被削性3.5倍に 日立金属(東京都港区、03-6774-3001)はこのほど、被削性を従来品よりも約3.5倍に高めた冷間ダイス鋼「SLD‐f」を開発、8月から量産を開始した。自動車部品のハイテン化が進む中、金型の寿命向上…
インターモールド2016総集編技術の競演、盛況
最新5軸やIoT対応も
4月20日から23日の4日間、インテックス大阪(大阪市住之江区)で開かれたインターモールド2016が閉幕した。今年は世界から440社・団体が出展し、4万7000人を超す来場者が集まった。出展社は5軸加工機や難削材向け工具、「IoT」に対応した提案などの最先端技術を披露した。金型加工の未来をつくる技術が競演した4日間の軌跡を辿る。
▼マシニングセンタ
▼放電加工機
▼切削工具
▼研削盤
▼測定機器
▼金型展
▼金属プレス加工技術展
▼プラテックス大阪
▼学生金型グランプリ
▼学生金型グランプリ
機上で補正、加工解析
マシニングセンタ
マシニングセンタ(MC)は、より高精度、より高能率な加工ができる機械が登場した。その一方で、画期的な工程短縮を実現する機上測定技術や、加工ミスを減らすための加工解析、IoTを活用し機械の稼働状況を管理できる技術も紹介された。金型の高精度大型化に対応する加工技術も披露された。
高精度や高能率の加工でひときわ目立ったのがGFマシニングソリューションズやOKK。GFマシニングソリューションズはグループ傘下ミクロン社の「HSM200U LP」と、加工した精密部品を展示。OKKは高い剛性を持つ「VB53」で金型を能率良く重切削できる特長をアピールした。
一方、安田工業は出品した5軸機「YMC430Ver・2」に非接触工具測定機を、「YBM640V」にワーク設置誤差サポートシステムを搭載。機上で工具長を測り摩耗を正確に把握できる技術や、段取りでのワーク設置誤差を測定、誤差を補正し段取り時間を短縮する技術を披露した。
オークマやソディックは、加工解析やIoT有効活用を提案。オークマは、プログラムや加工条件などを設定し加工解析ができる機能を「MP‐46V」で実演。ソディックは「UH650L」でIoTを活用し、複数機械の稼働状況を把握できる技術を紹介した。
大型加工をテーマとしたのは牧野フライス製作所。同社最大級の立形MC「V99」とそのワークサンプルで大型金型の高精度加工を提案した。
ロボットやIoTで効率化
放電加工機
ワイヤも形彫も高精度や高速加工の進化は止まらない。それに加え、今回は、通信技術を活用した効率化、ロボットを活用した省力化など、付加価値の高い加工技術が数多く紹介された。
三菱電機は通信技術などを活用し、放電加工の設計から加工、保守まで全体での生産性向上を提案。リアルタイムで稼働状況を把握できたり、遠隔で加工機の診断を行えたりする機能を搭載した「iQ Care Remote 4U」を参考出展した。水仕様ながら高精度で高速な加工を可能にした新制御システムを紹介した。新型のワイヤ放電加工機を発表したのはソディック。新発売した「ALシリーズ」は、100~300㎜の高板厚ワークでもファーストカットの寸法精度を向上させた。タイコレス制御Ⅱで、4μm以下のタイコ量を実現している。
西部電機が紹介したのはワイヤの無人化、自動化につながる「コア・キャッチ機能」。電極線の真鍮を溶着させることで中子を保持するコア・ステッチ機能を進化させたもので、自動で中子を抜ける機構を採用し、完全自動化を提案した。
大型金型に的を絞った牧野フライス製作所は放電も大型を提案。ワイヤ放電加工機「EDNC8」で、大型の傾斜スライド部の高能率加工を実演した。長尺電極の自動交換を可能にすることによる省力化を紹介した。
高硬度材加工の進化
切削工具
