自動車を中心に高精度かつ複雑形状な部品の開発、金型製造、量産まで手掛ける久野金属工業。EVなど次世代自動車の部品を生産する一方、ITを活用した改善活動など社内改革も積極的に行っている。その改革を推進してきたのが入社19年…
日本金型工業会・山中雅仁会長に聞く 「稼ぐ力」高める4つの軸とは?
取引適正化の活動継続
今年の通常総会で、日本金型工業会が山中体制になって2年目を迎える。就任以来「稼ぐ力」の強化を訴えてきた山中会長はこのほど、稼ぐ力を鍛えるために4つの軸を設定した。「価格決定力」、「市場拡大の施策の推進」、「業界の魅力度」、「商品企画開発力」の4つ。なぜそれらが必要なのか、その狙いや施策などについて山中会長に聞いた。

M&Aで企業力向上も
稼ぐ力が重要な理由は。
定期的に工業会で実施しているアンケートでは利益確保に苦しむ企業が非常に多い。魅力ある業界として永続していくためには、何よりもまず稼ぐ力を付ける必要がある。
その一つとして価格決定力を挙げた。
これは一丁目一番地。これまでも訴えてきた現金化を始めとする取引環境の適正化は引き続き訴えていく。今年の改正下請法で「下請」という言葉を無くせたことも一つの成果だと思う。
一方、我々も価格決定力を持つために戦力的に考える必要がある。その一つとしてM&Aも大切だ。否定的なものでなく、成長の手段として活用していい。価格は需給バランスで決まる。M&Aで企業力が増し、需給バランスが適正になれば価格も改善する。M&Aに関する情報を発信していきたい。
市場拡大も重要とした。
市場は体積で考えるべきだと思う。底面の面積部はいわゆるマーケット。ただ、国内の拡大は見込みづらく、海外に求める必要がある。品質が高く、手離れが良くサポートの厚い日本の金型は世界中で求められている。当社もインドなどへの展開を進めるが、それは強く感じる。海外へのアクセス方法は多々あるはずで、色んな事例を共有したい。
営業の生産性向上と価値創造を
高さは?
営業の生産性だ。営業の必要性は誰もが認めるが、生産性を考える必要がある。「引き合いから案件化までの精度はどうか」など営業プロセスを見える化することが大切だ。
もう一つは金型の営業は価値創造であるということ。例えば、「この金型を使えば二酸化炭素を減らせます」といった価値を生み出していく提案が求められている。
魅力度向上は。
金型の魅力は人によって異なると思う。私は金型の魅力は社会課題を解決できる力があるものだと考えている。こうした魅力をSNSなどで、ユーザーや世間にも訴えていきたい。
商品企画開発力とは。
新たなサービスや商品を作ることで金型の価値創造につながる。自社商品を作ることは金型の価値を向上するための手段の一つだと思う。
これらの施策を進めていく体制は。
小出悟前会長の時代に設置した「金型を持続可能な産業にする戦略会議」の枠組みを踏襲する。同会議を私、各支部長、事務局の5人体制に刷新した。その直轄に4つのワーキンググループを設け、この戦略会議で、具体的な施策を詰めていく。
金型しんぶん 2025年6月10日号
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