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多様化するニーズに応えるプレス加工機5選[プレス加工技術最前線]

自動車の電動化に伴い、モータやバッテリーといった電動化部品の加工需要が増加している。また、プレス加工時の状況をリアルタイムに把握して、生産性の向上や品質の安定化につなげる技術を開発する動きも進む。プレス加工機メーカー各社は、電動化部品の加工に対応した機種や、センシングが可能な機種、金型構造の簡素化が可能な装置を搭載した機種などを開発し、多様化するニーズに対応している。ここでは、プレス加工の進化を支える最新鋭のプレス加工機を紹介する。

PART1:アイダエンジニアリング「高剛性でワイドエリア」
PART2:アマダプレスシステム「EV部品向け自動化システム」
PART3:エイチアンドエフ「ワークの角度を調整」
PART4:コマツ産機「高仕事量で高汎用性」
PART5:放電精密加工研究所「様々な加工現象を把握」

PART1

アイダエンジニアリング「高剛性でワイドエリア」

2ポイントサーボプレス「DSF-N2-4000A」

近年増加しているEV車用部品など、形状の複雑化に伴って高まっていたワイドエリア化への要望に応えて開発したサーボプレス。

低回転・高トルク型サーボモータを用いたダイレクトドライブ機構、動的精度を高める新型フレーム、変形量を抑えたスライドとボルスタなど、高精度で高剛性な仕様とした。一体フレームの汎用サーボプレスでは業界最大級の350㎜というロングストローク、従来機比123%のスライドエリアを持つほか、大型の操作パネルで視認性、操作性を大きく向上させた。

業界で初めて(同社調べ)AIを採用した事も大きな特長。温度や電流値、電圧値などのデータをAIで学習させ、プレス機の状態を自動診断することで、トラブルを未然に察知する予兆検出機能を搭載した。

PART2

アマダプレスシステム「EV部品向け自動化システム」

順送プレス加工自動化システム 

非対称品が多いEVの車載電装部品向けに開発した順送プレス加工自動化システム。デジタル電動サーボプレス「SDEW—1613iⅢ(1600kN)」は、高剛性GORIKIフレーム構造で初採用のスライド8面ギブガイドとダブルクランク機構により、高い耐偏心荷重特性を持ち、高精度加工を可能にした。

高速NCロールフィーダライン「ALFAS—03ARZ」は、環境に配慮したサーボリリース機構を採用。エア消費を削減し、材料へのキズや騒音を低減し、ロールフィーダの耐久性を向上させた。銅、電磁鋼板、アルミなどの材料に配慮し、ロール清掃しやすい構造も採用。

これらを融合したシステムは、材料供給の高速、高精度送りと独自の高速振り子モーションで、安定した高生産性・高品質加工を実現する。

PART3

エイチアンドエフ「ワークの角度を調整」

トランスファプレスライン

エイチアンドエフはこのほど、3次元トランスファプレス機のオプションとして、「チルト装置」と「シフト装置」を開発した。

チルト装置はワークを任意の角度に傾けることができ、金型に複雑な仕掛けが不要になる。シフト装置はワークを送るピッチを変えることができる。

この2つの装置は軽量で、既存のプレス機に後付けで容易に脱着できる。チルトやシフトの動作が必要な金型でプレス加工する際、取り付けて使用できる。

サーボプレスのフリーモーション機能との組み合わせにより、複雑形状のパネルを効率良く搬送できる。

これらにより、金型構造の簡素化や金型設計の自由度向上、プレス加工の生産性向上につなげることができる。

PART4

コマツ産機「高仕事量で高汎用性」

サーボプレス標準機「H1F-2シリーズ」

ロングストロークと、高仕事量で高い汎用性を備えたサーボプレスの標準機。振り子モーションとクラストップレベルのロングストロークにより成形性と生産性向上を両立。金型の寿命向上にもつながるほか、1台で幅広い製品をハイスピードで生産できる。

下死点、荷重の変化にあわせてダイハイトを補正する下死点自動補正機能を搭載し、不良発生防止や金型の調整時間短縮につながる。また、ピーク電流抑制コンデンサにより電源容量をメカプレス同等にまで低減し、消費電力低減により、カーボンニュートラルにも貢献する。

「Komtrax(コムトラックス)」に、過負荷モニター、荷重トレンド、自動タイムスタディなどの新たなIoTメニュー(オプション)を追加し、これまで以上にサーボのメリットを最大限に生かすことができる。

PART5

放電精密加工研究所「様々な加工現象を把握」

直動式デジタルサーボプレス「ZENFormer」

「ZENFormer」は完全デジタル駆動により、工作機械並の高精度を実現するサーボプレス。スライドの4隅の位置情報と負荷情報をリアルタイムに把握することで加工現象を数値化。1サイクル中のデータや連続運転のプレス動作、様々な加工現象を把握することができる。

さらに金型内でセンシングを行い、プレスデータを一元監視することで、成形加工時の微細な変化と成形時の挙動との関連性をリアルタイムに掴むことが可能。せん断加工のメカニズムを可視化することができる。

また、可視化したデータの中から品質関連のデータに許容値を設け、許容内外の判断とプレス機の下死点を自動補正する(知能化)ことで、量産時における安定した品質維持と高い生産性を実現する。

金型新聞 2022年8月10日

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