金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…
約40億円投じ新工場設立 超ハイテン技術を核に事業展開[プレス加工技術最前線]
自動車の電動化や軽量化ニーズの高まり、短納期化、熟練作業者の減少など、プレス加工を取り巻く環境は大きく変化している。プレス加工メーカーへの要求も高度化しており、これまで以上に技術革新を進め、変化するニーズに対応することが必要になっている。メーカー各社は、電動化部品や超ハイテン材への対応、プレス加工全体の解析などに挑む。また、これらの加工を支えるプレス加工機も進化を続けている。本特集では、こうしたプレス加工技術の最新動向に迫る。
J-MAX ー自動車電動化関連部品も強化ー

J—MAX(7月1日、丸順から社名変更)は、超ハイテン材加工の高い技術を中核に積極展開している。
金型設計から金型製作、プレス部品量産、溶接まで一気通貫で対応できることから「超ハイテン部品ならJ—MAX」という評価を得ている。特に、複雑・難しい形状ならなおさら。同社では1480MPa材での部品成形まで可能で、そのノウハウと量産力で先んじる。強みの一つで戦略事業と位置づける金型技術と自動車軽量化の動きがその流れを作った。齊藤浩社長は「780MPa~1200MPaの超ハイテン部品が骨格部品全体の約60%を占める。金型および量産加工の技術を武器に更に受注先を拡げたい」としている。
ホンダ技研向けが主流だった同社だが、日産自動車を主要顧客とする東プレとの協業により、三菱自動車工業水島製作所で生産されている軽自動車の骨格部品も受注。今年3月からは3車種目の部品生産がスタートした。そこで、約40億円を投じて岡山新工場の建設に踏み切った。プレス加工をメインとする工場で、トランスファープレス機と順送プレス機を各1台導入する。国内で大型トランスファープレス機3台体制となり、生産能力が約30%増強される。西日本地区での超ハイテン部品、さらには電動化部品、異業種部品の受注拡大に繋げ、2027年度には国内の自動車部品売上を21年比1・5倍に伸ばしたい考え。

岡山工場は、超ハイテン化の流れの中で、最大効率重視のベンチマーク工場とする計画だ。工場内で最短移動距離を目指し、各ラインの製品出口を揃え、生産効率の向上を図るほか、太陽光発電設備の導入や、AGVによる材料ピックアップから機械への自動供給までの無人化、ジェンダーレス(身障者対応など)を想定している。自動車軽量化は、超ハイテン材だけではない。中国工場で生産を始めたアルミプレスなど非鉄金属への対応も可能な設備仕様とする。

自動車の電動化への対応も重点課題だ。既に手掛けているバッテリーケース・カバー、バッテリーモジュール部品、IPU部品などのバッテリー関連だけでなく、モーター関連部品の研究開発も進めている。
金型技術の向上にも抜かりはない。一例がシミュレーション技術・構造解析を駆使した工程短縮。短納期対応を可能にしている。
今年は、岡山工場関連の投資のほか、人荷用エレベーター、タイ・マルジュンではトライプレス、広州丸順ではメッキライン等の能力拡大・品質向上・効率化投資を行う。武漢丸順では、アルミ対応の溶接能力を拡大する。

足元では、日本において日産自動車のデイズ・ルークス・軽EVサクラや、トヨタ自動車のレクサスEX・カローラクロス・bZ4Xのハイテン材部品の量産を開始。プライムプラネットエナジー&ソリューションズからの車載電池用セルの受注も。タイでは、ダイセル子会社からエアバックのインフレーターを受注、中国ではCATLから2車種目のバッテリーカバーを継続受注し、吉利汽車(ロータス)から2車種目となるアルミ骨格部品も受注。順調に骨格部品や電動化部品を受注しており、引き続き超ハイテン技術を活かした自動車部品、バッテリー関連部品の受注を増やしていく考えだ。
金型新聞 2022年8月10日
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