日本の技術力は世界一魅力のある金型を創り連携し海外に売り込もう 国内の需要が縮小し、海外との競争はますます厳しくなり、自動車の電動化が産業構造をも変えかねない状況の中、日本の金型に未来はあるのだろうか。このような悲観論…
高精度、省人化ニーズが高まる国内市場で注力すること 田代勝氏(三菱電機 産業メカトロニクス事業部長)【この人に聞く】
三菱電機は50年以上に渡って、高精度、高性能な放電加工機を開発し、付加価値の高い金型づくりに貢献してきた。近年では省人化ニーズへの対応に注力する他、金属3Dプリンタを開発するなど技術領域を広げている。同社は今後、金型業界にどんな技術革新をもたらすのか。今年4月、産業メカトロニクス事業部長に就任した田代勝氏に今後の展開などを聞いた。
ライフサイクル全体で提案
たしろ・まさる
1966年生まれ、愛知県出身。89年名古屋大学卒業後、三菱電機入社。主にNC装置の営業を担当し、2002年から約4年間台湾に駐在、NC装置の拡販と液晶関連の市場開拓に尽力した。14年NC事業推進部長、21年産業メカトロニクス事業部副事業部長、22年4月同事業部長に就任し、現在に至る。
国内の金型市場をどう捉えているか。
国内は高精度化、省人化ニーズが高まっていると感じている。成長分野のEV関連部品ではより高い加工精度が求められているし、人手不足が深刻化する中では工程間をどうつなぐかが、大きな課題となっている。
何に注力するか。
一つは高精度対応だ。ここ数年、油加工液仕様のワイヤ放電加工機「MXシリーズ」の小~中型機種を揃えた他、ベッドやガイドなど機械構造の強化に取り組んでいる。また、加工条件を自動で設定できるAI技術「Maisart(マイサート)」の適用を広げている。これまで形彫放電加工機だけだったが、ワイヤ放電加工機にも搭載した。より簡単に高精度な加工ができる。
省人化ニーズへの対応は。
AMR(自律走行搬送ロボット)を活用した金型生産の自動化をサポートするシステムを開発している。スケジューラを使って、工程間のワーク搬送などを自動で運用できるシステムを目指しており、今年の工作機械見本市「JIMTOF2022」に出品予定だ。
金型業界でも環境対応のニーズが強まっている。
これから取り組むべき課題と捉えている。すでに、リモートサービス「iQ Care Remote4U(アイキューケアリモートフォーユー)」で稼働状況を把握し、最適化を図ることで、消費電力の削減につなげる提案などを行っている。今後、ロスの少ない加工や機械づくりを実現するための技術開発に挑んでいく。
今年3月には金属3Dプリンタを発売した。
当社の金属3Dプリンタ「AZ600」は溶接用ワイヤをレーザーで溶融して造形する方式を採用している。金属粉末を用いた造形方式に比べ、空孔ができにくく、加工時間が短いのが特長だ。金型では補修や冷却用水管部品の造形、その他では発電用タービンブレードの補修などの用途を考えている。ただ、付加製造(AM)は開発途上の技術。今年設立した「新事業推進グループ」を中心にさらなる開発を進めていく。
今後の事業展開は。
機械単体だけでなく、周辺技術やサービスを含めた提案を行っていきたいと考えている。導入から修理・メンテナンス、更新までのライフサイクルの中で、当社の機械を使って良かったと思ってもらえるものを今後も提供していきたい。
金型新聞 2022年10月10日
関連記事
「コロナ禍で航空機など需要が落ち込み、試作車市場も変化している」と語ったのは鳥羽工産の傍島聖雄社長。同社は金型製作(プレスや射出成形)から量産(少ロット)まで一貫生産体制を強みに、これまで自動車の試作型や試作車の製作、航…
親子2代で旭日単光章を受けた 昨年11月、秋の叙勲で「旭日単光章」を受賞した。創業以来72年連続で黒字経営を続けたこと、2007年に経済産業省から「元気なモノ作り中小企業300社」を受けたことなどが認められた。「個人で…
100年に一度の変革期 どうする金型づくり エンジン、トランスミッション、カムシャフト、最近では電池やモータなど、自動車を動かすほぼ全ての内蔵部品の金型を手掛けるトヨタ自動車のパワートレーン工機部。豊田章男社長が「自動…
令和元年に新社長に就任したオークマ・家城淳社長。市場が不透明化している中、「機電情知一体」「日本で作って世界で勝つ」を掲げるオークマの今後について家城社長の思いを聞いた。 家城淳社長愛知県出身。85年大隈鉄工所(現オ…