金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

明星金属工業 上田幸司社長に聞く CO2削減に取り組む理由【特集:カーボンニュートラルに向けたはじめの一歩】

自動車のプレス金型を手掛ける明星金属工業は、工場のエア効率化や照明のLED化などにより16年間でCO2排出量を18・5%削減した。カーボンニュートラルへの取り組みを推進する上田幸司社長は「CO2削減に取り組むことで無駄なコスト削減につながった」という。その具体的な取り組みは、成果を出すためのカギは、取り組む理由は。上田社長に聞いた。

明星金属工業 上田幸司社長

ムダ減らし、経営体質を強くする

取り組み始めたきっかけは。

取引する自動車メーカーの勧めもあり2005年に環境マネジメントシステムISO14000を取得したのがきっかけです。環境への影響をPDCAサイクルによって持続的に改善しなければならない。その一つとして06年から消費エネルギーの削減に取り組み始めたのです。

その取り組みは。

省エネのターゲットとしたのがまず工場の設備の動力源となるエアのムダ削減でした。というのも当社が用いるエネルギー(電気やガソリン、灯油など)のうち最も消費量が多いのが全体の86%を占める電気でした。そしてそのうち約40%がコンプレッサによるもの。そこで省エネの対象をエアに絞ったのです。

具体的な取り組みは。

そもそもなぜエアが約40%も占めているのか。工場をくまなくチェックしました。すると大型MC(10台)やプレス機(1800トンなど3台)、多数のグラインダなどにエアを供給するため張り巡らせた配管のあちこちからエア漏れの音が聞こえる。それが理由の一つと判り、エア漏れを全てチェックして保全。無駄なエア削減に効果が現れました。

そこからエアのムダ削減を徹底して追求しました。設備や工具を使えるギリギリの気圧に下げ、機械加工精度を高めてグラインダで金型を研削する作業時間を減らしました。さらには工場3棟それぞれの設備が要するエア量に最も合うコンプレッサを1台ずつ導入し過剰供給を抑えました。

取り組みの成果は。

その後、エアで得たPDCAサイクルのノウハウを照明やガソリンやそのほかのムダ削減に活かしました。その結果、06年から22年の16年間で年間のエネルギー消費量を18・5%削減できました。これはCO2排出量に換算すると580トンから473トンに減らすことができました。

成果を出すカギは。

まず自社の消費エネルギーの体質を分析すること。何を最も消費しているのか、何を最も削減できそうか。そして削減するターゲットを明確に定め、目標とそのロードマップをつくり、PDCAサイクルを回し続けることです。

そして二つ目は1時間あたりの消費量を測り続けることです。月や年の総使用量だと仕事量の多さで変動しますし、使用額だと値上げなどで上下します。1時間あたりの消費量で比較することで景気や価格変動に影響されない実質の省エネの成果を測れます。

ものづくり業界で広がる脱炭素。しかし中小企業ではまだまだ少ない。なぜ取り組むのか。

持続可能な社会のためですが、最大の目的は無駄なコスト削減による経営体質の強化。消費エネルギーを削減できれば、会社のCO2排出量も必ず減らせる。しかも脱炭素は社会的課題なので国の支援があり、社員や取引先にも理解されやすく、取り組みやすい。社会的課題というフォローの風に乗りながらコスト削減に取り組んでいるのです。

金型新聞 2023年9月10日

関連記事

久野金属工業 取締役副社長 久野 功雄氏 〜鳥瞰蟻瞰〜

我が社しか実現できないモノを 少し高くても選んで頂けるそれがブランド力         従来のお客様と金型メーカーには阿吽の呼吸のようにお互いを必要とする関係があり、スムーズに仕事を進める上で大切です。ですが、…

【鳥瞰蟻瞰】由紀ホールディングス 代表取締役社長・大坪正人 氏「中小製造業をグループ化、優れた技術守り次代につなげる」

中小製造業のグループ化事業に集中できる環境を整備優れた技術守り次代につなぐ 2006年に金型ベンチャー企業から父が経営するねじメーカーの由紀精密に入社しました。そこで感じたのは企業規模が小さすぎて、あらゆる機能が無さすぎ…

匠ソリューションズ 金型や湯の温度を見える化【金型応援隊】

ベテランの勘・コツに頼らない部品工場を目指し、生産現場への型温・湯温の見える化の要求は高まっている。 匠ソリューションズが開発した生産中の型温・湯温見える化システム「TWINDS‐T」は、①作業を邪魔しない温度データワイ…

DXの本質は生産性の向上と人材育成 佐藤声喜氏(KMC社長)【特集:利益を生むDX】

多くの製造現場がDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性を認識する一方で、DX導入に苦労している企業や製造現場も少なくない。そうした中、「製造DXソリューションカンパニー」を掲げるKMC(川崎市高津区)は、工作機…

イワタツール トグロンハードドリルの挑戦<br>焼入れ鋼に穴があく

イワタツール トグロンハードドリルの挑戦
焼入れ鋼に穴があく

金型製作工程を短縮 設備強化で需要に対応  イワタツール(名古屋市守山区、岩田昌尚社長)が2010年に発売したトグロンハードドリルは焼入れ鋼用穴加工ドリルとして、ここ数年需要が急増し供給が追いついていない状況だ。同社の岩…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト