ササヤマが今期スタートした新中期経営計画「SAIMS247」。その中核事業となるのが金型製作期間の半減だ。デジタル技術や経験を駆使し金型づくりの大改革が進む。 全ての部品をQRで管理 材料に書かれたシリアルナンバー。入力…
自動車メーカーに聞く ギガキャストに取り組む理由 トヨタ自動車門野英彦氏【特集:ギガキャストの現在地】
トヨタ自動車は昨年、2026年に投入を予定している次世代EVの生産工場にギガキャストを取り入れると発表した。従来数十点の板金部品で作っていたものをアルミダイカストで一体成形することで、部品点数を大幅に削減し、生産工程を半減させることを目指している。なぜ、ギガキャストに取り組むのか。鋳造・ダイカストの生産技術や金型の設計・調達などを担当する素形材技術部鋳造領域統括主査の門野英彦氏に取り組む理由や課題、金型メーカーに求めることなどを聞いた。

1966年生まれ、愛知県出身。89年名古屋大学卒業後、トヨタ自動車入社。入社以来、主に鋳造領域を専門とし、鋳造・ダイカストの生産技術の企画、開発などに従事してきた。2024年6月より素形材技術部鋳造領域統括主査として現在に至る。
操安性向上と軽量化に期待
ギガキャストに取り組む理由とは。
理由はいくつかあります。一つは一体化によって車両自体の剛性が高まり、操縦安定性が向上するという点です。ドライバーの思い通りに動き、運転する喜びや楽しさをさらに感じてもらえる車の提供が可能になります。もう一つは軽量化です。電動車(EV)でも内燃機関(ICE)車でも燃費・電費は大きな改善項目となっています。材料を鉄からアルミに置き換え、軽量化することで燃費・電費の向上が期待できます。
その他には。
リサイクル性の良さも理由の一つです。以前、複数の材料を組み合わせた「マルチマテリアル」による材料およびプロセスの適材適所が話題を呼んだこともありますが、現在はリサイクル性を考慮し、なるべく1種類の材料で作る「モノマテリアル」にシフトしようとしています。複数の材料を用いるにしても分別しやすい構造が求められる中、部品の一体化が可能なギガキャストによって、リサイクル性に優れた車づくりが実現できます。
ギガキャストの採用を発表している「LF‐ZC」は車体を3分割にした構造となっている。
一つ申し上げておきたいのは、ギガキャストはこうした新しい車づくりを実現する選択肢の一つということです。当社では電気自動車(BEV)だけでなく、燃料電池車(FCEV)やハイブリッド車(HEV)、ICE車も含めた「マルチパスウェイ」でカーボンニュートラルを達成しようと取り組んでいます。選択肢を増やすことで、さまざまなお客さまの声に応える魅力的な車を作っていきたいと考えており、ギガキャストはそのための一つの手段に過ぎないと考えています。
ギガキャストを採用する上で必要なことは。
鋳造はプレスに比べ、形状自由度が高いのが特長です。ただ、今までの車は鉄板で作ることを前提に設計されており、ギガキャストを採用するとなると、この工法の良さを引き出す設計に変えないといけません。製造コストや安全性などを考慮した最適な設計が求められ、当社でもトポロジー最適化解析などを活用し、取り組んでいます。
金型における課題は。
最も大きいのが重量課題です。ギガキャストの金型重量は、先行している中国や欧米でもその多くは100tを超えています。中国や欧米では重量物の運搬にも耐え得る軍事用道路が整備されていたり、許認可申請が容易だったりしますが、日本ではそれほどの重量物を運搬できる道路が少ないのと、許認可申請にも多くの時間を要します。日本で取り組むには金型の軽量化が必要で、強度など金型機能の必要要件を満たしつつ、金型を合理的に分解できるよう構想し、取り回しやすくすることが重要となります。
その他には。
金型を分割する理由は運搬だけではありません。材料調達自由度の確保や金型加工設備の問題も挙げられます。材料が大きくなれば、熱間ダイス鋼の製造も難しくなりますし、大型加工機や熱処理炉、クレーンなど大規模な設備投資が必要になります。いかに既存アセットを活用できるような設計にするかが重要です。
金型メーカーはどう立ち向かうべきか。
金型メーカー同士での積極的な連携が必要だと思います。例えば、ギガキャストの金型となると、従来の型締め力2500tクラスの金型に比べ、加工に約8~10倍の時間がかかります。これほどの加工量を限られた納期の中、既存のパワートレーン製品の金型も手掛けながらこなすのは難しいのが実状です。また、大型設備は1社だけでは負担が大きいため、上手く競争と協業のバランスを取りながら高度な相互連携・アライアンスの構築が重要だと考えます。
金型業界にメッセージ。
世の中のスピード感に対応するにはより多くの仲間を作り対応していくことが大事になると思います。いかにシナジー効果を発揮し新しい価値を見つけていくことができるか。自動車メーカーとしても金型メーカーの方々と一緒になり取り組んでいきたいです。
金型新聞 2024年9月10日
関連記事
薄肉の低圧鋳造技術を強みとするドイツのグルネバルド社と提携し、砂型鋳造で、アルミの試作部品を手掛ける木村鋳造所。同社の木村崇専務は「アルミの大型試作部品は急増している」と話す。試作はいずれ量産に移行するため、金型の動向を…
モビリティカンパニー目指し、金型づくりを大変革 クルマを造る会社から、多様な移動手段を提供する「モビリティカンパニー」に変化するトヨタ自動車。モノづくりでも変革を進めている。2020年に試作や量産など内製部門を集約した「…
ダイカスト金型などでパウダーベッド式の金属3Dプリンタによる金型づくりが広がり始めてきた。背景の一つには、金型に適した材料の進化がある。中でも、これまで金型で広く使われてきたSKD61に相当する材料が登場し始めたことが大…
「金型作りは上手くいかないことがある。そんな時は、トイレの個室で考える。そうすると良いアイデアが浮かぶ瞬間が訪れる」と、アイデアが浮かぶ時や場所を見つけるのも技術者の役目と話す大野和夫さん(68歳)。金型製作歴40年以上…