超硬合金の切削加工をテーマにしてきたユニオンツールは先端に溝形状を施したUDCシリーズに「Fシリーズ」を追加。超硬合金の荒加工に対し、切削除去体積を拡大させ、生産性向上につなげる。日進工具の新ボールエンドミル「PCDRB」は「ナノレベルの仕上げ」をテーマに刃のない丸形状が特長。鏡面加工のニーズも増えており、超硬から調質鋼、焼き入れ鋼まで対応。三菱マテリアルは5月発売の超硬材向けのダイヤモンドコーティングエンドミルを出品し、「硬い材料を削る」をテーマに訴求。ダイジェット工業の新しい形状加工用ラジアスチップ「GRM形」は面粗度に優れ、磨き工程の時間短縮を可能にするほか、平面部と傾斜部それぞれに対応。イワタツールは焼き入れ鋼に貫通穴加工を実現する「トグロンハードロングドリル」をPR。年々受注が増えているという。
高硬度材以外にも高能率を実現する多数の工具が出展。イスカルは下穴なしの深穴加工を実現した「スモウカムIQ」を、オーエスジーは6コーナー肩削りカッタ「PSTW」で高能率荒加工を提案。三菱日立ツールは「たる(バレル)形状」の刃先交換式工具を初披露。刃先交換式では初。実際の工具径より弧が大きく、取り代の多い切削加工ができ、加工時間の短縮が期待できる。
研削速度が飛躍的に向上
研削盤
研削は、新しい機械や加工法のほか、冷却効率や切りくず排出性の高いクーラントシステムが登場し、技術革新が進む。とくに、研削スピードが飛躍的に向上した。
岡本工作機械製作所は、平面研削盤「PSG64CA‐iQ」で、従来より約10倍の切込み量(90㎛)の研削加工を披露したほか、リニアモータ駆動の研削盤を展示。「荒工程を早く加工時間を短縮し、高能率加工を目指す」としている。
一方、ナガセインテグレックスは、独自開発の「爆削システム」を使って、大型ワークの高能率鏡面加工を披露。従来の約半分の加工時間で面粗度Ra10を実現する。そのほか、鋳物の研削加工では1・8mの加工で真直度2㎛を達成した。
また、アマダマシンツールはプロファイル研削盤「DV1」を展示。ツールパスを横送り(トラバース)にする加工提案を見せた。ワークに負荷をかけず加工速度が上げられ、加工時間を従来の3分の1に短縮することができる。
非接触式の精度が向上
測定機器
測定は、カメラやレーザーなど光学技術の進歩により、非接触式の性能が大きく向上している。カールツァイスと東京精密は複合測定機「O‐INSPECT」に白色光技術を使ったホワイトライトセンサを搭載。約2㎛の誤差で形状測定ができ、測定スピードは接触式の3~4倍という。
非接触式の精度が向上し、接触式との測定結果のズレが小さくなったことで、複合機の活用範囲も広がっている。ミツトヨはタッチプローブを搭載した画像測定機や、レーザープローブ搭載の三次元測定機を展示。同社は「接触、非接触それぞれに特長がある。うまく使い分けることで測定の生産性は向上する」。
また、機上測定の分野では、ソフト面や、「IoT」に対応した提案が目立った。レニショーは、測定ソフトウェア「プロダクティビティプラス」を展示。自由曲面など、面直方向の判別が難しいワークでも自動計算し測定プログラムを作成できる。ブルーム‐ノボテストは加工機の挙動を監視するシステム「TMAC」で「IoT」対応で生産効率の向上を提案した。一方、マーポスが高性能製品の新ブランド「ダイヤモンドライン」を披露し、高精度化をアピールした。
プラ型を製造、成形
金属3Dプリンタ
従来と異なる金型づくりを提案したのはソディックの金属3Dプリンタ。これまでは部品への応用が大半だったが、実際にプラスチック金型を製造し、成形も行ったことで注目を集めた。
展示したのは金属3Dプリンタコネクタのハーネスカバーのプラスチック金型(写真)。部品点数を従来の金型よりキャビティで20分の1、コアで15分の1と大幅に削減することに成功した。
会場では、従来の金型と金属3Dプリンタで製作した金型を同時に成形。自由に水冷管を配置できる金属3Dプリンタの優位性を生かし、成形性の良さや、ヒケやそりなどを抑えたサンプルに驚きの声も上がっていた。
未来拓く新たな技術
金型展
インターモールド2016で併催された「金型展」は、国内の有力金型メーカー63社が出展し、それぞれの高度な金型技術を披露した。なかには独自開発の金型や、培ったノウハウで生み出した製品など、未来を拓く新たな技術も登場した。
高度な金型技術を出品したのは協和精機製作所や長津製作所。協和精機製作所は鏡面加工した自動車用ランプのレンズ金型を、長津製作所は超微細機で加工した面粗さRa2nmのレンズアレイを出品した。
