広がる微細精密の世界 面粗さRa0.01㎛以下要求 微細精密な金型を求める動きが強まってきている。電気自動車(EV)や、自動運転、安全機能の強化など自動車の高機能化で、「車の電子化」が進み、車載用電子部品やLEDなどの微…
JIMTOF2016総集編
常識破る新技術
進化する5軸、鏡面加工の切削
世界から最新技術が集まる国内最大の工作機械展示会「JIMTOF2016」(東京ビッグサイト、11月17~22日)では、これまでの金型づくりの常識を破る新技術が次々と登場した。操作性が一段と向上した5軸機や、鏡面に加工できる切削工具、金型に適用できる領域を広げた3Dプリンタなど、時代を塗り替える技術の競演を振り返る。
精度高まる3Dプリンタ
マシニングセンタ▶︎
ワイヤ・放電▶︎
研削盤▶︎
AM▶︎
切削工具▶︎
工作機器▶︎
測定機器▶︎
マシニングセンタ
高剛性の微細加工機
マシニングセンタは、より効率良く加工できる同時5軸加工機や、経年変化に対して自ら補正する門型機が登場した。一方、剛性を一段と高め、大型の金型を高精度に加工する機械が出品された。
「D200Z」や「D800Z」など計5台を出品するなど最も同時5軸の加工技術をアピールしていたのは牧野フライス製作所。機械そのものの性能もさることながら、▽CAMデータ作成の時間短縮▽機上での自動測定▽面品位の向上による磨きを減らせる―手法や効果も披露した。
オークマは、サーボ制御で主軸やテーブルの動きを最適化する「サーボナビ」を搭載した5面門型機「MCR‐BⅢ」を出品した。サーボナビにより、自ら経年変化を判断して動きを補正する。このため、導入から長い時間を経ても高い加工精度を保ち続ける。
一方、剛性の高い機械を出展したのは、安田工業やOKK。安田工業は高剛性の機械構造を採用した微細加工用の「YMC650」(X600×Y500×Z280㎜)を出品。従来機種「YMC430」よりも大きなワークに対応することができ、自動車ヘッドランプの金型の加工サンプルも展示した。
重切削・高剛性のMC開発に力を入れるOKKが出品したのは、横型MC「MCH6300R」や立型MC「VM660R」など3機種。キサゲを丁寧に施し肉厚の鋳物のベースも展示し、性能をアピールした。
ワイヤ・放電
IoT化へ
三菱電機は新制御装置「D―CUBE」を搭載したワイヤ放電加工機「MVシリーズ」を発表。IoTを活用したリモートサービス「iQCareRemote4U」を搭載。加工状況を遠隔診断し、予防保全を提案するほかワイヤ線の残量をリアルタイムに検出する。
ソディックは油仕様の超精密放電加工機「AP450L」などを展示。アークレスによる安定加工ができる型彫り放電加工機「AG40LP」は、エロワのロボットと組み合わせて、自動化による生産性向上を提案した。
牧野フライス製作所は、自動車バンパー周りなどが大型化していることに対応するため、Y軸を1150㎜まで大きくした型彫り放電加工機「EDNC17」を発表した。
研削盤
一貫して自動化
自動で段取りと加工、測定ができる全自動平面研削盤「MUJIN」を出品したのは岡本工作機械製作所。切り込み量を入力するだけで加工が始まり、ワーク段取り、データ入力、形状加工、品質測定などの工程を全て自動化できる。
ナガセインテグレックスは、切り込み量を設定すると、砥石への負荷に応じて自動的に最適な送り速度にする「適削」と呼ぶ技術を披露。超精密成形平面研削盤「SGC‐630PREMIUM」で実演加工した。
新たなクーラント濾過・改質・供給技術により深い切り込み量と速い送り速度で高効率加工ができる「爆削」と組み合わせ、より効果が増すという。
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AM
積層+切削の複合化
3Dプリンタに代表されるAM(付加製造)技術。今回は3Dプリンタで作った金型や、レーザー積層技術の多様化、切削を組み合わせたハイブリッド機など大きく技術は進化した。
金属3Dプリンタで金型を製造し、実際に成形までを行ったのはソディック。大型化に対応するため機械を大きくし、3Dプリンタで作った「OPM金型」の性能を引き出すため、温調器などを組み込んだ成形システムも発表した。
