芝浦機械(東京都千代田区、03・3509・0200)は、金型冷却装置を手掛けるファンクショナル・フルイッドの全株式を取得し子会社化した。金型冷却装置における実績や独自のノウハウを取り込むことでユーザーへの連続安定成形の提…
米谷製作所 ギガキャストに対応、超大物金型の加工に挑む【Innovation !〜革新に挑む〜vol.11】
自動車産業で急速にニーズが高まっている超大型のアルミダイカスト技術「ギガキャスト」。部品点数の削減や製造工程の簡素化などといった利点があり、国内外の自動車メーカーで導入が進んでいる。新潟県柏崎市に本社を構える米谷製作所は「ギガキャスト」に対応する金型の開発、製造に取り組む1社だ。MOLDINOとともに高度な加工に挑む同社を取材した。

新しい需要の開拓に着手
米谷製作所は1934年創業のダイカスト金型メーカー。型締め力800〜3,000tの大物金型を得意とし、特にエンジンのシリンダブロックやシリンダヘッドなどの金型を手掛けている。
一方、近年は自動車の電動化が進み、エンジン関連の需要が減少。同社が手掛ける金型の生産数もピーク時に比べると減少傾向にあるという。これまでとは異なる新しい需要の開拓に迫られる中、着目したのが、「ギガキャスト」だ。
「ギガキャスト」は、型締め力4,000tから1万tを超えるような超大型のダイカスト技術。海外のEVメーカーを中心に導入が進み、最近では国内の自動車メーカーにも広がっている。同社では2023年から同じ新潟県内の金型メーカーと協業し、「ギガキャスト」向け金型の開発、製造に取り組んでいる。

5軸加工で直彫り化
この「ギガキャスト」に用いられる金型は重量が100tを超えるようなものもあり、その大きさから加工には放電加工よりも工数のかからない切削加工による直彫りが求められる。同社ではMOLDINOの切削工具を用いて直彫り化を進めている。
すでに中仕上げ工程では、大型5軸立形マシニングセンタと、MOLDINOのエンドミル「EPDBEH-TH3」や「ETRP-TH」を用いて直彫り化を実現している。直近では首部に段差のない「フリーネックタイプ」によって、直彫りの領域が拡大。「従来に比べて、1.2〜1.3倍の深彫り加工が可能になった」(製造部・本間孝行氏)。

荒加工、穴加工に課題
一方、目下の課題は荒加工だという。「大型化によって切削量が増え、これまでよりも加工時間がかかるようになった。人手不足が深刻化する中、切粉処理に人手をかけるのは難しく、いかに効率良く切粉を排出させるかが重要」(本間氏)。
工具の突き出し長さも従来の2〜3倍となり、長いものだと400㎜ほど。工具径は50〜80㎜で、L/D(工具突き出し長さと工具径の比)が大きいため、工具のたわみやびびり、振動が発生しやすく、工具寿命の低下、加工音の増大などが問題となっている。
これらの課題を解決する工具として現在検討を進めているのが、MOLDINOの高送りラジアスミル「TD6N」。同工具はネガ刃によって切粉が細かくなるため、スムーズな切粉排出を実現する。また、インサートも大型化し、加工時の振動を抑制するため、課題だったびびりの抑制にも効果が期待できるという。「今後さらに加工を重ね、本格的に導入していきたい」(本間氏)。
また、大型化に伴う、もう一つの課題が穴加工だ。「大型化によって、冷却やピンなどの穴もより深くなっている。ガンドリルで加工はできるが、時間がかかりすぎるため、超硬ドリルへの置き換えを進めている」(営業部・髙橋智広課長)。MOLDINOの超硬ドリルを使用し、さらなる深穴加工に取り組んでいくという。

コスト低減し競争力向上
「ギガキャスト」への対応を強化する同社だが、既存のエンジン関連もこれまでと同様に維持、強化している。特に足元ではEV需要が鈍化し、エンジンを搭載したHEVやPHEVの存在感が増している。「一時期のEV一辺倒の流れから、少し潮目が変わったと感じている」(伊井雅博社長)。
こうした既存分野の競争力を高めるために加工現場ではコスト低減を進める。ここでもMOLDINOの工具が同社の取り組みを支えている。
その代表的な事例がシリンダヘッドの金型だ。2枚刃の工具から5枚刃の高送りラジアスミル「TD4N」に切り替えたところ、荒から仕上げまで3工程だった加工を1工程に集約し、リードタイムも20%短縮できたという。
従来は荒加工の切削熱による歪みを除去するために工程を重ねていたが、工具の刃数を増やして切り込み量を減らすことで、切削熱を下げ、歪みを抑制。中仕上げ、仕上げ工程を不要にし、大幅な工数削減を達成した。

さらなる事業領域の拡大へ
同社は今後、さらなる事業領域の拡大を目指す。25年2月には、型締め力250〜800tクラスの中小物自動車アルミダイカスト部品を得意とする田中精密工業(富山県富山市)のグループ傘下に入った。これまでの大物部品向けの金型に加え、中小物向けも手掛けていく考えだ。
「将来的には小さいものから大きいものまでフルラインアップの金型を手掛けることができるメーカーを目指したい」(伊井社長)。



- 本 社 : 新潟県柏崎市田塚3-3-90
- 電 話 : 0257・23・5171
- 代 表 者 : 伊井雅博社長
- 創 業 : 1934年
- 従業員数 : 95人
- 事業内容 : アルミダイカスト用金型の設計・製作、試作・中ロット部品製作
金型しんぶん 2025年7月10日号
関連記事
DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。 金型の長寿命化、自動化へ 冷間鍛造金型を手掛けるニ…
自動化と人材育成—。自動車産業に関わらず、あらゆる製造現場において共通の課題となっている。人手不足は深刻化しており、課題解消に自動化、省力化は欠かせない。いかに若手に技能を伝承していくかも喫緊の課題となっている。一方で、…
大型プレス金型を開拓 日本コーティングセンター(神奈川県座間市、046-266-5800)はこのほど、愛知県岩倉市に新工場を設立した。投資額は約9億円。金型やホブカッター、ピニオンカッターなどの表面処理を手掛ける。半導体…
4月1日から7月30日まで 日本各地の中小製造業28社も出展 加工技術など紹介動画ほか、工場見学LIVEや補助金セミナーも実施 生産管理システムなどを手掛けるテクノア(岐阜県岐阜市)は同社初主催となるオンライン展示会『…