一方、独自の金型技術を披露したのは鈴木や池上金型工業。鈴木は形状の異なる2部品のプレスとカシメができる金型やレーザー溶接もできる金型を紹介。池上金型工業は射出成形機メーカー日精樹脂と共同でフィルムや樹脂、酸素を通さない素材など4層を成形できる多層容器の金型と成形技術を出品した。
金型での経験を生かした製品・技術を展示したのはシグマやフジタ。プレス金型のシグマは、このところ力を入れる精密プレス部品を出品。フジタは培った高度な切削技術で加工した金属製の欄間を紹介した。
冷間鍛造、FBなど多彩な成形品
金属プレス加工技術展
金属プレス加工技術展2016の6号館Aに陣取った日本金属プレス工業協会の特設会場では、39社のプレス成型加工メーカーや関連製品メーカーが得意技術とする成型品を多数出展し、来場した自動車部品、家電、事務機、建築・建材・家具、金属部品など幅広いユーザーにPRを行った。
金属プレス加工技術展は、4日間に7653人が来場した。各社の小間では、自動車部品メーカーの人を多く見かけた。
各社の小間では、「さらなるダウンサイジング要求」の声多くを聞き、「切削加工から成型へ工法の転換」や「順送板鍛造の深絞り、増肉、減肉、潰し」、「ファインブランキングによる部品の複合化」などの提案を行ったという。
また、燃費向上、環境負荷の低減も多くあり、「鉄からアルミ材のプレス成型」や「成形品の鏡面加工」、「金型の長寿命化と新材料、コーティングの提案」を行い、各社から「ユーザーとの良き出会いが叶った」とする声を聞いた。
注目された数々の成形品
プラテックス大阪
3年に1回開催の関西・西日本地域唯一の総合プラスチック専門展「プラテックス大阪2016」が、4月22日から3日間、インテックス大阪6号館Cゾーン(3階)で開催された。来場者数は、前回比23%減と下げたが、3日間で8491人(入場証の枚数。ダブルカウントゼロ)のプラスチック・ゴム成形加工、2次加工に従事する人や電気・電子・事務機・通信・自動車など最終ユーザーが来場、新しい成形品や技術に触れた。
主催の日本プラスチック機械工業会と日本合成樹脂技術協会の2団体に西日本プラスチック製品工業協会が特別協力し、受託加工・製造コーナーの28社を含む81社の出展者の後押しをした。
射出成形機は、主要メーカーが顔をそろえた。直圧と電気式の良さを併せ持つハイブリッドタイプ、電動、電動サーボ、低圧成形システムなどが展示され、取り出しロボット4社との技術共演が見られた。
受託加工・製造コーナーでは28社が出展した。ここでは複合素材成形加工品(FRP、CFRPなど)や炭素繊維不織布、2材質複合成形品、2色成形品、封止成形、PET肉厚成形品、デジカメ向けマグネシウム合金製部品、高透明樹脂成形品、広口容器、ウェルドレス成形品、自動車エンジン周辺の樹脂プーリーなど幅広い成形品の数々が展示され注目された。
プレスは岐阜、プラは岩手
学生金型グランプリ
金型技術を学ぶ学生らが設計、製作した金型を発表する学生金型グランプリが今年も開催され、プレス型部門では岐阜大学、プラスチック型部門では岩手大学がそれぞれ金賞に輝いた。同大会は今年で8回目を迎える。
受賞した2校のほか、大分県立工科短期大学、近畿大学が参加。また、中国からは大連工業大学が参加し、計5校が金型技術を披露した。今回課題としてプレス型は「サイコロ」、プラスチック方では「USBケーブルホルダー」がそれぞれ出題された。
岩手大学の髙橋寛光さんは「今年は例年の半分の人数での活動となったが、設計から生産まで学生だけで行った。量産性が高い製品ができた」。岐阜大学の谷藤弘康さんは「アイデアは先生から頂いたが、製作は最初から最後まで学生だけの手で行うことができた」と同グランプリを振り返った。
日本金型工業会の牧野俊清会長は「今年は各校レベルが高く、僅差だった。来年は、みなさんぜひとも金賞を目指していただきたい」と健闘を称えた。
金型新聞 平成28年(2016年)5月14日号
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