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【国内金型メーカーアンケート】「足元の業況と未来を拓く次の一手」
6割がリーマン超え

課題はさらなる顧客開拓

 金型新聞はこのほど、国内の金型メーカー112社に「足元の業況と未来を拓く次の一手」についてアンケート調査を実施した。その結果、60%を超す会社が、自動車業界の好調などを背景に、好調だったリーマン・ショック前(2007年頃)の水準に業績を戻していることが分かった。しかし、事業活動を取り巻く環境が今後も持続的に改善していくという見方は少なく、顧客開拓や技術研究など未来を拓く新たな事業に挑んでいる。

Q1.足元の業績
ー自動車が回復、国内回帰

リーマンショック直後

 足元(2016年)の業況を尋ねるうえで、好調だったリーマン・ショック直前(2007年)を基準値100として、リーマン・ショック直後(2009年)の業績(売上高)と比較してもらった。

 まずリーマン・ショック直後の売上高について、「100以上」と答えたのはわずか9.3%。90.7%の会社が減少した。そのうち「100%未満」が18.5%、「80%未満」25.9%、「60未満」37%で、「40%未満」に減少した会社が9.3%だった。

現在の業績

 それに対し、リーマン・ショックから約8年半が経過した現在(2016年)、6割を超す会社が売上高をリーマン・ショック前の業績に戻している(100以上と110以上計63.5%)。

業績回復の理由

 その理由として最も多かっのたが全回答者のうち72社が回答した「新規取引先の開拓」。なかでも「自動車関連の企業への営業強化」、「家電依存から自動車やコンピュータ関連に分野を拡大」などと金型の最大の需要家の自動車業界の開拓に力を入れる会社が目立った。

 新規開拓の方法として既存取引先からの紹介や飛び込み営業などの手法を取る会社があるその一方で、インターモールドなどの展示会への出展やインターネットを活用する会社が6社もあった。

 業績回復の理由で次に多かったのが、「取引先の商品開発案件が増加」(36社)。リーマン・ショック以降、自動車や半導体などの業界が回復し、商品開発を再開した影響が大きかった。

 「ナノレベルの品質で加工する光学系の金型に取り組んでいる」、「医療用金型、スーパーエンプラの金型に挑戦」など金型の高精度化により金型の付加価値を高めた(34社)、競合他社の廃業(24社)や海外流出した金型が国内回帰(20社)するなど環境の変化の影響とする会社もあった。

Q2.今後の受注の行方
ー36%が「増加する」

今後の受注予想

 今後の受注の行方について「増加する」、「現状維持」、「減少する」の中から選んでもらった。その結果、「増加する」は全回答者のうち38社で全体の35.8%、「現状維持」が54社で50.9%、「減少する」が14社で13.2%だった。

 「増加する」と「現状維持」の合計が全体の約9割(92社、86.7%)を占め、多くの会社が金型の需要が増加または安定していると見る。

 「増加する」の回答者38社のうち24社はリーマン前の水準を超えており、これをさらに上回る見通しだ。

 しかしそうした会社は少数派で「現状維持」または「減少する」の回答者の約60%は業績がリーマン前を超えており、高止まりつつあるのかもしれない。

増加受注または現状維持の理由

 「増加」または「現状維持」の理由で最も多かったのは、「Q1」足元の業績で質問した回復の理由と同じ新規取引先の開拓と54社が答えた。「メーカーの金型内製部門の縮小により新規参入しやすい」、「国内や海外から新規の問合せがある」とフォローの風を感じている会社は、ここ数年の取り組みを継続していく考え。

 その一方、「プレス機を導入してトータル開発を始める」「自社製品の食品機器・教材用金型の販売」など事業展開を広げて新規開拓を狙う会社も。

 理由の2番目の「金型の高精度化による付加価値増」(26社)は、「内製比率を高めることによる金型の品質向上」や、「成形品の小型化への対応」、「納期短縮の要求に対し金型の精度を上げて付加価値をつける」と品質向上や納期短縮に励みながらも新たな課題に挑戦する姿勢がうかがえる。

 また、「新型部品を金型を含めトータルで自動車メーカーと共同開発」など取引先の商品開発案件が増える(24社)、「単価は下げ止まっており、価格を上げて貰えている」(6社)とする声もあった。

受注が減少する理由

 一方、受注が減少すると答えた理由は、「金型受注価格の低下」(6社)、「取引先が開発案件を減らす」(4社)、「多機能化による型数減少」(2社)、金型の海外流出が進む」(2社)だった。

