金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

SEPTEMBER

08

新聞購読のお申込み

金型にも「情報管理」の波

「技術等情報の管理認証制度」設立

 IoT化やグローバル化などによって、情報流出のリスクが高まる昨今、製造業には技術などの情報の適切な管理が求められている。金型業界も例外ではなく、「顧客情報がしっかり管理、保護できているかが企業の評価につながる」(打田製作所の打田尚道社長)。情報管理体制の構築は不可欠な要素になりつつある。日本金型工業会では、政府が昨年9月に設立した「技術等情報の管理に係る認証制度」の認証機関として認証業務を行うための動きを進めている。ここでは、同制度の特徴や利点などのほか、すでに情報管理への取り組みを進めている打田製作所(東京都江東区)の事例を紹介する。

国の認証機関チェック

 「技術等情報の管理に係る認証制度」は、企業が持つ技術などの情報を国が示した認証基準に沿って管理できているかを認証する制度。「技術等情報」には図面や顧客情報、製造工程情報、金型などが含まれている。認証業務は国が認定した機関によって行われる。

 「幅広い企業が活用できるように制度には柔軟性を持たせた」(経済産業省製造産業局の府川秀樹氏)。認証基準は管理者の専任や教育、情報の取り扱い、セキュリティ、保管場所など200~300項目に及ぶが、データや紙、製品など情報の種類や業界などによって項目を選択できる。

 認証は2段階から選択可能。一つは自己宣言型。チェックシートに基づいて自己チェックを行い、監査の知見を有する者などにより適切に監査が行われていると認められれば認証を受けることができる。もう一つは認証機関が現地で調査し、基準を満せば認証を受けることができるというもの。「段階的に進められるため、自分たちの身の丈にあったところから始められる」(府川氏)。

 企業は同制度を活用することで、情報管理の手法や体制を確立しやすくなる。加えて、顧客への信頼感の獲得や、「守るべき技術、情報がある企業」という証明にもつながる。今後、認証企業のホームページへの掲載やロゴマークの策定などを検討しており、認証企業が同制度の効果をより享受できる施策を展開していく予定だ。

 制度活用の動き

金型業界では、いち早く活用に向けて動き始めている。日本金型工業会は6月7日の通常総会で、同制度の認証機関として認証業務を実施することを議案にあげる。すでにワーキンググループを組織し、前述の200~300項目の中から業界に合った管理項目を定めて準備を進めている。ワーキンググループのあるメンバーは、「この制度をきっかけに金型業界でも情報管理の意識が高まるだろう」。

金型しんぶん 2019年6月7日

関連記事

【鳥瞰蟻瞰】牧野フライス製作所プロジェクト営業部スペシャリスト・山本英彦氏「日本メーカーの力が持続可能な社会の実現には必要」

大事なのは、自信を持つこと日本メーカーの力が持続可能な社会の実現には必要 1983年に牧野フライス製作所に入社してから、海外畑を歩んできました。キャリア当初は、アメリカ向け立形マシニングセンタや放電加工機の営業支援を担当…

情報収集や課題解決の場に 砥粒加工学会 会長インタビュー

今年3月、研削や研磨など砥粒加工技術の振興、発展を目的とした活動を行う砥粒加工学会の会長に就任した清水大介氏(牧野フライス精機社長)。金型メーカーに対して、「生産現場に直結した技術の発信を行う砥粒加工学会を情報収集や、加…

【この人に聞く】ニチダイ・伊藤直紀社長「技術営業の強化に力 」

今年4月、冷間鍛造金型メーカーのニチダイは伊藤直紀氏が新社長に就任し、新たな体制で臨む。昨年、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの影響で金型受注が低迷したが、足元の景気は回復傾向にあり、事業の成長に向けて動き始めた。そこで…

下野精密 〜我ら金型応援隊〜

超硬加工なら任せて  「大事なのはQCDだ。品質が良く、価格は高すぎず、納期も短い。バランスが大事」と話すのは下野精密の下野武志社長。創業から超硬やセラミックスにこだわり、半導体や自動車関連の金型・部品を製作。精度は交差…

【新春特別インタビュー⑥】岐阜大学副学長・王 志剛氏「金型は最適な教育ツール」

モノの本質を学ぶ場 金型は最適な教育ツール 企業との接点が重要 〜次世代人材の教育〜  1963年生まれ、中国・黒竜江省出身。工学部・機械工学科教授、研究テーマ:プロセス・トライボロジー、型工学、冷間鍛造・板鍛造。92年…

関連サイト