金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JUNE

02

新聞購読のお申込み

フタバ産業 超ハイテンを冷間で量産【特集:プレス加工最前線】

自動車のボデー部品や排気系部品など手掛けるフタバ産業は1470MPa超ハイテン材の冷間プレス部品の量産を確立、今年1月に発売した新型プリウスに採用された。先代プリウスはホットスタンプを用いた部品を採用していたが、冷間プレスの量産化を図ったことで生産性を数倍に高めた。

採用されたのは新型プリウスの「フロントピラーアッパアウタ」(写真)で、深い絞りなど複雑な形状部品で冷間プレス加工するのは難しく、従来はホットスタンプを採用していたが、材料を熱したり、冷やしたりするなど生産性が低く、コスト面で課題を持っていた。生産技術本部の山田豊副本部長は「自動車部品は軽量化とカーボンニュートラルのニーズが高く、工法転換するために、技術開発に取り組んだ」。

1470Mpa 超ハイテン材のピラー部品

1470MPaの超ハイテン材を冷間プレスする際の課題といえば、成形後に残る残留応力による強いスプリングバックで、CAE解析を行っても予測通りの結果にならない。そこで、試作型を作り、リアルな検証で材料評価を行いながら、CAEとの両輪で開発を進めていく。開発を担当したボデー開発部の宮本吉貴氏は「想定外の割れやシワ、寸法精度を確保するのが難しく、材料メーカーとも連携しながら開発した」と語るほど、材料に伸びがなく、金型の耐久性にも課題を残した。

金型の長寿命化を図るために、製品形状を見直し、パンチの刃先形状や材質(靭性など)、コーティングの工夫など試行錯誤を繰り返す。製品形状は顧客と相談し、従来フラットな面の部分に凹凸形状を施すことで、シワの課題を克服した。結果、5年の開発期間を経て、1470MPaの超ハイテン材の冷間プレス(トランスファープレス)による量産を確立。「ホットスタンプに比べ生産性が数倍向上した」と山田副本部長も胸を張る。さらに、フロントピラーロアやカウルサイドインナ及びレールアウタなどに1180Mpaの冷間超ハイテン材が採用され、先代モデル比で3・3㎏軽量化に成功し、年890㌧のCO2削減を達成した。

同社では今後も軽量化やCO2削減を図る技術開発に取り組む。直近は1470MPaと440Mpaの異なるハイテン材をテーラードブランクする開発を進めている。山田副本部長は「大型化や一体化ニーズが高まっており、ホットスタンプとも比較しながら新しい工法開発に取り組む」と話す。だが、強度差の大きい材料の同時加工は難易度も高いようだ。開発を手掛けるボデー開発部の南風香氏は「従来からある工法だがハイテン材となると、技術的な難易度が違う。でも、軽量化を目指すには不必要な板厚を減らし軽くすることが求められるため、研究開発を進めたい」と意気込みを語った。

㊧ボデー開発部の宮本吉貴氏㊨南風香氏

金型新聞 2023年7月10日

関連記事

ハマダ工商 AMで新たなものづくり【金型の底力】

樹脂やプレス金型の製作から少量の成形まで手掛けるハマダ工商は今年2月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。水管を自由に設計した冷却効果の高い金型で、反りを抑えた防犯レンズカバーの成形品を提供するのが狙い…

【金型の底力】山善金型 様々な顧客ニーズに応えられる会社に

限界を作りたくない生産工程を見える化 「様々な顧客ニーズに応えられる会社にしたい」と話すのは、山善金型の山下和也社長。同社は精密なプラスチック金型を武器に、日用品から自動車部品、医療機器など幅広い顧客を獲得。モットーは『…

マイクロヴェルト 技能問わずどこでも使える測定機【金型応援隊】

マイクロヴェルトは4月にもレーザー式の回転工具外径測定機「マイクロヴェルトナノ9」を発売する。設置環境や技術者のスキルを問わず、極めて短い時間で高精度に測定できる。 工具を独自のVブロックにセット。ボタンを押すと工具が回…

オネストン・鈴木 良博社長「グループで金型強化」

パンチやダイ、強力ばねなどプレス金型部品を取り扱うオネストンは2021年に創業50周年を迎えた。プレス部品専門商社として基盤を築き、近年は「1個づくり」の特殊部品対応やリバースエンジニアリングほか、アメリカ・ケンタッキー…

【特集】ユニークな社内制度

従業員が満足して働ける、働きやすい魅力的な職場を作ることで、多様な人材が企業に集まってくる。そうして集まった人材は、長く会社にいて力になってくれる。そんな考え方から独自の社内制度を設け、活用する企業は多い。では、金型メー…

トピックス

関連サイト