金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

進化への岐路
2020年 日本の金型

 2020年の金型業界はコロナ禍に翻弄された年になった。自動車産業を始めとしたユーザーの生産減や開発遅延などにより、金型需要は減少し、景況は悪化した。一方で、これまでと同じような活動ができないことで、ビデオ会議システムや様々なデジタルツールの活用が広がる契機にもなった。こうした状況を踏まえ、日本金型工業会では6年ぶりに「令和時代の新ビジョン」を作成。「工場から企業へ」の変革を促すなど、新たな経営スタイルや金型づくりが急務だと指摘している。

新たな価値創造の時代へ

 3月以降のコロナウイルスの本格的な感染拡大は金型業界にも大きな影響をもたらした。4月の緊急事態宣言の発令により、自動車生産が大幅に減少、一部では納期延期なども発生した。こうした影響で金型需要も減少した。ただ、型種やサイズで生産活動にはバラつきがあったようだ。

 ある大型のダイカスト金型メーカーでは「春先まで受注は好調に推移した。納期が長いことから、8月までは工場の稼働率は高かった」。一方で「秋以降の受注は大きく減っている」と年明け以降の不安を口にする。

 一方、自動車生産の影響を受けやすい冷間鍛造型では5月以降に需要が急減。ある鍛造型メーカーは「5、6月は対前年比で5割以下に減少した」。逆に自動車生産が戻りつつある秋以降は持ち直しているという。

 経済産業省の1‐9月期の機械統計によると、8月の金型生産額は対前年同期比26%減の238億円と最も落ち込んだ。しかし、9月は同7.7%減の305億円となっており、回復を期待する声は多い。

迫るデジタル活用の波

 コロナ禍は景況悪化をもたらした一方、ビデオ会議やデジタルツールを活用した新たな営業活動や金型づくりが広がる契機にもなった。

 その一つがビデオ会議による営業や打ち合わせ。あるプラスチック型メーカーでは「直接会うより簡単にコミュニケーションが取れるので顧客との距離が縮まった」。図面共有機能を使うことで「今までより情報共有がスムーズになった」とメリットを話す。

 生産現場でも、デジタルツールを使う動きが広がっている。金型にセンサを組みこんで、金型の稼働を把握するIoT金型の開発や、職人の動画を撮影した技能伝承、デジタル技術を活用した自動化など、新たな金型づくりが広がっている。

 こうした変革期を見据え、日本金型工業会では、6年ぶりに「令和時代の金型産業ビジョン」を作成した。その中で「金型工場から顧客に価値を提供する金型企業への変化が必要だ」と指摘。顧客から言われたものを作るだけの単なる工場から、品質、コスト、納期だけでなく、顧客の課題を解決できる価値を提供すべきだとした。

 同工業会の小出悟会長はビジョン作成に当たり、変革の必要性と危機感を強調する。「リーマンショックで我々は変われなかった。コロナ禍は厳しい状況をもたらしているが、業界が変わる最後の契機かもしれない」。

金型新聞 2020年12月10日

関連記事

前澤金型と福井県工業技術センターは金属AMを活用してどんな金型を開発したのか

金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…

JIMTOF総集編 PART3:自動化
人口減少時代に備える

金型業界含め国内製造業は慢性的な人手不足を抱え、加工や測定工程で自動化を図ることが大きな課題となっている。そのため、これまで複数の機械で加工していた加工工程を1台の機械に集約し、段取り工程の削減や短縮、さらに、工程間の搬…

平岡工業 精密部品加工・調達代行【特集:金型メーカーのコト売り戦略】

調達の効率化サポート 自動車のウェザーストリップのゴム金型や切断折曲機などを手掛ける平岡工業のもう一つの事業が、精密部品加工・調達代行サービスだ。金型や切断折曲機で培った技術や協力企業とのネットワークを活かし様々なニーズ…

【特集】2030年の自動車と、金型と

PART1:電動化というチャンス、新たな需要が生まれるPART2:この10年を振り返るPART3:新潮流に挑むチャレンジャーたちPART4:記者の目 PART1 電動化というチャンス、新たな需要が生まれる  電子部品、モ…

新金型産業ビジョン<br>6つのテーマから金型業界の未来を考える

新金型産業ビジョン
6つのテーマから金型業界の未来を考える

逆境乗り越え、攻め 需要の国内回帰広がる  厳しい経営環境が続いてきた日本の金型業界。 しかし、 ここに来て円安によるユーザーの国内回帰や、一部で需給バランスが改善するなど、好転の兆しも見え始めた。 過酷な時期を乗り越え…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト