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シンコー精機 金型の直彫り化を推進、面品位高め、金型寿命向上【Innovation〜革新に挑む〜vol.10】

シンコー精機はアイシングループのアルミダイカスト金型メーカー。型締め力500~800tの金型を得意とし、エンジン部品関連のほか、近年は電動化部品関連の金型などを手掛ける。加工現場ではこれまでの放電加工を中心とした金型づくりから変革し、直(じか)彫り化を推進する。MOLDINO(モルディノ)とともに取り組みを進める同社を取材した。

年に70型ほどを生産する

電動化部品関連が増加

 シンコー精機は1979年にアイシン軽金属の金型を製造するために設立された。ミッションカバーやバルブボデーなどといった型締め力500~800tクラスのアルミダイカスト部品用金型を手掛け、「アイシングループと2人3脚で歩んできた」(稲垣稔之社長)。現在も製造した金型のほぼ全てをアイシングループに供給する。

同社が得意としてきたバルブボデーなどの金型は深く入り組んだ構造のものが多く、会社設立から長きにわたって放電加工を中心とした金型づくりを進めてきた。工場には放電加工機7台、電極加工機4台が設置され、現在も放電加工技術は同社の大きな強みとなっている。

今年2月に導入したATC100本の3軸MC

高機能材を直彫り化

一方で、ここ数年は自動車の電動化に伴い、モータハウジングやバッテリーケースなどの電動化部品関連の金型が増加。足元では受注の約半分を占めているという。こうした電動化部品関連の金型は細く深いリブ形状が多く、放電加工目を除去する磨き工程では人の手が届かず、加工時の大きな課題となっていた。

「磨きが不十分だと金型の面品位が悪くなり、クラックやかじりといった不具合の原因になる。こうした不具合は金型寿命の低下につながるため、加工面品位の向上が求められるようになった」(稲垣社長)。そこで取り組みを始めたのが、放電加工よりも磨き工程の削減と加工面品位の向上が期待できる直彫り化だ。

使用する工具の約6割がMOLDINO

これまでも小物キャビティ部品では直彫り加工の実績があった同社だったが、キャビティ本体となると課題が多く、加工チャレンジは難航した。特に同社が金型に用いるのは靭性が高く、耐摩耗性に優れ、熱にも強い高機能材。硬度がHRC49程度と高い上にSi(シリコン)含有量が少なく、「硬く、粘っこく、削りにくいため、苦労した」(製造部の川辺邦之GM)。

焼き入れ後の荒加工では工具がすぐに折損し、膨大な加工時間とコストを要していた。「通常の2~3倍の工具費がかかり、実用化にはほど遠かった」(川辺GM)。

工具寿命と加工時間を改善

試行錯誤が続き、取り組みがうまく進まない中、出会ったのがMOLDINOだった。以前からドリルやエンドミルなど一部の工具を使用していたが、「ある時に加工プログラムや工具選定などの悩みを相談したところ、親身になって工具を提案してもらった」(技術グループの杉本奈美氏)。

従来使用していた他メーカーの工具からMOLDINOの3枚刃ボールエンドミル「エポックメガフィードボールエボリューション」や、アルファ高送りラジアスミル「ASRF mini」に切り替えたところ、工具寿命が向上。加工時間も大幅に短縮し、工具径φ32の「ASRF mini」を用いた加工では従来の約半分の時間で加工できるようになった。

バルブボデーなど500~800tクラスの金型を得意とする

また、同社は立形マシニングセンタ(MC)27台に対して横形MCが2台と少なく、ボトルネックになりやすかった。ここでもMOLDINOのアルファポリッシュミル「ASPV」(工具径φ40)を採用したところ、これまで横形MCで加工していた4面加工が立形MCで可能になった。「横形MCと遜色ない仕上がりで、工程も停滞しなくなった」(製造部の横山秀嗣主任)。

昨年夏には今年2月発売となった高送りラジアスミル「TR2F」のフィールドテストにも参画。「TR2F」は同社が用いる高機能材の加工に適しており、「切削速度が上げることができ、加工能率が2~3割ほど向上した」(横山主任)。

アイシン軽金属の近くに本社工場を構える

これら一連のMOLDINOの提案によって、課題だった工具寿命と加工時間を改善。直彫り加工の実用化を果たした。加工面品位も向上し、表面粗さ(Ra)は一桁台(μm)を達成した。現在は磨き工程を入れない“磨きレス”にも挑戦しているという。その一方で、「小径工具の工程は加工時間がかかっている。加工条件の改善を進め、さらなる効率化を図っていきたい」(杉本氏)。

さらなる生産能力の強化へ

こうした直彫り化に加え、目下取り組みを進めているのが自動連続運転だ。今年2月に工具収納本数100本の自動ツールチェンジャー(ATC)を搭載した立形MCを導入し、4月には250本対応のATCを搭載した5軸MCも導入する。「工具交換だけでなく、加工データの供給も半自動化できるような仕組みを構築し、人の負荷を減らしたい」(川辺GM)。

同社は今後、直彫り化による磨き工程の削減や自動連続運転の実現などによって省人化を進め、生産能力を強化する考えだ。将来的には現状の年間70型ほどから100型以上に引き上げる目標を掲げる。「競争力を高め、アイシングループにさらに貢献できる金型メーカーを目指していく」(稲垣社長)。

稲垣稔之社長
川辺邦之GM
横山秀嗣主任
杉本奈美氏

会社概要

  • 本社 : 富山県高岡市石丸708-8
  • 電話 : 0766・84・8196
  • 代表者 : 稲垣稔之社長
  • 創業 : 1979年
  • 従業員: 50人
  • 事業内容 : アルミダイカスト用金型の設計・製作・修理・改造

金型新聞 2025年4月10日

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