徹底して顧客の声を聞く 高温の射出成形用金型を得意とするケイ・エス・エムは医療機器分野への参入やロボット販売など事業の多角化を進めている。新事業の立ち上げで苦労する企業が多い中、成功しているのは「金型技術をコアにものづく…
―スペシャリスト―愛知製鋼
電極製作や手仕上げ省く
熱間鍛造金型を直彫り
トヨタグループ唯一の素材メーカーである愛知製鋼は、特殊鋼に加えて、自動車のエンジンや足回り部分に使用する鍛造部品も手掛けている。「月間1万型を生産、消費する」という金型部門では、高い品質と生産性を実現するために、放電加工から直彫りへの置き換えを進めてきた。最近では、5軸マシニングセンタ(MC)を導入し、直彫りの領域をさらに広げている。
工程短縮で品質安定
熱間鍛造金型を製造する金型部門では、90年代から、放電から直彫りへの置き換えに取り組んできた。その目的は、電極製作や手仕上げ工程が省け、工程集約による品質安定化、コスト低減、リードタイム短縮が図れるからだ。しかし、「クランクシャフトやプロペラヨークなどは置き換えできたが、ギア物金型は小径、深彫りでうまくいかなかった」と第2生産技術部の伊藤人史氏は話す。
ギア物金型は、最小隅R0.5㎜、加工深さが30㎜と、3軸MCでは工具がたわみ、規格内の精度を出すのが困難だった。そこで、短い工具突出し量で加工できる5軸MC(三井精機工業製「Vertex550‐5X」)を導入した。
5軸MCは、3軸MCにはない多くのメリットがある一方、加工パスや精度など解決すべき課題も多かった。5軸MCを使いこなすために、加工パスや段取り方法の確立のほか、とくに熱変位の抑制と、振れ精度や振動など機械の特徴をよく理解する、この2つに注力して取り組んだ。
熱変位の抑制は、三井精機工業と共同で熱源を把握し冷却機構の改善を徹底したことに加え、非接触式工具測長機を2台搭載し、加工中の熱変位量を捉え、XYZ3軸の加工点を補正する技術を開発した。また、機械特性の理解では、「主軸の振れや振動、加工点の切削動力を測定することで機械が持っている特性を理解し、最適な加工条件を設定できるようになった」と伊藤氏は話す。
こうした技術課題を解決すると共に、5軸MCを使いこなす技術を向上させた。その結果、精度、品質は大幅に安定。面粗度に関しては、放電加工でRz(平均粗さ)6.0μmだったのに対し、3.0μmまで向上した。また、工程集約が可能となったことで、加工費は約3割低減でき、リードタイムも5日間短縮した。
今後はこの技術を応用し、冷間鍛造金型にも挑戦する考え。すでに超硬合金の直彫り化を始めており、「ギアの需要はますます増加していくことが考えられるので、そうした動きに対応できるように取り組んでいきたい」としている。
会社メモ
1940年に豊田自動織機製作所の製鋼部から独立し、トヨタグループで3番目に古い歴史を持つ。「よきクルマは、よきハガネから」の創業者豊田喜一郎氏の理念のもと、特殊鋼条鋼、鍛造品、ステンレス鋼、電磁品などを手掛ける。本社は愛知県東海市荒尾町ワノ割1、国内に7工場6拠点、海外に10拠点を構える。
金型新聞 平成28年(2016年)8月10日号
関連記事
「技術等情報の管理認証制度」設立 IoT化やグローバル化などによって、情報流出のリスクが高まる昨今、製造業には技術などの情報の適切な管理が求められている。金型業界も例外ではなく、「顧客情報がしっかり管理、保護できている…
技術者育成、生産性向上に貢献 開発試作プレス部品の金型、プレス、レーザー加工まで一貫して手掛ける八光技研。アナログとデジタルを融合させる解析ソフトの活用術で、育成や大幅な生産性向上に役立てている。 同社はレーザー加工技術…
「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表されるように、「百年に一度の変革期」と言われる自動車業界。金型にとってもその影響は大きく、舵取り次第では将来の成長を左右しかねない。特に、金型へのインパ…
超硬工具や各種超硬素材の製造販売を手掛ける瑞穂工業(大阪市西淀川区、06・6471・4721)は4月、大澤史和氏が代表取締役社長に就任し、新たな船出を迎えた。同社は1944年創業以来、超硬工具や金型の製造に携わり、独自の…