ヤマザキマザックは複数のタイプの金属3Dプリンタを披露。以前発表した金属積層造形に加え、マルチレーザー方式とアーク式を追加。切削と組み合わせ、用途に応じて選択できるようにした。
オークマは切削から研削、レーザーによる金属積層造形、焼き入れまで1台でできるハイブリッド機を披露。DMG森精機は、従来機よりも大型部品への対応を図った。
三井精機工業も5軸加工機にレーザーによる金属積層造形を動画で紹介。松浦機械製作所は金属3Dプリンタで作ったエンジンブロックを展示した。
2年前は「ブーム」だったが金型や部品、補修などでAM技術は広がり始めている。
切削工具
進化する高硬度材切削
超硬合金、焼き入れ鋼など金型材の高硬度化や、形状の複雑化、大型化によって、切削工具に求められるニーズも高度化している。今回は「高硬度材加工」「鏡面加工」「高能率加工」をテーマとした展示が目立った。
高硬度材加工では、三菱日立ツールが、耐摩耗性を向上させた高硬度材向けの新コーティング「TH3」を発表した。今後ボールエンドミルなどに採用していく予定。また、三菱マテリアルは新商品の高硬度鋼加工用エンドミル「インパクトミラクルレボリューション」を発表。硬度70HRCの被削材に対応する。同様にダイジェット工業でも70HRCの被削材対応のボールエンドミルを展示した。
一方、高硬度材向けのドリルを開発してきたイワタツールでは40~50HRC対応の新商品を発表。幅広い被削材への対応が可能となった。
また切削での鏡面や高い加工面精度を実現する工具も多く出品された。とくに鏡面加工では、日進工具とユニオンツールがPCDやCBN工具を展示し、切削での「つるつるピカピカ」加工を提案。また、新シリーズ「Aブランド」を展開するオーエスジーは、超硬防振エンドミルを新たに追加。新コーティングや刃形を改良し、高い加工面精度を実現する。
そのほか高能率化では、三菱日立ツールが開発したバレル(たる)形状の異形工具シリーズや、ダイジェット工業が新発売したチップ厚みを向上させた荒加工用工具「マックスマスター」などが出品された。
工作機器
効率高める新技術
ツーリングメーカー各社は最新製品を披露した。大昭和精機はハイドロチャックスーパースリムに4D先端の振れ精度が1μm以下の超高精度「ハイドロチャックスーパースリムUP」を追加し、披露した。エヌティーツールは荒加工をより高精度に加工するために防振性と高把握力のある「ハイドロチャックオメガPHC・H」を出展。4d先端の芯ズレ精度3μm以下、繰り返し精度1μm以下の高精度を刃物抜けなく、高速回転での加工を実現。
また、MSTコーポレーションのスマートグリップは様々なワークに対応するシステム治具となり、ベースとなるヘッドと様々なワーク形状に対応するワークホルダを用意することで、加工後のワーク交換を容易にしロボットでの自動交換も簡単にできる自動交換システムにもつながる。
測定機器
温度変化に対応
「測定する場所が、測定室から生産現場に近い所へとシフトしつつある」(東京精密吉田均社長)。生産性の向上を図るために、生産現場の近くで測定するというニーズが増している。今回のJIMTOFでも測定メーカー各社は、より生産現場向きの新製品や提案を披露した。
東京精密とミツトヨの2社は、粉塵や室温が不安定な環境でも安定した精度で測定できる耐環境性能の高いCNC三次元測定機を発表した。東京精密の「XYZAX AXCEL」は、ガイドやキャリッジをカバーで保護し、変形を防ぐ新設計を採用。一方、ミツトヨの「MiSTAR555」は、耐環境性の高いスケールを採用したほか、省スペース設計によって少ない面積でも設置できる。
また、通常測定との使い分けは不可欠だが、生産現場近くで測定するニーズが増えたことで機上測定にも注目が集まった。とくに無線やセンサ技術が進化し、測定精度が向上。ブルーム‐ノボテストやマーポス、レニショーは高精度タッチプローブを出品したほか、ならい測定ができるスキャニングプローブなども展示した。
金型新聞 平成28年(2016年)12月14日号
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