自動化や離型の新技術 センサや工具の自社製品も 金型展では金型メーカーの独自技術を披露する場となっている。今回は特に自動化や離型性向上につながる提案が多く見られた。また、自社製品の開発や量産も含めた一貫生産体制で新たな…
– 成形をゆく- シマファインプレス(和歌山県)
世界の衣料支える 横編み機の精密部品
親会社である島精機製作所の横編み機は、複雑な形状のワンピースでも縫い目なく編める“ホールガーメント”という独自技術(写真①)で、6割近い世界シェアを占める。機能性に加え、長時間使っても壊れないなど、世界中の評価を得ており、シマファインプレスはその横編み機に必要な高精度部品を供給している。同社は、さらに、横編み機以外の分野でも、社名の一部にもあるファインブランキング(FB)や超精密な射出成形技術で、世界中の衣料業界を支え続けている。
機械を極限まで使いこなす
創業は1980年。当時採用していた欧州の部品に満足できず、それを内製化するために立ちあげた。創業時29歳で島精機から移籍した西村定夫社長は「金型も成形ノウハウもゼロ。分かっていたのは高精度な部品を作らなければならないことと、そのために高精度な機械が必要だということ」。だから設備にはこだわった。持論は「100分台の機械を何台並べても1000分台はできない」だ。
最高の機械にこだわる
この方針通り、最高級の機械をそろえた。しかし、西村社長は「重要なのは機械だけではなく、使いこなす力」と話す。「安全率などを考慮し、メーカーのカタログにあるチャンピオンデータより少し低い領域で機械を使うことが一般的。しかし当社は違う。メーカーのカタログ値にある極限のレベルまで機械を使いこなす。それがノウハウになる」。技術者にもその意識を徹底させるため、自ら機械を選択させる。
最高級の機械とそれを使いこなす気概。こうした姿勢があったからだろう。創業からたった半年でFB用の金型を製作した。8年後には「金型を作る機械があるのだから樹脂型もできるだろう」と射出成形を始めた。
こうしてスタートした同社だが、今や手がける部品は高度なものばかりだ。例えば、編み機を正確に制御するには欠かせない主力のニードルプレートという部品(写真②)は、厚み1~2㎜、長さ200~250㎜の焼き入れ材からなる。1台数千本を使用するこの部品は、1日8万本も製造される。また、樹脂でも特殊な部品を製造。布地や炭素繊維など新素材のフィルムを寸法通りに裁断するための部品(写真③)であり、フィルムをこの部品の上に乗せ、吸着しながら切断する。きれいに切断するために、約100㎜角に8100本ものピンを立てる必要があり、この金型も数か月かけて製作した。
自動化で良いものを早く
こうした高品質なものづくりができるのは子会社だからという見方もあるかもしれないが、むしろ逆だ。子会社だからこそ要求は厳しい。そのために自動化で安く作ることも追求する。例えばニードルプレートでは、それまで2時間かけてその先端部を研磨していたが、専用機メーカーと共同で、10数秒で研削する画期的方法を開発。また、抜け穴でのカスを金型内で処理できるよう、自動化対策にも取り組んできた。
挑戦なくして成長なし
こうした工夫や新技術へ挑戦は尽きない。最近では、「後処理を考えるとレーザーのほうが早い部品も多い」ことから、レーザー加工による部品づくりを始めた。また、年内には650tクラスの成形機を導入し、大きなサイズの部品製造が進行中である。さらに、まだ具体的なアクションには至っていないが、ソディックが開発したアルミ用の射出成形機の活用も検討している。
「生産性にしても、利益を上げるにしても新しいことに挑戦しなくて成長はない」西村社長の言葉は、同社の成長の源泉となっている。
会社概要
本社:和歌山県和歌山市神前357
代表者:西村定夫社長
従業員数:110人
設備:フィンブランキングプレス機10台(アサイ産業など)、射出成形機14台(住友重機など)、放電加工機、マシニングセンタ、5軸加工機など多数
事業内容:ファインブランキングや射出成形によるニードルプレートなど横編み機部品の製造など
金型新聞 平成30年(2018年)9月10日号
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