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【Breakthrough!】高硬度材加工工具

金型材の高硬度化で需要が高まっている「高硬度材向け切削工具」。メーカー各社は、独自の被膜を開発したり、刃形状を改良したり、より硬度の高い材料を精度良く、効率良く加工するための開発を続けている。進化を遂げる注目の高硬度材向け切削工具を紹介する。

イスカルジャパン「用途に応じヘッド交換可能」

マルチマスター

加工用途に応じてヘッドを選べるヘッド交換式エンドミル。PVDコーティング材種IC903は、超微粒子超硬母材にAlTiNをコーティングした材種で、耐欠損性と耐摩耗性に優れ高硬度材の加工に適している。

シャンクはスティール、超硬、タングステンから、用途に応じて付替えが可能。高効率な加工に超硬やタングステンシャンクと組み合わせることで、長い突き出し量の加工にも対応する。コレット一体型やHSK一体型ホルダーがあり、全て内部クーラント供給に対応する。

  • 刃径:φ8~20mm
  • 刃数:2~10
  • 被削材硬度:55~60HRC
  • 刃先形状:交換式ヘッドIC903各種
  • 加工用途:平面、側面、高送り、倣い

イワタツール「金型へ深穴加工を実現」

トグロンハードドリル(ロングドリル)

トグロンハードドリルは焼入れ後の金型の高精度穴加工などを目的に開発し、独自の刃先形状を持つドリルで、HRC40~72までの焼入れ鋼に30Dまでの貫通穴を実現。3枚刃設計で真円度・円筒度・面粗度が非常に優れ、条件によりH7以上の精度も可能。切れ味も良く、長寿命だ。

これにより、金型への直彫り加工を行った後、放電加工機にワークを移すことなく、そのままドリルでエジェクターピンや冷却穴など深穴加工ができ、ワンマシン・ワンプロセスで金型製作工程の削減が期待できる。

  • 刃径:φ0.8~6㎜
  • 刃数:3枚刃
  • 被削材硬度:HRC40~72
  • 加工穴深さ:5~30D
  • 加工用途:穴加工

オーエスジー「超耐熱・高じん性で長寿命」

高硬度鋼用超硬エンドミル「AE-MSS-H」「、AE-MS-H」

Aブランドの高硬度鋼用超硬エンドミルに多刃スクエアタイプ(スタブ形「AE-MSS-H」、ショート形「AE-MS-H」)を追加した。ボールタイプも用意しており、ラジアスタイプも近日発売予定。

高硬度鋼加工に最適化された超耐熱性・高じん性の「DUROREY コーティング」を採用。60HRCを超える高硬度材料で優れた耐チッピング性を発揮、工具の長寿命化を実現。さらに最適化された刃先仕様により、高硬度鋼の安定加工と高精度な直彫り加工を可能にする。

  • 刃径:φ1~12㎜
  • 刃数:φ6未満=4枚刃、φ6以上=6枚刃
  • 被削材硬度:~70HRC
  • 刃先形状:スクエア
  • 加工用途:側面切削

京セラ「独自設計でびびり抑制」

SGS超硬ソリッドエンドミル「Z-Carb-AP」

米国特許を取得した独自設計で仕上げ面品位や工具寿命に悪影響を及ぼすびびりを抑制し、従来工具では困難な加工もスムーズに安定加工を実現。コーナーR形状を厳しく管理し、加工精度を向上。不等分割・不等リードによるびびりを抑制。不等すくい角(米国特許)でスムーズに切りくずを排出、高硬度材加工の高生産性に貢献する。

このほか、高機能なコーティングと高い切りくず排出量を誇る「Z-Carb-HPR」や仕上げ加工向けの多刃仕様の「Multi-Carb」など多彩な商品を揃える。

  • 刃径:φ1.0~25㎜
  • 刃数:4枚刃
  • 刃先形状:ラジアス
  • 加工用途:溝、側面

住友電気工業「焼入鋼を超高精度に直彫り」

スミボロンバインダレスエンドミル

結合材を一切含まないCBN焼結体「スミボロンバインダレス」を刃先に適用したエンドミル。

ボールエンドミルは独自の高精度研磨技術により刃先を高精度で鋭利に仕上げた。これにより焼入鋼金型を長時間、直彫り加工しても高精度な仕上げ面を維持する。

ラジアスエンドミルは優れた熱伝導率により高い耐摩耗性を発揮。Ni基耐熱合金やAM造形材などの仕上げ加工に最適。独自の加工技術による多数の切れ刃で、従来の工具を凌駕する加工能率を実現する。

