247」。その中核事業となるのが金型製作期間の半減だ。デジタル技術や経験を駆使し金型づくりの大改革が進む。 全ての部品をQRで管理 材料に書かれたシリアルナンバー。入力…

トピックス

関連サイト