金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

23

新聞購読のお申込み

【新春特別インタビュー⑦】大貫工業所社長・大貫 啓人氏「売れるものをつくり、境地まで突き詰めることが大事」

売れるものをつくる 物価の高い国で勝負 境地まで突き詰めることが大事 〜海外展開〜

 1964年生まれ、茨城県出身。大学卒業後、87年大貫工業所に入社。営業で新規得意先を次々と開拓する一方で、得意先とのやり取りを通じて金型技術を身に付け、96年社長に就任。もともとプレス金型の専業メーカーだったが、プレス加工にも取り組み始めた。「技術研究型企業」を目指し、他社では対応できない複雑形状や難加工技術に挑戦している。

 販路、人材、商習慣への対応など、日本の金型メーカーが海外展開する上での課題はいくつもありますが、最も重要なのは、「売れるものを作る」もしくは「売れるものを探す」ことだと思います。当たり前の話ですが、海外展開しても売れるものが無ければ、意味が無いですからね。

 当社は、2017年にスイスの光学機器メーカーから受注を獲得したのを機に、欧州を中心に海外展開を進めています。徐々に受注を増やし、現在の海外売上は、月数百万円まで拡大しました。足元でもEV関連の部品や音響関連機器などの引き合いがあり、開発が進んでいます。

 最初のきっかけは、10年ほど前に出展したドイツ・ミュンヘンの展示会です。ブースには、強みである自動車向けのコネクタ部品や深絞り部品などの精密プレス加工品を展示しました。すると、多くの人がブースに足を止め、「これをプレス加工できないか」と図面を見せながら聞いてきたのです。当社の技術が売れると感じた瞬間でした。

 当社は、もともと「技術開発型企業」を目指して、精密プレス金型の設計・製作、プレス加工を手掛けてきました。これまでにも切削からプレスへの工法置換を可能にする独自技術を開発し、大幅なコスト削減やリードタイム短縮を実現しました。高性能なプレス加工機や金型加工機はもちろん、測定機や検査機器など試験設備も充実させ、クラックや組織破壊のメカニズムなどをタイムリーに解析することができる体制を整えています。

 欧州に進出して特に感じるのは、機械加工の技術は圧倒的ですが、プレス加工はそうでもないということ。当社の研究開発力や技術力は、欧州でも通用するし、勝ち目があると感じています。

 ただ、これは自分たちで海外に出て、実際の反応を見ないと分からないことです。その一つとして海外の展示会に出展するというのは有効な手段です。それも共同ではなく、単独で。その方が市場の反応が掴めるし、何が良くて何がダメなのかがよく分かります。

 もう一つ、当社が海外展開で大事にしているのが、日本よりも物価の高い国や地域で勝負するということです。欧州では仕事の単価が日本の2~5倍。最初に欧州を視察したときも驚きました。従業員2人の加工メーカーが、最新鋭のマシニングセンタを5台も設備していたのですから。そうした投資が可能なのは、収益性が良いからに他なりません。今後は欧州のさらなる拡大に加え、北米展開も検討しています。

 海外展開も技術開発も成功するまでにそれなりの時間がかかります。当社も海外で初めて受注するまでに6~7年かかりました。ここで大事なのは、失敗してもやり続けることです。境地まで突き詰めて他ではできないものを身に付けないと強みにはなりません。逆にそれができれば、世界でも戦えるはずです。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

アルファミラージュ 低価格内視鏡を金型分野に拡販【金型応援隊】

比重計の製作やスチームクリーナーなど各種機器・器材の販売を手掛けるアルファーミラージュ(大阪市都島区、06-6924-2631)はこのたび低価格工業用内視鏡「MRA‐28W」と「MRT‐40TH」の販売を開始した。 「M…

国内事業を再整備 森久保哲司氏(パンチ工業 社長)【この人に聞く】

パンチ工業(東京都品川区、03・6893・8007)は今年、2025年3月期までの中期経営計画を発表し、最重点施策として「国内事業の再整備」を掲げた。販売拠点の統廃合や、連結子会社の解散などによる経営合理化を図り、特注品…

新日本工機・中西 章社長「ものづくり力向上を支援」

「30年間お客様とものづくりを改善し続けられる存在でありたい」—。そう話すのは一昨年に新日本工機の社長に就任した中西章氏。ライフサイクルの長い大型機械が強みなだけに、「長期間にわたって、顧客のものづくりをサポートするのは…

―スペシャリスト―リバン・イシカワ<br>金型の経験生かし心配り

―スペシャリスト―リバン・イシカワ
金型の経験生かし心配り

精密金型部品 キャビティやコア、スライドコアなどの金型部品を専門に手掛ける会社がある。富山県南砺市のリバン・イシカワ。金型づくりで培った経験を生かし、独自の工夫や細やかな心配りで自動車関連メーカーの金型部門や金型メーカー…

人が集まる場づくりを<br>金型工業会東部支部 鈴木 教義支部長(鈴木 社長)

人が集まる場づくりを
金型工業会東部支部 鈴木 教義支部長(鈴木 社長)

この人に聞く 金型の社会的価値訴え  「日本の金型業界にとって今は変化の時期だが、チャンスでもある」と話すのは、日本金型工業会の東部支部長に就いた鈴木の鈴木教義社長。好機なのは、金型の高度化が進み日本のメーカーしかできな…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト