生産性向上やペーパーレス化 モノづくりのDX化が叫ばれて早数年、様々なデジタルサービスが開発されてきた。その中で、ひと際目を引いたのがプレス金型及びプレス加工を手掛ける久野金属工業(愛知県常滑市)とシステム開発のマイクロ…
金型メーカーの新分野展開が加速する
事業再構築補助金を活用
金型メーカーの新分野展開、業態転換が加速している。コロナ禍や、自動車の電動化などによって事業環境が大きく変化する金型業界。多くの金型メーカーが2021年からスタートした「事業再構築補助金」を活用し、新しい設備やシステムを導入することによって、成長分野への事業領域拡大、EV化への対応、独自商品の開発などに取り組んでいる
EV時代の新たな柱
20年度第3次補正予算で1兆1485億円が計上された「事業再構築補助金」は、コロナ禍による事業環境の変化に対応する中小企業を支援するために設けられた。第4回までの公募で、延べ8万件を超える申請があり、約3万5000件が採択された。現在、第5回の公募が始まっている。
採択された案件のうち、製造業が占める割合は2~3割ほどで金型メーカーの件数も少なくない。特に目立つのは半導体関連や医療関連など成長分野への事業領域の拡大だ。プレス用金型メーカーの日進精機(東京都大田区)は強みの深絞り技術を活用し、現在の主要顧客である自動車市場から、半導体市場への参入を目指す。サーボプレスを導入し、肉厚精密加工を可能にするという。
プラスチック用金型メーカーのシミズトライム(静岡市清水区)は金型加工技術を生かし、医療機器部品の試作に挑む。特に高い加工精度と表面粗さが要求される薄肉注射器部品で参入を図るとしている。また、半導体やスマホ向けの精密プレス金型を手掛ける藤井精工(福岡県鞍手町)も新規設備を導入し、金型業界から医療分野への事業転換を目指すという。
成長分野への拡大と同じように多かったのが、自動車の電動化(EV化)への対応だ。プレス用金型メーカーのオオイテック(群馬県太田市)は、軽量化に対応した金型を製造するためにデジタル技術を活用した生産体制の確立に取り組むという。また、ダイカスト用金型メーカーの松村精型(富山県高岡市)はEV分野に参入するために、大型アルミ鋳造金型製造ラインを導入するとしている。
その他、独自商品を開発し、一般消費者向けのビジネスモデルに挑戦する企業もあった。
現在、金型業界を取り巻く環境は大きく変化している。コロナ禍に加え、自動車の電動化による金型需要の変化などによって、多くの金型メーカーが既存分野だけで安定した受注を獲得するのが難しくなりつつある。早期に新しい柱となる事業を確立することが求められている。
「事業再構築補助金」は22年度も継続する。上手く活用し、新市場の開拓や新規事業の立ち上げなどにつなげたい。
金型新聞 2022年3月10日
関連記事
自社商品の生産性アップ 大阪銘板は自動車などのプラスチック内外装製品などを中心に金型から成形、二次加工までを手掛ける。グループ全体で4つの生産拠点を持ち、型締め力100~2000tクラスのプラスチック製品を生産している。…
工程短縮、精度安定に利点 超高張力鋼板やガラス繊維など成形材料が高度化していることから、HRC60を超える焼入れ鋼や超硬材を使うなど金型の高硬度化が進んでいる。こうしたニーズに合わせて、高硬度材料を効率よく高精度に加工…
AIで自動作成 金型の加工プログラム作成は、熟練技能者の経験や知識に依存するケースが多い。金型づくりにおける長年の経験に基づくノウハウが必要とされる。しかしそれをAI(人工知能)で効率化し、経験の浅い技術者が経験者並みの…
DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。 IoT×特許で価値創造 繁閑の波が激しい中で、いかに…