金型の製造コストが上昇している。金型の母材として多く使われる工具鋼や、各種金型部品などが相次いで値上げされたためだ。加えて、工場稼働に必要な電気料金も依然、上昇傾向にある。金型メーカー各社は、取引先への価格の引き上げ交渉…
金型技術研究会を設立
静岡理工科大学
静岡理工科大学(静岡県袋井市、0538・45・0111)は今年2月、金型技術力の向上や人材育成などを目的とした研究会「金型技術研究会」を設立した。金型メーカーなど約30社が加盟。講演会や見学会などを通じ、企業間や学生と企業の交流を深めるほか、共同研究なども進める。将来的には研究センターを設立し、会員企業の研究機関として新しい技術を発信していくことを目指す。金型を取り巻く環境が大きく変化する中、産学の連携は今後さらに重要になる。
技術力の向上、人材育成に力<br>重要性増す産学の連携<br>金型メーカーなど30社参加
機械加工や材料、分析のほか、IoTやAIなどの金型関連技術を研究する同大学の教授10人ほどが中心となって立ち上げた。幹事の1人の後藤昭弘教授は「静岡県西部は400社を超す金型メーカーが集積する全国有数の金型産業地域。この地域で金型の研究拠点を作り、地元企業の発展に貢献したいと考え、設立した」と話す。
会員には金型や部品加工メーカーなど約30社が加盟。会長は日本金型工業会の会長も務める小出製作所(同磐田市)の小出悟社長が就任。企業幹事としてクリエイ
ティブテクノロジ
ー、靜甲、ブローチ研削工業所、山下金型の4社が参加する。
研究会では、「金型技術力の向上」と「人材育成の支援」に取り組む。同大学は分析技術に強みを持ち、国内屈指の分析設備を揃える。元素分析や構造解析などが行え、「先端機器分析センター」では一般企業も設備を利用できる。後藤教授は「金型の材料開発や破損の原因究明など様々な研究に活用できる」としている。
また、IoTやAIといった次世代技術の研究も盛んで、「金型と組み合わせた研究開発も進めていきたい」(後藤教授)とも話す。
人材育成では勉強会や講演会を開き、「会員各社の中核的人材の基礎技術の底上げを目指す」(後藤教授)。また、学生向けに企業見学会も開催する。「学生と企業とのつながりを深め、金型に関心を持つきっかけを作り、金型業界を目指す学生を増やしたい」(後藤教授)。
19年度は、金型業界の動向やIoT、AIをテーマとした講演会、金型の故障解析や材料などの基礎技術を中心とした勉強会を計画する。
当面はイベント開催がメインだが、将来的には金型技術の研究機関を目指す。現在、加工機を設備する同大学の施設を建て替え、「先端精密金型研究センター」を立ち上げる計画を構想している。「最新の加工設備を揃え、会員企業の研究所として先端技術の開発を手掛けたい」(後藤教授)。
近年、金型業界を取り巻く環境は大きく変化し、その対応に向けて大学や研究機関に期待する声は少なくない。2月に開かれた同研究会の設立総会には金型メーカーなど約150人が出席。後藤教授は「予想以上の出席者数だった。金型技術の研究に対する関心の高さを実感した」と話す。
昨年には岐阜大学が「スマート金型開発拠点」を設立。複数の企業と共同でAIやIoTなどの技術を活用した金型(スマート金型)の開発に取り組む。同大学の王志剛(ワン・ズガン)副学長は「労働人口の減少に対応するために産学連携は不可欠。スマート金型を使って不良率ゼロが実現できれば、省人化、その先の無人化も見えてくる」。次世代金型技術の開発に向け、今後、産学の連携は益々重要になる。
金型新聞2019年3月10日号
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