金型や部品の造形で金属AMを活用する際、必ず指摘されるのがコスト。装置の価格はもとより、粉末材料が高価なことに加え、設計や解析などに多くの工数が発生するため、どうしても製造コストは高くなる。一方で、高い冷却効果による生産…
【特集:新春金型座談会】広がる世界市場をどう開拓する(Part2)
次の成長市場はどこだ
インド、ブラジル、メキシコ、トルコに期待
本紙 山本さんは今後金型需要が伸びる市場はどこだとみていますか。
山本 松野さんが指摘されたようにインドは間違いなく拡大します。松野さんの提携先がある地域は医療関連の街ですし、金型需要は大きくなります。また、インドで今後期待できるのはダイカストですね。現在2輪がメインですが、2年後に大きく伸びるとみています。
あとは、メキシコ、ブラジル、トルコ、ベトナムあたりでしょうか。ただ、ベトナムはもう遅すぎるかもしれません。
本紙 ヨーロッパはどうでしょう。
山本 簡単な金型は安い国から調達する流れもありますが、リコールなどの影響もあり、自動車部品の品質を高めるニーズが強くなっているため、ある意味チャンスだと思います。ただプラスチックは競争が相当厳しいですね。特定のプレス部品とか、ダイカストなども可能性があると思います。
本紙 中国やタイはいかがでしょうか。
松岡 私は中国をもう市場と考えていません。コロナ前には大型の需要はあるのではないかと思い、会社も作りました。しかし、国の方針も変わり、中国企業が日系に発注することはないと思います。
山本 ギガなど大型は特にそうですね。中国は5年くらい先行していまして、大型機械を導入して成長してしまいました。
松岡 そうですね。だから中国は市場と考えてないですし、その会社も閉めました。調達先として関係は続けます。大型の金型のモールベースは中国に頼まざるを得ないなどの側面もありますから。
本紙 タイは。
松岡 こちらも市場としては厳しいですね。日系メーカーが非常に苦戦しており、中国企業に押され、生産が落ちています。すでにかなり成熟した市場かなと思います。
本紙 タイには中国が進出していますが。
松岡 金型は中国から持ってくるので、現地で我々の出番がない。その上、中国の価格に合わせるとやってもしょうがない。そういう意味で中国企業が増えても魅力的な市場にはならないですね。

1975年創業のプラスチック金型メーカー。250t以下の金型なら何でもできるのが強み。大手電機メーカー系のシステム企業で営業を経験後、松野金型製作所入社。入社五年目で倒産危機に直面するも、営業を強化し乗り切った経験も。2006年に社長に就任後、08年に九州佐賀に進出した。19年に会長に就任。昨夏にインドの成形メーカー、アランカール・オートモーティブ社と提携し、本格進出を進める。
欧米は連携が近道
海外人材をどう確保する
本紙 欧州はやり方ではチャンスがあるという話でしたが、すでに欧米と付き合いのある松岡さんはどうお考えですか。
松岡 直接のユーザー開拓は難しいと思いますね。だから、イタリアメーカーと提携しました。欧米の仕事を受注しようと思うと、現地企業と組んだ方が絶対に早い。逆に日系は我々にパイプがあるので、彼らも我々と組んだという部分もあります。
山本 言葉は翻訳機がありますが、ニュアンスが壁ですね。金型は上流の製品設計でお客さんと深い交流が必要です。また、製造に対する文化や考え方が日本とは違う。製品は同じでも、設計や生産技術の考えは、アメリカと日本とヨーロッパでは違います。皆さんもそうだと思いますが、日本語が喋れない営業と話をする気にならないでしょう。その逆の立場になって、考えることは大切です。
本紙 松野さんもインドでの展開はパートナーがいます。
松野 誰に聞いても「あの国は単独では無理だよ」って言われます。 なので、現地企業と提携し、インドに入国しやすいネパール人を採用しました。それでも人材の採用には苦労しています。
山本 松岡さんもそうですが、タイには進出して20年以上経つ企業も多く、そうした企業には良い人材も多い。 その中では優秀な方を営業に使うことで成功している会社もあります。企業の永続性を考えた時、将来の人材をどこで育成して確保するかを日本の金型業界も考えていかないとだめかもしれませんね。
松野 だとすると、インドでの人材をタイで探すのもありでしょうか。 山本 そうですね。タイにはインド人が多く住んでいます。そうした方にインドで働いてもらうのはいいかもしれない。海外の会社ではそうしたケースがあります。また、できること、できないこと、知見を標準化することも大切です。外国だけではなく国内の永続性を考えても標準化は必要な時代にあると思います。人に属する技術が、金型メーカーの競争力と言う部分は必ずありますから。

海外畑一筋で、40年近く海外で工作機械の営業支援を行う。1990年代半ばから北米の金型メーカーや業界団体と付き合いを深める。東南アジアの金型メーカーの支援後、2000年代に北米に戻り、金型加工技術支援センターの立ち上げに従事。同社が国際金型連盟(ISTMA)のスポンサーだった関係で、欧州とアメリカを中心に金型メーカーと関係が深い。欧米のほかインドも40回以上訪問経験がある。
Part3に続く
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