金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

AUGUST

19

新聞購読のお申込み

三光化成 エアと水のハイブリッド冷却【特集:金型づくりで広がる金属AM活用】

ラティス構造を採用し、材料費と造形時間を削減

自動車関連を中心に6000品目を超える樹脂成形部品を生産する三光化成。ソディックの金属3Dプリンタ「OPM350L」を活用し、水とエアを冷却媒体として活用する「ハイブリッドコンフォーマル冷却」や、金型にラティス構造を採用するなど新たな金型作りを進めている。

プリンタの導入後5年の知見を経て、現在製作するハイブリッドコンフォーマル冷却は設計の工夫や金属3Dプリンタならではの構造を盛り込んだ。まず入れ子部には冷却媒体として水を流す水管を配置した。

一方、「スライドコアにも熱がこもるが、レイアウト次第でスライドコアに冷却回路を配置する事自体が困難となる。エア冷却でも効果があるのではないか」(金型工場の橋本寿工場長)と考え、4分割したスライドコア部にはエア冷却を配置した。

エアと水の冷却を設けたハイブリッドコンフォーマル冷却金型とモックアップ

金型の一部にはラティス(格子状)構造を採用しているのも大きな特長だ。狙いは、高密度に材料を積層しないラティス構造による「高価な材料費の削減」と「造形時間の短縮」だ。「金型の強度さえ担保できるなら、内部が空洞だっていい」と割り切り、ラティス構造を採用。同じ理由で、ラティス部以外にも空洞を多く設けた結果「かなりの造形時間と材料が削減できた」という。

また、「保温効果」という副次的なメリットも生んだ。ラティス構造は造形部の表面積が大きくなるため、「『空気の壁』のような役割を果たし、余分な熱の伝達を防げている」。さらに、縦横斜めに造形するので、宙に浮く部分を造形するオーバーハング対策にもなっているという。

金型の一部にはラティス(格子状)構造を設けた(モックアップ)

こうして製作した金型の冷却効果は非常に高い。従来10ショット程度で132℃まで上昇していた型温が、約85℃で安定。また、金型のダウンサイジングにも成功した。従来の金型では、スライドコアに冷却回路を配置すると、入れ子同士の距離が必要となるため「2個取りが限界だった」。しかし、今回の金型では「4個取りが可能なうえ、金型サイズも相対的に小さくできる」と話す。 

金属3Dプリンタを積極的に活用する三光化成。だがこれで終わりではない。現在も「新たな構造を持った金型部品の製作に挑戦している」という。

自らの経験を踏まえ、橋本工場長は金属3Dプリンタでの金型活用についてこう話す。「従来の金型は『削りだす』ことが前提。しかし、金属3Dプリンタは『盛る』技術。そのため、これまでと異なる設計思想が必要だが、その分可能性も大きい」。

金型新聞 2023年11月10日

関連記事

昭和精工 木田康隆社長 「社員の幸福を追求し、収益力の向上を目指す」

精密プレス金型メーカーの昭和精工(横浜市金沢区、045・785・1111)の社長に昨年11月29日付で就任。いとこである木田成人前社長から経営を引き継いだ。 入社から15年ほどはほぼ一貫して金型設計を担当していたが、20…

【ひと】サンアイ精機 代表取締役社長 菊地 晋也さん

髭のサンタクロース 誰しも12月24・25日をワクワクして過ごした子供時代の記憶があるだろう。それはクリスマスプレゼントがもらえる日だからだ。「子供たちにとって記憶に残る楽しい1日を体験してほしい」。そんな願いを込めて地…

【この人に聞く】ハスキー統括部長・千葉紀久氏「ホットランナの市場拡大を」

ホットランナの市場拡大を  今年、日本法人設立30周年を迎えたハスキー(東京都町田市、042-788-1190)。プリフォーム射出成形システムの世界最大手でありながら、ホットランナメーカーとしての側面も持つ。日本では20…

加工プログラムの効率化 テンプレートで時間短縮、3DCADで自動作成【特集:2022年金型加工技術5大ニュース】

金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…

武林製作所の千田氏が「八尾ものづくり達人」

加工効率高める金型を設計 歯ブラシのプラスチック金型を手掛ける武林製作所(大阪府八尾市、072・998・1207)の金型設計技術者・千田雄一さんが、2023年の「八尾ものづくり達人」に選ばれた。金型の加工効率や品質を高め…

トピックス

関連サイト