  • 刃径:ボールφ2mm以下、ラジアスφ5mm以下
  • 刃数:R1mmなど/8枚刃、16枚刃など
  • 被削材硬度: 53HRC~64HRC(70HRCで実績)
  • 刃先形状:ボール/ラジアス
  • 加工用途:溝/側面/平面/曲面/R溝/彫込み

ダイジェット工業「高硬度材の高能率加工を実現」

ハード1ラジアス

高精度なコーナR切れ刃とシームレス形状の外周切れ刃、不等分割・不等リードを採用する事で切削抵抗を低減。ナノ多層膜の被膜を採用した高耐熱性新材種「DH110」を用いた。これにより、加工時の熱の発生を大幅に低減、また高温下での使用環境にも強い。焼入れ鋼などの高硬度材を直彫りで高能率に加工し、リードタイムを短縮できる。

刃長1Dのスーパーショート4枚刃ソリッドラジアスエンドミル。70HRCまでの荒~仕上げまで対応。L/D=0.2以下のドリリングも可能。

  • 刃径:φ2~12㎜
  • 刃数:4枚刃
  • 被削材硬度:~70HRC
  • 刃先形状:ラジアス
  • 加工用途:曲面、R溝、ポケット

日進工具「142サイズに規格拡大」

CBNスーパーハイプレシジョンラジアスエンドミル

高硬度で耐熱性の高い、cBN焼結体を母材に採用することで、70HRCの高硬度材でも長寿命、高精度化を実現。切削抵抗を軽減する刃形状を採用し、仕上げ精度の向上に成功した。

シャンク径の公差は-1~3μmと2μm範囲に抑え、超高精度仕様の焼きばめシャンクにも対応。6月には全142サイズ(φ0.1~3まで)まで規格拡大した。また、スクエア、ボールなどのCBNエンドミルをシリーズ化し、近年増加する高硬度加工の直彫加工に対応している。

  • 刃径:φ0.1×R0.01~φ3×R0.2
  • 刃数:4枚刃
  • 被削材硬度:40~70HRC
  • 刃先形状:ラジアス
  • 加工用途:平面、溝

三菱マテリアル「立壁を高精度に加工」

高硬度鋼加工用エンドミル「インパクトミラクルレボリューション VFR2XLB」

高硬度鋼加工で驚異的な長寿命を実現するエンドミルシリーズ「インパクトミラクルレボリューション」のロングネックボールタイプ。ボール部と外周部のシームレス化(つなぎ目無し)と強バックテーパの採用によって、立壁加工での高精度な加工が可能となった。

ボール部すくい角を最適化し、耐欠損性および仕上げ面精度を向上させた他、先端形状も最適化し、仕上げ面精度の向上を図った。また、強バックテーパの採用で立壁加工でのびびり振動を低減させた。

  • 刃径:φ0.6mm~6mm
  • 刃数:2枚刃
  • 被削材硬度:65HRC以上
  • 刃先形状:ロングネックボール
  • 加工用途:彫り込み加工

MOLDINO「独自被膜で寸法変位を抑制」

エポックディープラジアスエボリューションハード-TH3

「EPDREH-TH3」は、高硬度鋼を長寿命で精度良く加工できる小径エンドミルシリーズ。高硬度鋼切削で優れた耐摩耗性を発揮する独自の「TH3コーティング」を採用し、加工終了までのワーク寸法変位を抑制する。

また、一般的なラジアスエンドミルが外径基準なのに対し、「EPDREH-TH3」は工具中心基準のため、高精度なコーナRを保証している。さらに、従来工具に比べてたわみ量が少ない工具設計を採用した。2枚刃タイプに加え、4枚刃タイプも揃える。

  • 刃径:φ0.2~1.0㎜(EPDREH2-TH3)、1.0~6.0㎜(EPDREH4-TH3)
  • 刃数:2枚刃(EPDREH2-TH3)、4枚刃(EPDREH4-TH3)
  • 被削材硬度:45~72HRC
  • 刃先形状:ラジアス
  • 加工用途:溝・側面・平面・曲面・R溝・彫込み

ユニオンツール「高硬度材、効率よく高精度に」

「HMGコートボールシリーズ」

60HRC超の高硬度材を高能率、高精度に加工するために開発した。形状はボール部のすくい角をよりネガティブにしたことで、耐チッピング性を高めた。また、高硬度対応のコーティング「HMGCOAT」を採用することで、70HRCまで対応を可能にした。

超硬母材も従来に比べ耐摩耗性を高めたものに変更。外形公差、R精度、シャンク径を高精度化させたことで、60HRC以上の高硬度材の高能率荒加工と、高精度仕上げ加工を可能にした。

  • 刃径:R0.05~R3.0
  • 刃数:2枚刃
  • 被削材硬度:50~70HRC
  • 刃先形状:ボール
  • 加工用途:側面、曲面、平面

金型新聞 2021年6月10日

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