金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

28

新聞購読のお申込み

Breakthrough!「AM用金属粉末」

金属AMによる造形で重要な要素となるのが金属粉末。近年では、造形しやすいマルエージング鋼だけでなく、ステンレス鋼や、ダイカスト金型での応用が期待されるSKD61相当材など、多様な粉末材料が登場している。こうした粉末の進化が金属AM活用の幅を広げている。今回のBreakthroughでは、メーカー各社の粉末材料の特長を紹介する。

PART1:EOS「高硬度なステンレス素材」
PART2:カーペンターアディティブ(LPWテクノロジージャパン)「優れた強度、靭性、耐腐食性」
PART3:ソディック「200㎜角超も造形可能SVM」
PART4:大同特殊鋼「SKD61相当材のAM粉末」
PART5:山陽特殊製鋼「高品質・高機能金属粉末」

PART1

EOS「高硬度なステンレス素材」

EOS StainlessSteel CX

強度や硬度が高く、耐腐食性に優れたステンレス素材(写真:EOS社提供)。通常の射出成型用の金型だけでなく、腐食性のあるゴム用の金型や部品、安全・衛生面で条件の厳しい医療や食品業界向けの金型や部品の材料に最適だ。

また、造形後の機械加工や研磨性にも優れているため、他の部品との組付けがあるものや、面粗度が求められる部品、腐食による剥落を避けなければならない部品にも利用できる。同製品の問い合わせはNTTデータザムテクノロジーズまで。

スペック

  • 相当鋼種:ステンレス鋼
  • 造形方法:SLM
  • 用途:工具や射出成型用金型、ゴム金型など
PART2

カーペンターアディティブ(LPWテクノロジージャパン)「優れた強度、靭性、耐腐食性」

Custom465ステンレス鋼

強度、靭性、耐腐食性に優れたマルテンサイト系時効硬化型ステンレス鋼。SUS304ステンレス鋼に近い耐腐食性を持ちながら、熱処理によって1750MPaを超える引張強度を発揮する。優れた切欠き引張強度と破壊靭性を備え、マイクロクラックなどの欠陥に対して高い耐性を持つ。硬さは熱処理後HRC50に及ぶ。

その他、カーペンターアディティブでは幅広くAM用パウダーをラインアップ。金型分野で適用が進むマルエージング鋼、H13工具鋼(SKD61相当)も取り扱う。

スペック

  • 相当鋼種、同等材:UNS S46500、AMS 5936、ASTM A564、ASTM A693、ASTM F899、MMPDS-01
  • 造形方式:SLM
  • 用途:金型、航空宇宙部品、医療器具
PART3

ソディック「200㎜角超も造形可能SVM」

ダイカスト型向け粉末

独自開発したダイカスト金型に適したSKD61相当材の粉末。造形時に応力を開放する、ソディック独自のSRT工法とセットで活用することで、200㎜角を超える大型ワークも反りを抑えることができる。現時点では、約1万円/㎏を想定しており、一般的な粉末に比べ、大幅に安く設定した。

SKD61と比較し、耐ヒートチェック性と耐溶損性に優れ、熱伝導性はほぼ同等を実現。熱処理でHRC42~52程度まで調整ができるので、ダイカスト型からプラスチック金型まで広く適用できる。

スペック

  • 相当鋼種:SKD61相当材
  • 造形方法:SLM
  • 用途:ダイカスト金型やプラスチック金型
PART4

大同特殊鋼「SKD61相当材のAM粉末」

DAP-AMシリーズ「HTC40、45」

金型の3D造形では、SKD61系材料が求められているが、造形後硬くなりすぎ、割れやすい。HTCはSKD61の化学組成を調整し、造形ままの硬さを下げることで、割れの発生を抑制した3D造形ダイス鋼系粉末。

合金成分を調整し、熱伝導率を向上させ、室温でSKD61の1.5倍、マルエージング鋼の2倍の熱伝導率を実現。水冷孔からの割れ発生防止やヒートチェックの低減に貢献する。HTCでの造形品は、SKD61改良の高性能ダイカスト金型用鋼材並みの金型特性が得られる。

スペック

  • 相当鋼種:SKD61系ダイス鋼
  • 造形方法:SLM
  • 用途:ダイカスト型、プラスチック射出成形型
PART5

山陽特殊製鋼「高品質・高機能金属粉末」

「NOVASHAPEシリーズ」

真空溶解と不活性ガスアトマイズにより低酸素と高純度な球状金属粉末。造形時のガス放出が少なく、各鋼種の素材特性を最大限発揮し、流動性に優れ、積層時に高い粉末供給性能が得られる。金型向けにマルエージング鋼「QM300」、コバルトを含まず、マルエージング鋼と同等の高密度化、高強度化した「Coフリーマルエージング鋼」(特許)、マルエージング鋼や熱間工具鋼(SKD61)より熱伝導性や造形性に優れ、割れの少ない「T12」を用意。合金成分の設計開発や数㎏ロットの試作、数tレベルの量産まで対応。

スペック

  • 相当鋼種:QM300の場合、マルエージング鋼、その他開発合金。
  • 造形方式:SLM、EBM、DEDの各種装置に対応可能
  • 用途:主にダイカスト金型

金型新聞 2022年5月10日

関連記事

【特集:技能レス5大テーマ】3.研削加工

誰でも高精度な研削 金型づくりで欠かせない研削加工。仕上げに近い工程のため、熟練技能を必要とする領域は多い。しかし近年、長年培った経験やノウハウを持っていなくても高精度の研削加工ができる機械や装置などが登場している。人手…

イイダモールド 樹脂製梱包装置を開発

輸送コストを大幅削減  樹脂射出成形用金型などを手掛けるイイダモールド(茨城県筑西市、0296-22-7256)はこのほど、金型などの重量物を輸送する新しい梱包装置「ファストキャリー」を自社で開発し、発売した。木枠が不要…

ニッシン・パーテクチュアル パンチ寿命を2〜3倍に向上

レーザーで表面に微細なくぼみ 冷間圧造金型メーカーのニッシン・パーテクチュアル(埼玉県春日部市、中村稔社長)は、金型のパンチの寿命を向上させる表面改質技術を開発した。フェムト秒レーザー(1兆分の1秒)加工機でパンチ表面に…

JFEスチール ギガキャストに対抗、大型部品統合する冷間プレス

従来11部品だったリアメンバを3部品に削減 JFEスチールはこのほど、1470MPa級の超高張力鋼板(超ハイテン材)で自動車の大型部品を統合する冷間プレス技術を開発した。新技術の適用対象部品は、後面衝突から車体保護を担う…

【金型テクノラボ】岡本工作機械製作所 大型プレートの高精度、高効率な平面研削技術

順送プレス金型などの大型プレートは、平面度を維持するために再研削によって何度も繰り返し使用されている。また、焼き入れ処理を行うため、反りが発生し、加工時間の増加や測定方法などが課題となっている。ここでは、このような金型プ…

トピックス

関連サイト