ダイカストやプラスチック金型で金属3Dプリンタが採用されるケースが出始めてきた。造形条件の確立、レーザーの進化による高速造形など作業性の改善が背景にある。マルエージング鋼やSKD61相当材など金型に適した粉末材料が登場し…
設計自由度高めた3D造形技術 大陽日酸【金型テクノラボ】
金属3Dプリンタが試作造形や最終製品にとどまらず、金型づくりでの採用も進んでいる。活用が広がる一方、多くのプリンタで課題とされるのが、オーバーハング部を支えるサポート部への対応と、熱効率を最大化するための大口径化だ。本稿では米国のスタートアップVELD3D社のサポートレス化と大口径化への3D造形技術を紹介する。
はじめに
金属3Dプリンタには様々な方式がある。レーザー・パウダーベッド・フュージョン(LPBF)方式、ダイレクト・エナジー・デポジション(DED)方式、ワイヤーアーク(WAAM)方式など、造形精度や速度、サイズなど用途に合わせて採用が広がっている。
プラスチック金型やダイカスト金型づくりで普及しているのが、敷き詰めた金属粉末にレーザーを照射して造形するLPBF方式。採用に向けて大きな課題の一つに、サポートなしでの低角度での造形技術と、熱効率を最大化するための大口径化がある。
米国スタートアップのVELO3D社のプリンタとは
サポートは後工程で除去することが難しい事例が多く、設計の自由度を高めるためにサポートを減らしたり、サポートを除去しやすい設計にしたりすることがある。一方で、45度以下の低角度造形や30mm以上の大口径化では、サポート付加は不可欠で、自由設計の実現が非常に難しいと指摘されてきた。
本稿で紹介する米国、VELO3D社の金属3Dプリンタ「Sapphire」はサポートレス造形、大口径化を可能にする。さらに、造形サイズを拡大できるハードウエアだけでなく、独自の設計・品質管理ソフトウエアでサポートを極力減らすことができる。より短時間で造形ができる新たな金属3Dプリンタの金型業界への適用を紹介する。
設計ソフト「Flow」の特長
VELO3Dの設計ソフトウエア「Flow」は、従来の金属3Dでの設計とは異なり、部品の形状に応じて、自動的にパラメータの割当てを行う。複雑な部品に対する固有のパラメータの設定が必要なく、造形データ(STEPなど)のネイティブCADの形状と、ユーザーが指定する指示に基づき、適切な造形レシピを自動的に割り当てる。
造形前に複雑なパラメータの割当てが不要なので、最終製品の設計に集中できる。さらに、様々な造形物の形状ならびに特徴に応じて、サブプロセスを適用させ、最適なプロセスを選択することができる。
これにより、造形開始までの設計時間を短縮できるだけでなく、標準化させたフレームワークを使用し、容易に設計をすることができる。
サポートレス、大口径化、大型化に対応
VELO3D社の金属3Dプリンタは、サポートレスで、45度以下の角度を持つ内部チャネルやオーバーハング構造、大口径100mmを造形できる機能を有する。さらに生産効率向上の観点からの直径600mm×1000mmの大型化にも対応する。
品質管理ソフト「Assure」
金属3Dプリンタで造形した多くのワークは、品質規格を満たすため、部品造形中の造形データを記録する必要がある。VELO3D社の品質管理ソフトウエア「Assure」では、造形中に膨大な情報を自動的に記録する。
収集されたデータはAssure内で取りまとめて、造形1層毎ごとのデータなど、品質管理上重要な情報を含むレポートとして自動的に作成する。整理収集された生データと高さなどを示す画像は、次回以降の造形のため、部品の重要な部分の評価にも貢献する。
デジタル管理も容易に
FlowやAssureの両ソフトウエアと、装置内に設定されている簡単なワンクリックプキャリブレーションを組み合わせることで、設計されたプリントファイルを使用すると、同じ品質で造形をすることや在庫管理機能を持つデジタル化も実現できる。
最後に
これまで述べてきたVELO3D社の先進的なAMの機能によって、設計自由度を向上させることができるほか、サポートレス化や大口径化につながる。このため、VELO3D社の各種技術は、ダイカスト金型を始めとした、大型化する金型づくりに貢献できる技術だと確信している。
大陽日酸
- 執筆者:イノベーション営業部 AM営業課 中田 竜氏
- 住所:東京港区新橋芝5–30–9 藤ビル3階
- TEL:03-5788-8838
金型新聞 2022年12月10日
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