金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

17

新聞購読のお申込み

経産省素形材産業室 星野昌志室長が語る「素形材産業ビジョン」に込めた思い

経済産業省は3月28日、金型を始めとした日本の素形材産業が今後進むべき方向性についてまとめた「素形材産業ビジョン」を12年ぶりに公表した。3代目となる2025年版ビジョンでは、日本の素形材産業の現状や課題をまとめ、2040年に向けた具体的な数値目標を設定したほか、政府や産業界が取り組むべきテーマを整理した。同ビジョンを取りまとめた経産省製造産業局素形材産業室の星野昌志室長に、ビジョン策定の背景や今後の展開などを聞いた。

ほしの・まさし 
北海道出身。1996年上智大学卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。2019年国際再生可能エネルギー機関、21年資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部国際室長、23年現職

 前回から環境変化は。

大きく変わったのは、「GⅩ」「DX」「経済安全保障」。日本の製造業にとってこの3つが成長戦略の柱となった。これらに加え、素形材産業では自動車産業依存がさらに進み、海外需要の取り込みや人材不足、取引適正化などの課題が深刻化している。

 ポイントは。

これまでと異なるのは初めて具体的な数値目標を設定したこと。ビジョンを作るだけでなく、みんなで目標を認識し業界や企業の行動変容につなげたいという狙いがある。3年ごとにアンケート調査などフォローアップを実施するなど成果を確認できるような仕掛けづくりも行った。

 3つの目標を掲げた。

今回のビジョンの究極の目的は「稼ぐ力」を強化すること。そのために必要な目標が「需要先」「海外展開」「新技術」の3つ。航空宇宙や医療など高付加価値分野の需要先比率を3割から5割に拡大する。約3割にとどまる海外展開比率を5割に引き上げ、海外需要を取り込む。金属積層造形市場の世界シェアを現状の数%から世界トップレベルの2割に高める。これらが達成できれば、今後も日本のものづくり拠点としての機能は維持、強化されると考える。

 金属積層造形の国家戦略に言及があった。

世界シェア2割を目指すには具体的なロードマップが必要。どこに投資し、どのように人材を育成していくか。今後、有識者を交えて40年に向けた具体的なビジョンを策定していく。産学官連携の強化や地方拠点の支援が必要と考えている。

 目標達成に向けて必要な取り組みとは。

「GX、資源循環」「経済安全保障」「取引適正化」「DX、標準」「情報発信力、人材育成」「経営力、海外展開」「技術力」の7つ。これらは相互に関係しており、例えば「DX」については、CO2排出量の見える化といった「GX」のための「DX」もあるし、SNSなどのデジタルツールを活用した情報発信もある。金属積層造形などの新しい技術の導入にもデジタル化は必須だ。「DX」をいかに進めるかも目標達成の鍵になると思う。

 企業事例も公開した。

前向きな挑戦を行う素形材企業50社をまとめた。行動変容に向けて実際どう取り組むのか悩む企業は多いと思う。こうした実例を見て、参考にしてほしい。

 今後の展開は。

このビジョンを踏まえて、金型産業を始め素形材業界の変革につながること。そのためには、各業界で、ビジョンに魂を込めるような取り組みが一つでも多く生まれることを期待したい。そうした挑戦を国としても一緒になってできる限りのサポートをしていきたい。

金型しんぶん2025年5月10日号 

関連記事

城南村田 フェイスシールドを製作

コロナをチャンスに  「金型メーカーとして、コロナ禍で何かできることはないかと思ったのです」。そう話すのは、金型技術を活かし、フェイスシールドを作成した城南村田(東京都大田区、03-5744-3555)の青沼隆宏社長。 …

ハマダ工商 AMで新たなものづくり【金型の底力】

樹脂やプレス金型の製作から少量の成形まで手掛けるハマダ工商は今年2月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。水管を自由に設計した冷却効果の高い金型で、反りを抑えた防犯レンズカバーの成形品を提供するのが狙い…

瑞穂工業 新社長 大澤史和氏に聞く

超硬工具や各種超硬素材の製造販売を手掛ける瑞穂工業(大阪市西淀川区、06・6471・4721)は4月、大澤史和氏が代表取締役社長に就任し、新たな船出を迎えた。同社は1944年創業以来、超硬工具や金型の製造に携わり、独自の…

【この人に聞く】三井精機工業社長・加藤欣一氏「”高精度”生かし、金型加工に適した機械を提供」

三井精機工業(埼玉県川島町、049-297-5555)が、金型分野に注力している。今春、新型の微細加工機と、ジグ研削盤を発売。今後需要の拡大が期待される電気自動車(EV)や電子部品関連の金型加工向けを中心に売り込んでいく…

江口博保さん 研さん重ねる金型設計の熟練者【ひと】

自動車のフィックスドウインドウやクォーターウィンドウ。その成形コストや歩留まりを改善し、環境に配慮した金型も設計した。顧客製品設計の最終確認会にも出席しアドバイスする。それらが評価され、令和2年度「現代の名工」に選ばれた…

トピックス

関連サイト