EV化などによる金型需要の変化やAMをはじめとする新たな製造技術の登場など金型産業を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化している。金型メーカーには今後も事業を継続、成長させていくため未来を見据えた取り組みが求められてい…
この人に聞く2016
かしこい 金型研究会 高橋 百利会長
もの言う金型づくり
必要な情報を金型が収集
クライムエヌシーデー(相模原市南区)や慶応義塾大学などは共同で、IT技術を生かし、プレス金型に新たな価値を加える研究を行う「かしこい金型研究会」を立ち上げた。あらゆるものがネットにつながるIoT時代を迎え「もの言うかしこい金型を作るべきだ」という。発起人でもあるクライムエヌシーデーの高橋百利会長に目的や狙い、IoTなどについて聞いた。
―同会を立ち上げた目的は何でしょうか。
「これまで金型づくりのテーマは低価格、短納期、高品質という軸しかなかったが、それでは限界がある。金型に新たな価値を加え、高度化した競争を展開しなければならない。成形品を輩出する単なる道具からIT技術を生かした、かしこい金型に変える必要がある。それを研究し、形にしていくのが目的だ」
―かしこい金型とは。
「例えば、絞り型では、材料の2枚打ちを検出できず型を壊したり、ピアスポンチが欠落したまま生産を継続したりする事故が起きている。こうした問題に対し、自ら処理でき、警告を発し、なおかつ過去の情報などを蓄積しそのデータを発信できる、もの言う金型をイメージしている」
―具体的な取り組みやテーマを教えて下さい。
「パンチの折損やスクラップの滞留など検査して自動で対応できたり、様々な記録を記憶できたりして、メンテナンスの効率化につなげることなどを想定しているが、大半が特許性を帯びているので詳細は言えない。現時点では8つのテーマを研究しているが、近く第一弾を発表する予定だ」
―IoTは金型メーカーにとって意味があるのでしょうか?
「金型メーカーに直接的な恩恵は少なく、むしろ金型を管理したいユーザーに効果は大きい。けれど、ユーザーがIoTを進める上で、必要となる情報を金型側で収集できれば、その金型の価値は高まる」
―必要な情報とは。
「例えば金型の戸籍、購入部品情報、管理すべきポイント、メンテナンス情報などがあるだろう。重要なのはそうした情報はユーザーの要望に応じ、マーケットインの考え方で収集すべきだ」
―今後の展開は。
「勉強会ではなくあくまで研究会。自ら汗を流し、行動し、結果を求めていく。まずは今あるテーマを具現化する。将来的にはプレスだけでなく、樹脂やダイカストなどへの展開も検討していく。そして、金型メーカーが将来も夢を見られるように力を合わせてやっていきたい」
かしこい金型研究会メンバー
▽会長=高橋百利会長、副会長=青山英樹教授(慶應義塾大学)会員=久野拓律社長(アデック)、今村康社長、松林毅上席スペシャリスト(日本ユニシス・エクセリューションズ)、近藤大輔社長(ハルツ)など ▽事務局=高橋啓太社長(クライムエヌシーデー)▽特別アドバイザー=中川威雄会長(ファインテック)
金型新聞 平成28年(2016年)6月3日号
関連記事
金型の肉盛溶接機 テクノコート(静岡県藤枝市、054-646-1721)はこのほど、ウェブ上で実機によるデモンストレーションが見られるサービス「ライブ実演デモ」を開始した。 対応機種は、ファイバーレーザー肉盛・溶接装…
日本金型工業会西部支部は3月16日、金型関連技術発表講演会をオンライン(Zoom)で開き、金型業界の動向や金型製作に関する新技術を発表する。 基調講演では岡崎製作所の岡﨑浩社長が登壇し、「先々代、先代から引き継いで来た事…
変わり続けることこそ成長 極薄の冷却穴用部品を開発 「もっと楽しい会社、成長を続ける会社にしていきたい」と語るのは技術課の伊藤一光課長。変わり続けることこそ、成長と捉える同社の考えだ。2250t~3500tクラスの大型…
成形の一貫生産で活路新工場で車部品やマグネット製品 三嶋彫刻は今から55年前、金型刻印のメーカーとして創業した。彫刻の精密加工技術を生かし、金型部品や金型、成形も手掛け、事業を伸ばした。しかし近年、日本の金型には強い向…