金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

16

新聞購読のお申込み

【インタビュー】日本金型工業会会長(小出製作所社長)・小出悟氏「日本の金型の強みは細やかさと対応力」

天性の細やかさ
数値で語る力が必要

 1955年生まれ、静岡県出身。82年小出製作所入社、96年社長。82年に日本金型工業会中部支部の若手部会「イーグル会」入会。中部支部長や総務財務委員長を歴任。2017年に日本金型工業会会長就任。

 経済産業省の工業統計によると、2018年の日本の金型生産額は1兆4752億円。生産量こそ中国に抜かれて久しいが、新素材の登場や部品の複合化、微細化が進み、依然として日本の高度な金型技術へのニーズは強い。しかし、何もせずに今の地位は維持できない。今後も日本の金型が世界で求め続けられるには何が必要なのか。まず現在の立ち位置を知る必要がある。日本金型工業会の小出悟会長に日本の金型業界の強みと弱み、年内に公表する「新金型産業ビジョン」の方向性を聞いた。

日本の金型の強みは。

 型種や企業で異なるが、全体的に言えるのは仕上げや組付け能力だろう。ただ、工作機械の進化や測定技術の高度化などによって、機械で追い込める部分が増え、強みの領域は少なくなっている。当社のダイカスト型では以前は合わせに3日は掛かっていたが、今は(部品精度の向上などで)半日強で出来てしまう。それでも、仕上げや組付けは金型には不可欠だし、細やかな作業は日本人に向いていると思う。

他には。

 臨機応変な対応力だ。日本企業は総じて、顧客に無理難題をお願いされても、何とかやってしまおうとする力がある。日本人は顧客の要求に応えたいという気質が強いので、今後も対応力は強みとして残ると思う。

一方で弱みは。

 強みと表裏かもしれないが、顧客の要求に対し、収益を犠牲にして追求してしまう部分がある。対応力は強みだが、経営力というか数字に弱い。そこは改善すべきだ。

 数字は収益だけではない。暗黙知を形式知化し、数値で伝える力もそうだ。これまで日本はカンコツに頼り、経験を数値化してこなかった。熟練技能者が減っていく中で、新人技術者を数年で10年選手にしなければいけない時代になった。それにはIoT技術を活用し、暗黙知を形式知化し、数値で伝えることが必要だ。

形式知化は標準化につながり、世界中どこでも金型が作れる懸念がある。

 それは否定できない。しかし、新しい素材や技術が登場すれば、金型は変わるので、学ぶべきことや、必要なノウハウも変わる。むしろこれまでの経験を数値化し、それを基に研究すれば、新たな技術や知見が得られるかもしれない。我々はもっと前に進むべきだ。

6年ぶりに金型産業ビジョン改定します。

 大きな方向性としては政府が発表した中小企業施策で「中堅企業への成長を目指そう」と打ち出したように、金型業界もそうあるべきだと思う。それにはまず、単に金型を生産する工場から、顧客に価値を提供する金型企業に変わるべきだ。

そのためには。

 詳細はビジョンに譲るが、一つの戦術としてM&Aや連携が挙げられる。同業種で規模を拡大するだけでなく、他の型種や異業種と連携があってもいい。顧客から資本参加して頂くことがあってもいい。それぐらい劇的に変化し、顧客にとって必要な存在にならなくてはいけない。残念ながら我々はリーマンショックで変わり切れなかった。コロナ禍は我々に厳しい状況をもたらしているが、業界を変える最後の契機かもしれない。

金型新聞 2020年9月10日

関連記事

AMや真空炉など積極投資 北田博治氏(アッサブジャパン社長)【この人に聞く】

ウッデホルムやボーラーブランドで知られる特殊鋼メーカーのアッサブジャパン。昨年には、日本進出70周年を迎え、金属3Dプリンタ(AM)事業の強化や、真空炉を設備投資するなど積極的に事業展開を進めている。世界中で販売するグロ…

【金型の底力】キヤノンモールド世界に誇れる「見通せる工場」

世界一の金型メーカーへ 新本社工場が本格稼働 キヤノンモールドは移転を進めていた「本社・友部事業所」を7月から本格稼働させた。市内に分散していた工場を1か所に集約。自動化や人・モノの移動を減らすなどして、従来比で1.5倍…

顧客の成功考え、最適な提案 小林貞人氏(GFマシニングソリューションズ社長)【この人に聞く】

GFマシニングソリューションズ(横浜市神奈川区、045・450・1625)は今年8月、AM事業部長の小林貞人氏が社長に就任した。放電加工機やマシニングセンタ(MC)、自動化システムなどを手掛ける同社は今後、日本の金型業界…

【この人に聞く】NTTデータエンジニアリングシステムズ・東 和久社長「価値創造のパートナーに」

NTTデータエンジニアリングシステムズ(東京都大田区)は7月、沖縄県うるま市に、5軸加工や自動化を支援する「Mold Future Space‐OKINAWA(MFS)」を開設した。まずは5軸加工機の販売から加工ノウハウ…

【この人に聞く】ニチダイ・伊藤直紀社長「技術営業の強化に力 」

今年4月、冷間鍛造金型メーカーのニチダイは伊藤直紀氏が新社長に就任し、新たな体制で臨む。昨年、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの影響で金型受注が低迷したが、足元の景気は回復傾向にあり、事業の成長に向けて動き始めた。そこで…

トピックス

関連サイト