金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

28

新聞購読のお申込み

米由来のバイオプラ 関東製作所が確立した金型・成形技術とは

脱炭素社会に向けた取り組みがものづくりで加速し、金型業界でもその動きが広がりつつある。先手を打つ金型メーカーの対応には大きくは2つの方向性がある。一つは、太陽光パネルの設置や設備の省エネ化などによる自社の生産活動でCO2 を削減すること。そしてもう一つは、顧客のCO2 削減に貢献する金型の開発や提案だ。カーボンニュートラルの達成に向け、積極的に取り組む金型メーカーを取材した。

バイオプラ成形技術確立

成形機に取り付けた金型

石油系プラスチックの削減目指す

バイオプラで成形したスマホスタンド

バイオマスプラスチック(以下バイオプラ)は原料に再生可能な有機質な資源を原料とするプラスチック。燃やして二酸化炭素が発生しても、元は空気中にあったもので、CO2が増えず、カーボンニュートラルに貢献すると期待されている。

ブロー成形や射出成形などの金型製作から量産を手掛ける関東製作所(東京都江東区、03-3631-6034)はお米由来のバイオプラの成形技術の開発に乗り出し、試作品「スマホスタンド」で実験を行った。食用に適さない古い米や破砕米などを活用したバイオプラの金型及び成形技術を確立し、カーボンニュートラルやSDGsへの貢献を目指す。

「バイオプラが注目される中、金型メーカーとして何ができるかを考え、技術開発としてバイオプラの特性、成形条件などを評価し、新しい樹脂の可能性を追求することだ」と渡邉章社長。目を向けたのが、バイオマスレジン南魚沼が製造・販売する米原料のバイオプラである「ライスレジン」だ。100%国産で高い品質と石油系プラスチックと同等の強度を持ち、国産で安定した供給が可能だ。

試作品スマホスタンドに使用したライスレジンの成分は米55%、PP45%でABS樹脂と同条件で金型製作から成形に至るトライ評価を行った。金型は従来の金型の構造のままで成形は実現したが、温度コントロールが難しく、数ショット打つと焦げ付くなどの課題が見え、成形条件や材料の改良へ結びつけていく。「成形性を考えると、バイオプラの含有量は30%以下にしないと量産成形は難しい」とし、材料メーカーと意見交換を行いながら、量産に最適な成分や条件を見つけ、技術の確立を図る。

ライスレジンの活用はCO2や食品ロスの削減などSDGs、カーボンニュートラルにつながり、技術開発を進めることは意義があると渡邉社長は説く。「自動車関係もバイオプラの活用に関心を示し、問合せが来ている。また、日常品など新市場にも活用できるため、新規開拓につながるだろう」と期待感を込めた。同社ではライスレジン以外にも、ヘミセルロースなど他のバイオプラ成形を視野に入れ、技術開発を継続する考えだ。

金型新聞 2022年7月1日

関連記事

【特集:技能レス5大テーマ】4.磨きレス

新被膜やPCDでサブミクロン 仕上げや組付けなど金型の品質を決める領域には人の手は欠かせない。磨き工程もその一つ。しかし、磨きには時間や人手がかかることから、できるだけ機械加工で追い込み、磨きを減らしたいという声は多い。…

ウエブサイトやSNS活用し、見込み顧客発掘 【特集:営業ってどうする?】

金型メーカーの新規顧客の開拓方法が変わりつつある。これまでの直接訪問やテレアポといった手法から、インターネットやスマホの普及、コロナ禍で急速に進展した非対面活動の拡大によって、ウエブサイトやSNSなどを使って情報を発信し…

日本精機 AM技術でギガに挑む【特集:ギガキャストの現在地】

ソディックと共同開発、大型3Dプリンタを導入 AM技術を武器にギガキャスト向け金型で需要開拓を狙うのが、ダイカスト金型メーカーの日本精機だ。まずは、高い熱交換機能が求められるギガ向け金型で、AMで造形した入れ子部品の採用…

田岡秀樹氏

【プレス型特集】
本田技研工業 田岡 秀樹氏に聞く
プレス型メーカーの目指すべき方向性

自分の強み生かす道を 本田技研工業 完成車新機種推進部 主任技師 田岡 秀樹氏に聞く 高級車か、低価格車か、2極化も 金型なくして新車開発ならず 自動運転、ライドシェア、電気自動車(EV)の進化―。自動車業界では急激な変…

金型に押し寄せるCASE

 100年に一度の変革期と言われる自動車業界。それを語るときに欠かせないキーワードが「CASE」だ。「C=コネクテッド(つながる)」、「A=オートノマス(自動運転)」、「S=シェア(共有)」、「E=エレクトリック(電動化…

トピックス

関連サイト