金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

AUGUST

12

新聞購読のお申込み

【鳥瞰蟻瞰】エスアイ精工社長・指尾 成俊氏 QCD+「E(Emotion=感情)」

選ばれる企業になるために
経営者の美意識によって
顧客の感性に訴求する

当社は1986年に創業したカーボン素材などの高精度加工を得意とする従業員13人の会社です。主に半導体の製造工程で使用されるカーボン製治具などを手掛けており、半導体や電子部品メーカーなどと取引を続けています。

金型企業とは業種は異なりますが、大手メーカーのサプライヤとして事業を展開しているという点では共通する課題も多いのではないでしょうか。特に「顧客にいかに選ばれる企業となるか」というテーマはどのサプライヤにとっても重要な課題の一つです。

顧客から見るサプライヤは大きく3つのグループに分類されると思います。一つ目は必要な時だけ声がかかるグループ、二つ目は相見積もりによって常に価格や納期を競争させられるグループ、そして三つ目がメーカーにとって無くてはならないグループです。

我々サプライヤからすると、一つ目、二つ目のグループに入ってしまうと正直つらい。できれば三つ目のグループに入りたいところです。では、どうやって入るか。「QCD(品質・コスト・納期)」を向上させることが重要なのは当然なのですが、私はプラスアルファの要素が必要だと考えます。それが「E(Emotion=感情)」です。

「QCD」は機能であって、食事で言うなら「うまい」「安い」「早い」。これさえ満たしていれば、顧客を満足させることはできます。ただ、それだけでは不十分な場合もあります。例えば新規開拓の時、既存サプライヤが「QCD」を満たしていたら、選ばれるためにはそれ以外で勝負しなければいけません。

また、顧客も本当に「QCD」だけで選ぶかというと、そうではありません。同じ「QCD」でも「この会社から買いたい」、「この人と一緒に仕事がしたい」といった情緒的なものが含まれているはずです。こうした顧客の感性こそ私が唱える「E」につながります。

この「E」には担当者の人柄や身だしなみ、梱包の丁寧さや工場のきれいさ、対応のスピード、技術力など様々な要素が関わってきますが、最も大事だと思うのが経営者の美意識です。何が良くて、何が悪いのか。そうした判断は全て経営者の美意識に基づきます。

当社では汚れやすいカーボンの加工現場をきれいに保つために独自の対策を施したり、顧客への迅速なレスポンスを心がけたりしていますが、誰かに言われて取り組んでいるのではありません。全て私や先代のこだわりによるものです。

数年前に導入した3DCADもその一つです。顧客からの要望ではなく、「カーボンの特性を熟知した当社が、設計から提案できれば、顧客の課題解決に大きく貢献できるはずだ」という私の思いで取り組み始めました。現在では開発段階で必ず声がかかるようになり、顧客にとって無くてはならない存在になっていると思います。

重要なのは顧客の要望ではなく、自らの価値観でものごとを決めていくことです。ただし、それには高い美意識が必要です。だれも見向きもしない方向に進んでも未来はないですからね。

美意識を高めるためには、芸術に触れたり、いろんな経営者に会ったりするなど様々な方法があると思います。一つ注意すべきは、それらの何が良いのか、常に真理を追究することです。そうすれば本物を見極める目を養えるはずです。私も常に意識しながら行動しています。

今後、金型企業を取り巻く事業環境は厳しさを増す部分もあると思います。そうした中で、顧客にいかに選ばれる企業となるのか。「美意識による経営」は、その一つの選択肢だと思います。

金型新聞 2021年10月10日

関連記事

【金型の底力】山善金型 様々な顧客ニーズに応えられる会社に

限界を作りたくない生産工程を見える化 「様々な顧客ニーズに応えられる会社にしたい」と話すのは、山善金型の山下和也社長。同社は精密なプラスチック金型を武器に、日用品から自動車部品、医療機器など幅広い顧客を獲得。モットーは『…

TMW 切削工具メーカーと挑む金型製造の効率化

自動車向け大型プラスチック射出成形用金型メーカーのTMWが、金型製造の効率化に向けた取り組みを進めている。販売代理店も務めるクランプシステムや、5軸加工に対応した最新の切削工具などを活用し、加工時間や段取り工数の短縮、5…

日本金型工業会 会長 小出 悟氏 (小出製作所社長)
〜鳥瞰蟻瞰〜

金型は量産の道具 理解するマスターが必要人材発掘が経営者の仕事  「金型は量産のための道具である」と長年言い続けています。金型というものの本質がそこにあると思うからです。お客様は金型が欲しいわけじゃない。金型を使って効率…

植田機械 植田 修平社長に聞く<br>UMモールドフェアの見どころ

植田機械 植田 修平社長に聞く
UMモールドフェアの見どころ

ものづくりのお役に立ちたい 未来を拓く新技術  来場者の技術革新に貢献  JIMTOFで展示された工作機械や機器、ソフトなど金型や部品加工における最新技術を一堂に集めて披露するUMモールドフェア。今回は新型の5軸加工機や…

【この人に聞く】三井精機工業社長・加藤欣一氏「”高精度”生かし、金型加工に適した機械を提供」

三井精機工業(埼玉県川島町、049-297-5555)が、金型分野に注力している。今春、新型の微細加工機と、ジグ研削盤を発売。今後需要の拡大が期待される電気自動車(EV)や電子部品関連の金型加工向けを中心に売り込んでいく…

関連サイト