金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

02

新聞購読のお申込み

日型工業 金型技術ライセンスを供与 知財戦略でビジネスモデル変える【金型の底力】

金型を売り切るだけでなく、金型技術を活かし、収益をどう安定化させるかー。金型メーカーにとって普遍的な課題だ。鋳造型を手掛ける日型工業は独自技術を他社にライセンス供与し、収益化につなげている。「多くの人に使ってもらうことで、顧客の課題を解決につなげる」(渡辺隆範社長)ことも狙いだ。今後は鋳造で培った知見を基にダイカスト型への参入し、事業の柱を太くする考えだ。

渡辺 イ範社長
保温し成形のムラを無くす高機能金型
大型の金型を加工できる加工機
本社工場は門型MCの導入を検討中

鋳造で使われるシェル中子型は280℃前後まで金属を加熱して成形するため、熱の影響を大きく受ける。この熱で金型がひずみ、成形不良を引き起こすことが長年の課題とされてきた。

独自開発した「高機能金型」はこの熱ひずみを抑える技術(特許取得済)。金型に組み込んだシート型のヒーターや棒ヒーターで金型を加熱。高炉で耐熱用として使われている断熱材を金型に組み込み、金型表面からの放熱を防ぐ仕組みだ。

これらにより、金型の内部温度を一定にすることに成功した。成形ムラを無くし、精度向上、バリレスにつながる。最も効果が高いのがサイクルタイムの向上で、あるユーザーでは80秒を30秒に短縮できたという。

こうした効果に加え、二酸化炭素削減にも貢献する。金型の保温効果が高く、金型を温める回数が減るためだ。「電力量の25%カットに成功した事例もある」(渡辺社長)。

高機能金型は従来の金型に比べ、「2割程度高くなったが」が、こうした機能が評価され、3年前にある自動車部品メーカーに採用が決定。その後も着実に採用が決まり、現在は6社のユーザーで使われているという。

着実に受注を伸ばす中で、昨年には初めて同業他社へのライセンス供与に踏み切った。きっかけは大手トラックメーカーでの採用だ。「到底当社だけで対応できない量だった上、過去からの取引の関係もあり、他社にお願いせざるを得なかった」。

ユーザーにも相談した結果、その金型は日型工業では作らず、他社にライセンスのみを供与する形にした。供与先の金型メーカーがユーザーに販売した金型の売上の内5%をライセンス料として受け取る。同社としては、製造コストなしで、5%の利益を享受できることになる。

収益面での貢献もさることながら、渡辺社長は「技術が広がることもうれしい」という。「顧客が抱える課題を解決する」が同社のスタンスで、「広がれば広がるほど、熱による課題を抱えるお客様の課題が多く解決できる」からだ。

こうして高機能金型を収益の安定化につなげる一方で、現在模索しているのが、ダイカスト金型への参入だ。過去には実績はあるが、「そう多くない」。最近、ある自動車メーカーから技術支援を受けながら、ダイカスト金型の設計を強化。「技術を磨く必要があるが、特定の金型なら問題なく、作れるようになってきた」。

中でも今後視野に入れるのが大型の金型だ。「1万トン超の成形技術『メガキャスト』とはいかなくても、一体化などで、ダイカストの大型化ニーズは高まる」とみる。ダイカスト金型でも、高機能金型のように顧客の課題解決策を提案していく考えだ。

会社の自己評価シート

「高機能金型」に代表されるように技術力やそれを支える人材、チームワークは強みだと回答。また、ダイカスト型への挑戦や投資も強みとみている。一方で、こうした能力をPRする力が今後の課題となりそうだ。

会社概要

  • 本社:埼玉県川口市南鳩ヶ谷3-20-15
  • 電話:048-283-6111
  • 代表者:渡辺隆範社長
  • 創業:1966年
  • 従業員:30人
  • 事業内容:重力鋳造金型、低圧鋳造金型、砂型鋳造金型、ダイカスト金型の設計製作など。

金型新聞 2023年1月10日

関連記事

AM技術の可能性
DMG森精機 AM部 ブルーメンシュテンゲル健太郎 部長に聞く

 金属3Dプリンタを使った金属積層技術(AM技術)は様々な分野で広がっている。代表的なものは航空宇宙、医療、自動車で、さらに多方面へ拡大することは間違いない。そこで金属3Dプリンタを活用した次世代の金型づくりの可能性を探…

この人に聞く
パンチ工業 森久保 哲司 社長

ものづくりへの回帰 昨年11月、パンチ工業(東京都品川区、03-6893-8007)の社長に就任した。「ものづくりへの回帰」を掲げ、商品開発や加工技術のレベルアップなどに取り組み、今まで以上にユーザーの要求に応えていく考…

日進工具が展示会

後藤社長に聞く 見どころと狙い  12年ぶりに日進工具が精密微細加工に特化したプライベートショー「NSTOOLプライベートショー2020精密・微細加工技術展」。小径エンドミルはもとより、微細加工機、治具、そして切削加工ユ…

鋳造に独自の新工法
マツダ

特集 次世代車で変わる駆動部品の金型鋳造に独自の新工法  次世代自動車の技術は電動化に限らない。注目されるのがエンジンの進化だ。燃費性能を追求する新型エンジン「スカイアクティブ」。多くの自動車メーカーが電動化に力を入れる…

久野金属工業 金型・プレス・組立一貫生産【金型の底力】

プレス業界の活性化に ハイテン材など高張力鋼板や難加工材のプレス金型及びプレス加工を手掛ける久野金属工業は、次世代車向けのプレス部品の製造を強化するため、約30億円を投じ、愛知県豊明市に新工場を建設。金型からプレス加工、…

関連サイト