恒温で精密金型を追求 9月にも本格稼働 電子部品などのプレス金型を手掛ける聖徳ゼロテック(佐賀県佐賀市、0952-29-6828)は、本社敷地内に金型工場を新設する。室内を恒温に保ち、EV向け部品などの精密金型製作に適し…
エムディー精密 「高精度」「精密加工」を追求し、さらなる高難度加工に挑む
車載用コネクタやモータコアなどのプレス加工品の金型から試作、量産までを手掛けるエムディー精密(茨城県高萩市、0293-23-8255)。創業以来、「高精度」「精密加工」を追求し、加工技術力を高めてきた。2018年からは積極的な設備投資を進め、ワイヤ放電加工機や精密測定機、マシニングセンタなどを導入する。同社工場を訪問した。

金型から量産までを一貫生産
同社は1998年にパンチやピンなどのプレス金型部品メーカーとして創業。徐々に事業内容を広げ、高精度プレートや金型を手掛けるようになった。2009年からはプレス加工品の生産も開始。現在、売上を構成する比率は金型が4割ほどで、プレス加工品が6割ほどを占めている。
金型は月に3~4型を生産する。売り型と内製型の比率はほぼ半々で、近年は特に車載用コネクタやモータコア向けが伸長しているという。一方、プレス加工品は高速プレス9台を始め、30~150tのプレス機13台を設備し、コネクタやバスバーなど月に約20品目を1億3000~4000万個ほど生産している。
手掛けるプレス加工品は、小さいもので直径2mmほど、板厚も0.15mmほどと薄く、使用する金型には高い精度が要求される。同社では創業以来、「高精度」「精密加工」を追求し、こうしたニーズに応える高精度な金型部品や金型の製造を可能にしてきた。


高精度プレートに注力
そうした中、近年注力しているのが高精度プレートだ。「精度の高い金型部品ができても、それを組み込むプレートの精度が低いと、高精度な金型は作れない。精度要求が高まる中、金型部品だけでなく、プレートの精度を向上させるための取り組みを進めている」(立原賢治社長)。
18年からプレート加工に特化した高精度加工設備を積極的に導入。この5年でワイヤ放電加工機や平面研削盤、三次元測定機、マシニングセンタなどの設備に投資した。その中でも部品を組み込むための丸や四角などの穴を空けるワイヤ放電加工機はプレートの出来を左右する重要な設備として位置付ける。「それまでは加工時間が長いため、ワイヤ放電加工を中心にスケジュールを組まなければならなかった。高い加工精度を維持しながら、加工スピードも上げるためには、より性能の高いワイヤ放電加工機が必要だった」(立原社長)。


ピッチ精度1.5μm実現
そこで19年と20年に1台ずつ導入したのが三菱電機の水加工液仕様ワイヤ放電加工機「MP2400」だ。特に同社が設備する機種は鋳物のガイド取り付け部の作り込みや精度を向上させ、標準仕様よりも高精度加工に対応できる「超高精度仕様」。既存設備よりも高精度な加工を可能とし、プレートに開ける穴と穴のピッチ精度は1.5μmを実現。最大で600mmまでのプレートに対応する。
また、既存設備で課題だった加工面粗さも向上。放電加工後の磨き工数が大幅に短縮した。「これまでは1日がかりで磨いていたが、2~3時間で済むようになった」(照沼忍取締役)。生産能力が飛躍的に向上し、従来は月産100枚にも満たなかったが、現在は3倍以上の300枚ほどが生産できるようになっている。
高精度プレートの需要は車載向けコネクタやモータコアなどを中心に増加しているという。「高精度なプレートは加工難度が高く、付加価値が高い。内製だけでなく、外販にも積極的に取り組み、拡大する需要を取り込んでいきたい」(立原社長)。


中子処理の効率化に挑む
同社では現在、属人的な作業の削減に取り組んでいる。その一つがワイヤ放電加工後に必要な中子処理の効率化。中子処理は通常、作業者による切り落とし加工で行われ、同社では3~5時間ほどかかっていた。その間は新しい加工を行うこともできないため、生産性向上を妨げる課題にもなっていた。
そこで同社は三菱電機のオプション「コアホールド」の採用を検討している。この「コアホールド」は加工中にワイヤ電極線を溶かし、ワークの一部を固着させながら全周加工することによって、中子を固着させる技術。切り落とし加工を行わなくても簡単に中子を処理することができる。
導入することで、中子処理にかかっていた時間の大幅な短縮が可能。「これまでの作業時間を半分以下にまで減らすことができる」(照沼氏)。また、加工に使う時間を増やすことができるため、さらなる生産性向上にもつながるという。将来的には、こうした作業効率の向上だけでなく、スキルや経験を問わずどんな作業者でも安定した精度で加工できる仕組みの構築を目指す考えだ。
社員の幸せを通して社会に貢献する
同社は自社のミッションに「社員の幸せを通して社会に貢献する」を掲げる。「従業員が面白さを感じて、納得して仕事をしてもらえる会社にしたい。それには付加価値の高い仕事を手掛ける必要がある。さらに上の加工精度を目指し、もっと難しいものにチャンレジしていきたい」(立原社長)。

- 住 所:茨城県高萩市上手綱3641-48
- 電 話:0293-23-8255
- 代 表 者:立原賢治社長
- 創 業:1998年
- 従 業 員:53人
- 事業内容:精密金型部品製造加工、精密金属プレス金型設計製作、精密プレス加工製品生産
関連記事
自動車部品などのプレス金型を手掛けるササヤマ(鳥取県鳥取市、0858-85-3380)は、本社工場の敷地内に機械加工棟を増設する。真空熱処理炉や3次元レーザー加工機などを新たに導入するほか、古海工場の設備を集約する。デジ…
生産能力1・5倍に 西部電機(福岡県古賀市、092・941・1500)はこのほど、本社にワイヤ放電加工機の工場を新設した。自動化設備の導入などによる効率化で生産能力を1・5倍に高める。海外など成長市場の需要に応える。 新…
モータコア金型生産2・5倍 黒田精工(川崎市幸区、044・555・3800)は、モータコアの生産体制増強のため、長野工場(長野県池田町)で第8工場と倉庫棟を新設した。工場及び倉庫面積は約2100㎡。約16億5000万円を…
最新機を紹介、特販機の販売も 岡本工作機械製作所(群馬県安中市、027-385-5800)は、最新機の紹介や特販機の販売などを行う独自のウェブ展示会サイト「OKAMOTO WEB SHOWROOM」を開設している。研削に…