生産性の向上、人手不足への対応、人を介さないことによる品質向上—。目的や狙いは様々だが、金型メーカーにとって自動化は待ったなしだ。しかし、自動化には様々な変化が伴う。機械設備の内容もこれまでとは異なるし、自動化を進めるた…
がんばれ!日本の金型産業特集
ワークス 三重野 計滋 社長
目指すはブランド金型超精密加工が医療・バイオに革命
出された樹脂板の中央に約3㎜四方の曇った部分がある。「そこに4万個の穴があり、1穴φ0.015~0.02㎜」。その見えない穴は「超微細マイクロウエルプレート」といい、細胞の観察・解析時などに用いるバイオ容器で同社の金型と射出成形で量産化した。
「夢中になれるものを探していた」と三重野社長は精密丸ピンの研削加工から始め、超硬合金製研削ピン(φ0.125㎜×長さ25㎜)の開発と0.01μ単位の精密測定技術を確立。この精密加工技術を活かし、真円度0.07μ以下の精密レンズ金型を受注。精密旋盤を改良、自社製工具、ナノ加工機と恒温室(23℃±0.03℃)を導入するなど、超精密加工を「精度ナノオーダー、研削から切削」へと進化させた。「当分小型レンズの需要はある」というも、三重野社長はその先の世界を見据える。
見出した市場は医療・バイオ分野。両分野は研究開発で様々な課題を抱える。超精密加工を活かすには最適な場所。マイクロウエルプレートの金型は3㎜角ほどで、自社工具で製造した。「原点は人の命を救いたい」と、無痛針の「マイクロニードル金型&成形」(φ0.5㎜h0.65㎜)や自走行式カプセル内視鏡(φ9㎜)など、医療・バイオ分野で出来ないとされた製品を超精密加工で生み出していく。「開発力がなければ時代についていけない」と三重野社長が目指すのはブランド金型。「海外には出来ない、ジャパンクオリティーでお客様に貢献する」。
五感鍛え開発力向上

「金型業界はデジタル化に進んでいるが、当社はアナログ回帰だと思っている」と話す。現代は便利な道具が揃いすぎ、人間のものづくり力が育たないと三重野社長は指摘。同社でも、「教えれば入社半年や1年後にサブミクロンの加工が出来る。機械がやってしまう。それはものづくり力ではない」。だからこそ必要なのは、汎用機械でどれくらい切り込めば良いか、部品と部品のすり合わせ、組立など、人の手、五感による匠の技を鍛えることが開発力につながる。最終的に「デジタル化できないアナログ技術とデジタル技術を融合させたハイブリッド型が理想」とし、人の手が新しいものを生み出す源泉となる。
人材についても独自の意見を述べた。精密加工や金型加工は「夢中で1つことができる」能力が必要で、ゲームなどを1日中できる現代の若者は「集中」する力があり、1ミクロンの加工など精密加工に向いているという。
また、女性の採用も積極的に進める。技術者あるいは管理職として女性の登用を目指し、「一生働いてほしい」と話す。その理由を「女性は1日のプランニングなどしっかりできるし、細かい面にも配慮ができる」。実際の応募状況などを聞くと、「チラシにも女性大募集と謳っているが、意外にも応募が来る」と笑顔。「これからの時代は『女性の時代』」。現在は女性9人で、うち5人は超精密加工の現場で働いている。
会社メモ
代表者=三重野 計滋社長
住所=福岡県遠賀郡遠賀町虫生津1445-1
事業内容=精密金型部品の製造
電話=093-291-1778
FAX=093-291-2727
URL=http://www.wks-co.com
神戸オフィス=神戸市中央区港島南町1-6-5
従業員数=42人
主な設備=微細精密加工機IQ300(牧野フライス製作所)、5軸ナノ加工機AHN15-3D(ジェイテクト)、超精密成形平面研削盤(ナガセインテグレックス)、CNC平面研削盤(アマダマシンツール、ナガセインテグレックス、三井ハイテック)、精密円筒研削盤(ツガミ、岡本工作機械製作所、シギヤ精機製作所)、非球面内面研削加工機(西部電機)、精密旋盤(西部電機)、放電加工機(西部電機、ソディック)、非接触三次元測定装置(三鷹光機)、形状測定マイクロレーザースコープ(キーエンス)、超精密表面形状粗さ測定器(テーラーホブソン)、測定顕微鏡(ニコン)、真円度測定器(東京精密)など。
金型新聞 平成28年(2016年)11月14日号
関連記事
前年同月比9.6%減の300億6,800万円 プレス型は26・9%減、プラ型は6・3%増 日本金型工業会(会長牧野俊清氏)は、経済産業省機械統計(従業員20人以上)による平成26年10月の金型生産実績をまとめた。それによ…
掛け金率選択制に 税控除など利点大きく 社員の第2の人生豊かに 日本金型工業厚生年金基金は昨年11月2日、いったん解散し「日本金型工業企業年金基金」として生まれ変わった。高い予定利率などの旧制度の課題を解決するとともに、…
機械の知能化が進化 工具は難削性能向上、ソフトは多軸に対応 工作機械や工具など生産財の進歩は金型づくりの進化を支えてきた。だからこそ、最新の機械や工具を使いこなすことが競争力の源泉になる。JIMTOFでは各メーカーが最…
生産性1.5倍に 7月から本格稼働 キヤノンモールド(茨城県笠間市、0296-77-8171)が建設を進めていた「本社・友部事業所」が4月に竣工した。同市内に分散していた6工場を集約し、生産効率を高める。7月には本格稼働…




