冷間鍛造金型などを手掛けるニチダイは2018年3月期、目標としていた売上高150億円を超え、19年3月期には売上高174億円と過去最高を更新。だが、昨年から続く米中貿易摩擦や新型コロナウィルスの感染拡大に加え、主要顧客…
この人に聞く
碌々産業 海藤 満社長

加工技術者に新たな呼称
ミクロン台の誤差に収まる精度、鏡のように美しい仕上げ面—。こうした加工は、卓越した技術力と並々ならぬこだわりを持った技術者が高精度な機械を駆使して初めて実現する。この職人と呼ばれる人たちを「マシニングアーティスト」と称するのが、微細加工機メーカー・碌々産業の海藤満社長。「若い人が憧れる職業にしたい」として、今年2月に「マシニングアーティスト」を商標登録申請。独自の認定制度を設立し、加工技術者の地位向上に向けた取り組みを進める。狙いや今後の展開などを聞いた。
認知度・地位向上を目指す
なぜ、「マシニングアーティスト」という言葉を作ったのか。
今、我々の身近にあるスマートフォンや微細な電子機器などは、優れた加工技術者がいたからこそ生まれた。その一方で、こうした技術者は表舞台に出ることが少なく、認知度や地位があまり高くない。こうした人たちにリスペクトを表するとともに、プライドを持ってもらうために、このネーミングを作った。
ネーミングの由来は。
高精度な機械や工具、ソフトウエアを駆使し、自らの豊かな感性と創造性を働かせて微細な加工を手がける技術者は、私の目には「アーティスト」のように映る。そこに「加工」を意味する「マシニング」を組み合わせた。格好いい仕事だというイメージを発信し、若い人たちにも興味を持ってもらいたいという思いを込めて名付けた。
具体的にどんな活動をするのか。
認定制度を設ける。当社で独自に認定委員を作り、全国から毎年50人ほどの加工技術者を選定する。認定者には、認定証と記念品を贈呈する予定だ。
また、当社の静岡工場(静岡県焼津市)にあるショールームは、「MAラボ」に改称した。「マシニングアーティスト」たちが集う研究室という意味で名付け、一角には認定者のネームプレートを飾るつもりだ。
微細加工は、日本の得意分野とされている。
微細加工は、寸法精度だけでなく、面品位も求められる。鏡面性などは、見た目によるところが大きく、技術者の感性が重要。当社でも微細加工を実現する条件として、「機械」「工具」「加工環境」「ソフトウエア」に「技術者」を加えた「四位一体(よんみいったい)+one(ワン)」を提唱し、顧客に提案している。今後、次世代自動車やIoTなどで微細な部品が増え、微細加工技術者の需要は益々高まるはずだ。
今後の展開は。
まずは「マシニングアーティスト」という言葉を広めていく。ロゴやステッカーを作ったりして、認知度の向上に努める。最終的には、技能検定などと同等の価値まで引き上げたい。そして、何よりも加工技術者を志す若い人を1人でも多く増やしたい。
金型新聞2019年3月10日号
関連記事
重要なのは加工技術者 優れた人材の発掘・育成が、新たな世界の創出につながる いまや我々の日常生活に不可欠なものとなったスマートフォンや極小な電子機器。これらは微細加工技術があったからこそ生まれました。ミクロンやナノとい…
シボ加工などを手掛ける棚澤八光社は今年4月、岩手県一関市に国内10拠点目となる岩手工場を設立した。集積が進む自動車産業を中心に東北地区の顧客に対し、より迅速かつ充実したサービスを提供していく。 岩手工場には10t/10t…
一桁ミクロンの加工精度 「マシニングで出せない精度の穴加工は、是非任せてほしい」と語るのは、長年ジグボーラー加工やジグ研削加工に携わってきた、太陽テクニカの大畠正陽社長。同社は、航空・宇宙産業の部品から工作機械の主要精密…
勝負は中身だ 他社よりも一歩先へ 好循環生まれる体制を 〜技術開発の必要性〜 1939年生まれ、滋賀県出身。立命館大学法学部卒、61年に大垣市内にある会社に就職したのち、68年に同社(大垣精工)を創業。超精密プレス金型…