金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

AUGUST

29

新聞購読のお申込み

差別化できる設備投資、従来とは違う戦い方で次世代につないでいく 中村稔氏(日新精機社長)【鳥瞰蟻瞰】

日新精機 代表取締役社長 中村 稔氏

当社は創業から50年間、冷間圧造金型一本で事業を続けてきました。しかし、10年後も同じように事業を続けていられるかというと、そうは考えていません。今ある仕事は相当減っていると思います。感覚的な予測になりますが、だいたい3~4割は減るのではないかとみています。

その大きな理由の一つが自動車部品の共通化です。当社が手掛ける冷間圧造金型の多くは、ボルトやリベットといった自動車部品の製造に使われています。こうした圧造部品は表に出るものが少なく、車の外観への影響が大きくないため、どんどん共通化されています。

ただ、部品の共通化が進むことで、部品の種類は減りますが、1部品当たりのロットは大きく増えるので、金型そのものの需要がそこまで減るとは思っていません。問題なのは、大ロットの生産を中小メーカーでこなしきれるかということ。

例えば、月50~60万個であれば50人規模の成型メーカーでもオペレーションできますが、月1000万個で、しかも全数検査して全世界に出荷するとなったら、1000人規模の企業でないと対応できません。そして、こうした大手成型メーカーは内製部門を持っているので、必然的に金型メーカーへの仕事は減っていきます。

もちろん金型メーカーへの仕事すべてが無くなる訳ではないですが、コモディティ化が進むことから価格や納期はこれまで以上に厳しくなることが考えられます。そうなると、従来通りの金型事業だけでは疲弊していく可能性が高い。会社の未来を考えると、これまでとは違う道筋も考えておくことが必要になります。

そこで当社では今年、新たにフェムト秒レーザー加工機を導入し、レーザー加工事業を開始しました。補助金を活用するとはいえ、売上高の約3分の1をかけた大規模な投資で悩みましたが、まだ競合が少なく、ニッチな市場ということもあって、導入を決めました。

フェムト秒レーザー加工機はフェムト秒(1兆分の1秒)という非常に短いパルス幅を持つレーザー加工機で、他の加工技術では不可能なナノレベルの超微細穴加工やワーク表面に微細な模様をつけるテクスチャリングなどが可能です。ただ、まだこれからの技術で、当社も現在はどんな加工ができるのか、技術開発に取り組み、加工の腕を磨いているところです。

これまでの10年を振り返ると、当社は複合旋盤や5軸マシニングセンタ、自動化システムなど約4億円をかけて積極的な設備投資を行ってきました。これらの投資は電極の内製化や夜間運転の実現など一定の成果はありましたが、金型の付加価値向上につながったかというと、そうとは言えません。高価で良い機械を持っていても金型の価格は上がらないですし、差別化にもならない。他社にもある設備ではお客さんを呼ぶことはできません。

その点、今回導入したフェムト秒レーザー加工機は違います。すでに従来とは異なる分野からの仕事や、さまざまな人に来社してもらう機会が増えています。今後の設備投資は、“世界初”や“日本初”といった領域のものでないと差別化にはつながらないと思います。

当社は私で3代目ですが、自分の代で3事業体制にしたいと考えています。まずは現在取り組んでいるレーザー加工事業を収益化し、金型に次ぐ事業の柱にしていくことが目標です。

産業は時代とともに変わっていきます。金型産業も変化しており、メーカー各社はこれまでとは違う戦い方が求められます。当社としてもさらに新しい事業を模索し、次世代へとつないでいきたいです。

金型新聞 2022年11月10日

関連記事

ケイ・エス・エム 金型技術生かし、医療やロボに参入【金型の底力】

徹底して顧客の声を聞く 高温の射出成形用金型を得意とするケイ・エス・エムは医療機器分野への参入やロボット販売など事業の多角化を進めている。新事業の立ち上げで苦労する企業が多い中、成功しているのは「金型技術をコアにものづく…

デジタル技術駆使し、金型製作期間半減目指す【ササヤマ challenge!Next50】

ササヤマが今期スタートした新中期経営計画「SAIMS247」。その中核事業となるのが金型製作期間の半減だ。デジタル技術や経験を駆使し金型づくりの大改革が進む。 全ての部品をQRで管理 材料に書かれたシリアルナンバー。入力…

「世界のオギハラ」再建<br>-長谷川 和夫社長に聞くー

「世界のオギハラ」再建
-長谷川 和夫社長に聞くー

米に工場、生産力強化  自動車ボディ向けプレス金型を手掛けるオギハラの社長が今年1月に交代した。新社長はアメリカ現地法人副社長の長谷川和夫氏。製造部門を経験し、長く海外畑を歩み、海外自動車メーカーの金型調達や開発にも携わ…

切削油をオーダーメイド
サンコーオイル

 「お客様が求める油を作りたい」と語るのは、サンコーオイルの菅大祐専務。同社ではユーザーが求める価格帯や性能、さらには環境への影響まで考慮し、オーダーメイドで切削油の製造を行い、好評を得ている。  切削油のオーダーメイド…

【鳥瞰蟻瞰】ワークス代表取締役・三重野 計滋氏 時代が求める金型づくり

日本の技術力は世界一魅力のある金型を創り連携し海外に売り込もう  国内の需要が縮小し、海外との競争はますます厳しくなり、自動車の電動化が産業構造をも変えかねない状況の中、日本の金型に未来はあるのだろうか。このような悲観論…

トピックス

関連サイト