Q3.今後の課題
ー人材を確保できない

今後の課題

 「今後の課題」については、回答者全112社のうち6割を超す70社が人に関することと答え、最も多かった。その中でも特に「人材確保」とする会社が半数以上の42社にのぼった。

 その中には、「人材の質低下を補えるために新たな人を」や「考えることができる人を」と技術力や能力の高い人材を求める声があったが、それ以外の殆どは「現場の技術者を採用できない」「若手が欲しいが応募してこない」などと、労働人口の減少や若者の製造業離れに悩んでいることが浮き彫りになった。

 人に関する課題で2番目に多かったのは「育成」。「考えることができる人に育てたい」「専門的な知識を教えていきたい」「次世代のリーダーを」と仕事への能力や推進力を持つ人を育成したいと願う声が目立った。

 「設備」や「新技術」、「環境変化への対応」に関することを今後の課題とする回答も46社あった。

 設備で最も関心が高いのは、設備の増強や老朽化した機械の更新で、「工場の拡大、設備の増設」、「設備や建物が老朽化しており更新時期が迫っている」、「先進国の金型メーカーに対抗するため機械化を促進する」などと答えた。

 新技術は、「高精度化」「多数個取りでも製作時間を短縮」「差別化できる技術ノウハウの構築」と品質向上や短納期化に取り組む一方で、「IoTやAIなどの導入」と近年注目を集める技術の導入に目を向ける会社もあった。

 環境変化への対応では、「電気自動車の普及による部品の変化」、「国内市場が減少するため海外向けの仕事を増やす」と、自動車など最終製品の技術革新や市場の変化に対応していくことが必要とした。

 今後の課題として、そのほかには「型費の値上げ」や「資金繰り」、「天才への備え」とする回答があった。

Q4.今後の取り組み
ーコストダウンと人

取り組んでいること・取り組むこと

 最後に、「今取り組んでいること」あるいは「今後取り組むこと」について質問した。この質問に対しては、「生産性向上によるコストダウン」、「人材育成」、「金型技術の研究開発」、「新規取引先の開拓」が全回答の6割を占め、コスト、人、技術、顧客に対して関心が高いことが改めて分かった。

 このうち最も多いのが「生産性向上によるコストダウン」で、「年商の10%を投資し、ATCやAWCを使い機械の稼働率100%を目指す」、「3Dソリッド設計、成形解析、3Dスキャナー、5軸機を導入」「自動化・無人化の推進」と新たな設備導入によるものが目立った。

 その一方、「常に原価を意識したものづくり」、「現状の作業を見直す」、「生産計画の最適化」、「メンテナンスの頻度が少ない金型を造る」と生産技術の改革や金型の品質向上によりコストダウンを目指す会社も多かった。

 人材育成では、「機械の能力を全て使える」「金型の基礎知識と英語などのコミュニケーション能力」「多能工」などの能力向上を社員に求める声があり、「技能検定」や「設計、加工、組立など分野別の勉強会」といった方法で技能の習得や能力を伸ばす考えだ。

 金型技術の研究開発は「バーチャルトライと現物の整合性の精度アップ」、「特殊材料の加工方法研究」「光学系金型を量産するため設備投資する」、「補助金を利用し研究開発を推進する」「とする回答があり、新規取引先の開拓は「専任部門が活動」「展示会で技術をアピール」などと答えた。

 少数派だが、そのほかには、「IoTを活用し工程管理をシステム化する」「欧州で販路を開拓する」「海外工場を立ち上げる」「資本参加している海外企業との連携強化」、「タブレット端末を活用して業務を改善」と、IT技術の活用や海外展開に活路を見出そうとする会社も。


調査方法と回答者

製作している金型

金型の用途
 金型新聞は5月2日~26日までEメールや電話、直接面談などで国内の金型メーカーにアンケート調査を実施し、112社から有効回答を得た。

 手掛ける金型の種類で最も多かったのはプラスチック金型(44.6%)で、次いでプレス金型(17.9%)、鍛造金型、ダイカスト金型、ゴム金型…と続く。

 金型が使われる分野については98社が「取引している」と答えた自動車関連が最も多く、その次に家電製品(32社)だった。近年注目されている医療機器やレンズ.光学の金型メーカーも。

 地域は、金型メーカーの国内分布とほぼ同じ割合。従業員規模は、20人以上の中規模、大手企業からの回答の比率が高くなった。


金型新聞 平成29年(2017年)6月2日号

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